増税だ,減税だ,手当てだ,給付だ,とミミッチイところでばかり国会で議論が続いている。この手のやり取りばかり見せられて,うんざりしているこのごろである。
結局,いくら配るか,どの範囲に制限するか,いつから始めるか,という数字の駆け引きだけで,いくらにしろ,早くしろ,制限をなくせ,などという議論の応酬だけである。これが今の国会議員の仕事なのかと思うと情けない。もっと根本的な議論の提示をしてほしいものである。
結論から言えば,景気が低迷していることがすべての原因である。原資が足りないから,どこから税金を取るとか,制限するとかいう議論ばかりになる。正直,カネのあるところにはあるが,それは国が手の届かない闇の世界に行ってしまっている。かつては,闇といえば地下組織や反社と決まっていたが,今や堂々とクラウドやメタバースの世界で仮想マネーなどの新しい形態になって税金逃れに使われている。かつて,スイス銀行が唯一堂々と税金逃れできた。それもいわゆる大金持ちだけがアプローチできた。しかし,現在のクラウドやメタバースは,マネーゲームで稼いだ一般人の逃げ場所になっている。
子どもを成長させて独り立ちさせるには,少なくとも20年はかかる。この期間中,必要な資金は親が提供しなければならない。親が継続的に子どもをサポートするには,最低20年,3人の子どもを育てるとすれば30年は継続して家庭を守らなければならない。
継続的に家庭を維持するには,安定した収入が必要である。これには安定した仕事を得る必要がある。かつては,親の家業を継ぐ,という方法もあったが,伝統的な仕事は現在は存続が難しい。
これに代わって,戦後に成長した大企業は,終身雇用制を採用して社員として安定的に雇用してきた。20歳に就職して60歳の定年まで40年間の安定した雇用である。家庭を維持し,子育てを続けるために,安定した収入が確保できる。
しかし,2000年を過ぎた現在,大企業による終身雇用制度は崩壊した。社員を抱えることは固定費という経費を抱えることであり,さらに定年に伴う退職金も支払わなければならない。
非正規採用やアルバイト・パート雇用なら,会社都合で採用したり解雇したりできる。退職金も出さない。ボーナスも出さない。社会保険料の半分負担もない。単なる頭数として使い捨てにできる。逆に,終身雇用制の場合は会社への忠誠や仲間意識,団結力,改善提案などが機能したが,非正規採用では会社に対する忠誠心もなく,仕事に対する責任感も希薄になる。これが経営者にとってプラスになるのだろうか。
少子化問題の解決策の最上位は,存続できる大企業を作ることである。戦後の経済成長期には,企業,そして経営者自らが大企業を作り,発展させてきた。今,個人レベルで大企業を作れる経営者はいない。野心のある人は,1人でマネーゲームでカネを稼ぎ,1人でノウノウと暮らす。社員の生活を支えてやろうという意識などどこにもない。
個人が安定した企業を作り,それを維持できないということなら,やはりここは国が国営企業を作り,多くの国民を雇って,安定して30年以上雇用するような仕組みを作らなければならない。
このためには,国は「何が国のために必要な産業なのか」をきちんと方針建てする必要がある。筆者はこれを,水素エネルギー,植物工場と陸上養殖による食糧自給と輸出だと以前から主張している。
さらにそこに十分な給与を与えられるようにしなければならない。
汗水流して働く人たちに,十分な給与を与えなければ,すべてのエッセンシャルワーカーが日本から消えていく。警察,消防,自衛隊,看護,介護といった力仕事を,日本人はしなくなっている。1つは,仕事がキツイからだが,それに見合った給与があれば,いずれもやり甲斐のある仕事である。相手からの感謝の言葉だけでは生活はできない。
どんな仕事でも,給与が十分に安定的に支払われてこそ,家庭を作ることができ,子どもを安定して育てる環境ができる。手当てを出したりするだけでは,ダメなのである。
資格を持てば,同じ仕事を長年続けることはできるが,会社に対する忠誠心は育たない。個人企業だけが増えるだけで,なんの発展もない。
半導体工場では雇用は生まれない。宇宙産業でもない。日本を守るためには,本当は軍需産業が必要なのかもしれないと思うこともある。とにかく,輸出して外貨を稼げる産業でなければならない。アニメでもオタクでもスポーツでも観光でもないのである。