jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

「トリチウム」=放射性を持つ水素の同位体で,水に成りすましているので分離できない--ネーミングが悪いのかも

福島第一原子力発電所の処理水放出で問題になっているトリチウムだが,筆者は学校で学習した記憶がない。そんな化学記号の元素があったのかな,と聞き流していたのだが,いよいよ放出が迫ってきたので,まとめてみることにした。

 まず,「トリチウムという独立した元素はない」ということである。トリチウムの解説図で「T」という文字が出てくることがあるが,これは通常の元素記号ではなく,「同位体に対する特別な元素記号」である。

 トリチウムは,「三重水素」という水素の同位体である。「重水素」という水素の同位体はよく耳にする。重水素安定同位体で,三重水素放射性同位体である。

 普通の水素は,原子核に陽子1個のみだが,重水素原子核に陽子1個+中性子1個,そして三重水素は,原子核に陽子1個+中性子2個を持つ。

 さて,自然界では水素Hが最も安定した形で存在するのがH2O,つまり水である。重水素三重水素も,同様に最も安定した形は「水」である。つまり,トリチウムは普通の水H2OのHと入れ替わって「水」として存在している。このため,「普通の水から分離する方法がない」のが現実というわけである。

 重水素は,英語でheavy hydrogen,またはデューテリウム(deuterium)と呼ばれ,特別な元素記号として「D」が割り当てられている。一方,三重水素は,英語でトリチウム(tritium)と呼ばれ「T」が割り当てられた。元素名に「~ウム」「~リウム」というのが多いので,独立した元素かと聴き間違えてしまっていた。

 ちなみに,Tで始まる元素記号はチタン(22Ti)、テクネチウム(43Tc)、テルル(52Te)、テルビウム(65Tb)、ツリウム(69Tm)、タンタル(73Ta)、タリウム(81Tl)、トリウム(90Th)などがあり,「T」という独立した元素はない。タングステンはWである。最近,毒物として問題になったタリウムや,現在の主流の軽水炉原子力発電所で使うウラン(U)に代わる次世代原発用燃料として期待される放射性物質のトリウムなど,かなり活性の高い(つまり取り扱いに注意しなければならない)物質が含まれている。

 トリチウム放射性物質であり,名前も少しおどろおどろしい響きがある。宇宙線によって自然界でも作られる。これを基準として原子炉からの排水のトリチウム濃度が規定された。今回の福島原発の処理水は,この基準をクリアしており,さらに濃度を薄めて放出される。正直,問題はないと思われるのだが,何しろメルトダウンした原発なので,他に不具合な物質も捨てるのではないか,という疑惑を持たれているからではないか。

 排出予定のトリチウム総量を公表すべきではないだろうか。その総量が,通常の原子力発電所の排出基準に適合していることを示すべきではないか。そして,万一,他の放射性物質が排出されそうになったときにいち早くそれを検出して放出を止める仕組みをきちんと構築すべきではないか,と考える。そして,福島第一原発の「ALPS処理水」は,関係者が飲んで安全アピールするしかないのでは--ご指名があれば参加するぐらいの自信はある - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2023/6/14 はぜひアピールすべきだと考える。

 あとこの際,トリチウムを「tri-hydrogen(トリーハイドロジェン)」,トリチウム水を「トリーハイドロ水,三重水素水」とか,言い換えられないか,というのが1つの提案である。