jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

3人程度の子供を育てた家族に報奨金を--単純計算でも人口を維持する方法は分かるはずだが

子育て支援と称して,さまざまな姑息な提案がされている。そこにまた,所得制限を掛けるとか掛けないとか,枝葉末節の議論ばかりである。

 こんなことでは,少子化対策にはならない,ということは分かっているはずなのに,目の前のご機嫌取りのための官僚の姑息な提案が大手を振るって出てくる。提案する官僚側も,本当に能力がなくなってしまったのではないかとも思えるし,単に自分の世代だけの仕事をして逃げ切ろうとしているだけなのかもしれない。

 ベビーブームが過去2回あった理由は,戦争のときの「産めよ,増やせよ」政策と,そのベビーたちの育った時代である。当時の肉弾戦中心の戦争のためには兵士が必要であり,子供を多く持つことが国策として必要だったのである。

 この政策が支えられた理由は,軍事産業という経済構造を作れたからである。生活のための働く場が提供され,給料も支払われた。戦地に赴く男性にとっては,いつ招集令状がやってくるかもしれないという切迫感もあり,子供を作ることが義務だった時代である。

 しかも,恋愛結婚のない時代である。見合い結婚を中心に,何らかの形でほぼすべての女性が嫁がされ,子供を作るという時代だった。

 戦後の第二次ベビーブームは,戦後の経済成長によるバブルにつながる。結婚という行事が華やかに執り行われ,家庭も豊かになり,カップルそのものが増えたことが原因である。

 単純計算すれば,2人の夫婦が2人の子供を作り育てれば,人口再生産の原理から言えば人口は横ばいで安定するはずである。しかし,不慮の事故や病気,あるいは自殺などの可能性を考えれば,子供2人では将来の人口は減ってしまう。

 おまけに,戦後は自由恋愛による結婚が中心となった。また女性の仕事人としての意識の高まりにより,結婚しない女性や,結婚しても子供を作らないカップル,そして一人っ子世帯も増えた。

 一人っ子政策を強制した中国では,人口増を急速に抑制することができたが,経済の減速によって就職先が決まらないという歪が出てきている。仕事がなければ収入もなく,結婚もできない。女性の意識の高まりとともに,結婚相手としての男性への評価が厳しくなっている。学歴や職歴などをポイント化して評価するシステムまで登場し,ますます結婚が難しくなっている。

 安定的,持続的に人口を維持するには,単純計算で夫婦が3人の子供を作ることを目標にするしかない。そして,すべての男女がきちんと結婚して家庭を築くという必要がある。

 これを実現するには,経済を安定的に発展させ,きちんと就職して定収入が得られ,結婚して家族を養える社会を作らなければならない。

 また,「3人の子供を設ける」ということを目標にしなければ,出生率を2以上にすることができないので,人口は減り続けることになる。

 しかし,日本ではすべてが現在,逆風状態である。経済は低迷し,就職率が下がり,安定した収入が得られない。女性の独立意欲がますます高まり,結婚しない女性が増え続けている。結婚しても,収入確保のために共働き家庭がほとんどとなり,子作り,子育てに時間が割けない。3人どころか,1人の子供を育てるだけでも苦労している。

 戦後,日本はやはり平和ボケしてしまったのだろう。欧米型の恋愛結婚と女性の自立意識の高まり,そして技術革新によりテレビをはじめとする多くのエンタテインメントが生まれたことにより,「家を継ぐ」といった意識が低下し,家庭を築くという意識も低下して行ったのだと思う。パートナーに対する選り好みが激しくなり,結婚できない男女も増え,さらに晩婚化も進むことで高齢出産のリスクが高まり,必然的に子供の数も減ってしまったと思われる。

 筆者の場合,パートナーの年齢がギリギリ30歳になる前に結婚した。結婚して1年間は子供を作らないことにして,二人の時間を大事にし,2年目に家族を作ることを決めた。パートナーには仕事を辞めて家庭に入ってもらい,3人の子供が生まれた。いちおう安定した大企業の関連会社で約30年勤め,給与も安定していた。経済も成長を続けていた時代で,何の不安もなかった。

 その3人がようやく社会人になる時期になっている。まさかこれほど経済が低迷し,また世界中が不安定になり,地球環境が悪化するとは思ってもみなかった。確実に日本を成長させることを夢見て人口再生産の原則で家族を育てたのに,何とも申し訳ない時代に子供を世に送り出すことになってしまった。

 息子は公務員の仕事に就いた。今の時代に相当ハードな仕事内容だが,ある意味では安定した仕事を選択したと思う。家庭を築いて行くのはこれからだが,身体を壊さなければなんとかやっていけるかなと思う。

 一方,娘2人の将来は誠に心配である。世の中を見回しても,まともな仕事をしている男性がいない。パートナー選びが大変である。しかも,「命を掛けて家族を守る」といった強い信念を持っている男性がどれほどいることやら。

 このブログに何度も書いているが,聖職であろうと専門職であろうと,国民を守るはずの公務員であろうと,その職業意識の低下が甚だしく,しかも経済低迷に伴うブラック化も拍車が掛かっている中で,まともなパートナーに出会えるのだろうかと心配なのである。

 今の人口の数をかろうじて支えているのは,筆者を含む高齢者世代である。おそらく,戦後の寿命が平均で15年は延びたのではないだろうか。かつては60歳で定年退職して老後15年をゆっくり過ごしていなくなる,というパターンが,75歳まで働き,90歳でいなくなる,というパターンにシフトした。しかも,働いた後は健康寿命ではなく,介護を必要とするパターンである。労働力もなければ,消費能力もない。逆に,福祉業界に負担を掛け,医療財政や年金財政を圧迫している。正直言えば,やはり“お荷物”である。

 現在の日本の人口は,1億2570万人である。これが2050年には1億0400万人になるという。しかし,現在でも65歳以上の高齢者は3623万人もいる。要介護者数は682万人である。要介護者数を引き,残りの3000万人の労働能力を1/2と見積もったとして,1500万人も引くと,日本の実質的な人口はもうすでに1億人ギリギリまで減っていることになる。

 要するに,仮に今何か政策で支援したとしても,現在の経済事情では現状の家族の負担を一時的に減らすだけであり,将来の人口増や維持には役立たない。

 経済が回復し,家庭を維持できる力が男性に戻ってきたとして,3人の子供を設けて育てられる環境が戻ってきたとしても,その効果が現れるのは,子供が育つ20~30年後になる。その間,安定した経済成長と安定した社会を作らなければ,どこかで崩壊する。

 筆者の周りには,意外にも子供3人という世帯が数家族もある。しかし,勤め先にはそういう人たちは少ない。類は友を呼ぶで,たまたま自分の周囲だけの現象のようである。

 筆者同様,ちょうど社会人として子供を世に送り出す世代である。自分では,日本の発展のために,人口を支える一端を担ってきたという自負がある。現在,子育てしようという世代への支援も必要かもしれないが,立派に3人の子供を育ててきた親世代にも,報奨金を出してほしいと思ったりする。

 もっとも,5人も6人も,あるいは10人以上もの子供を設けたという家族は,正直,信じられない。母親の体力のことも考えると,男性の意識の問題があるようにも思う。

 ただ,現在の年金制度や健康保険制度が,人口が増加することをベースに構築されていることを考えると,1億人,あるいはそれ以下で安定した生活ができる国家作りを考える必要があるかもしれない。ただそれは,ひっそりと生き延び,世界に対して主権をあまり主張できない国になってしまうことでもある。なんだか少し寂しい気もする。