jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

傷害事件で現行犯逮捕でも実名報道なし--メディアはその理由を明らかにしてほしい

2023/1/3夜,山手線で20代の女性が4人の男性を刃物で刺し,3人が重傷という事件が発生した(走行中のJR山手線内で切りつけ 4人けが 女を逮捕 警視庁 | NHK | 事件)。

 約1日経った1/4の段階で,現行犯逮捕されたはずの加害者の実名報道がない。実名報道に対する基準が分からなくなってきた。

 実名報道されるのはどんな時?基準を弁護士が解説 |刑事事件に強いヴィクトワール法律事務所 (第一東京弁護士会所属) (vict-keiji.com) というサイトを参考にしてみた。こちらでは,「実名報道が行われるタイミングは、基本的には、逮捕された時、身柄送検時、起訴時、有罪となった場合は判決が出た時が多いとされています」と書いてあった。今回の加害者は,その場で車内で拘束されたとされている。警視庁は殺人未遂の疑いで現行犯逮捕したとしているから,「逮捕された時」に当たると思う。

 また,凶器である包丁も確保され,「だれでもいいから殺したかった」といった証言もあると報道されている。正確な犯行目的は不明だが,殺意があったとも思える。

 一方,弁護する側からすると,実名報道がされにくいのは,軽微な事件,一般人の起こした極めて軽微な事件(軽微な万引き、軽い交通事故など),被疑者に精神疾患がある場合,被疑者が未成年である場合,としている。

 今回の事件が,実名報道されない理由が,これらの4つに入るのかどうかと言えば,「精神疾患の可能性」以外には考えられない。実際,目的がはっきりしない事件の9割以上は男性が起こしており,女性による事件は極めて珍しいケースだという。したがって,精神疾患責任能力の欠損など実名報道するのにためらわれた可能性はないとは言えない。

 しかし,各局とも報道していないということは,これは警察による「報道規制」であり,メディア側の「報道協定」と思われる。

 一方,検察が不起訴にした理由について,「検察は不起訴にした理由を明らかにしていません」と表現して報道されるのだが,それを追及するのがメディアではないかと思ったりする。検察が明らかにしないから,その言うがままに「明らかにしない」と報道して,メディアとして恥ずかしくないのか,と思ったりする。

 もう1つ不満なのは,「関係者への取材で明らかになりました」という表現である。この「関係者」とは誰なのかを明らかにしない姿勢は,報道規制なのか,オフレコで情報を提供した者を明らかにしない,というメディアの変な自主規制なのか,分からない。

 メディアは,情報を取材して報道するのが仕事だから,報道する内容は「誰か」から入手したことは明らかである。それならただ「取材で明らかになりました」でいいのであって,わざわざ「関係者への」を頭に付ける必要はないと思う。わざわざ付けるから,かえって気になって仕方がないし,毎度同じ表現なのが,いかにも逃げ口上のように見える。だからマスコミは信頼できない,という気持ちになるのではないか。 

 あと,事件の報道の追報道で,ほとんど意味のない新情報が報道されることにあきれてしまう。たとえば,今回の事件では犯罪に使われた包丁のほかに,もう1本包丁を持っていたことが後から報道された。これは,犯行に計画性があった可能性という意味で意味のある新情報である。しかし,たとえば死亡事件でその死因が失血死だったとか,傷がどこまで達していたか,などといった追加情報は,ほとんど意味がないと思う。それは,検察が起訴したり,裁判で検察側や弁護側が犯罪の確定を議論する際には必要な情報だが,一般人には意味がない。

 何でも,得られた情報は無条件で流す,という節操の無さが,メディアが信頼できなくなっている理由の1つである。メディア関係者は,心していただきたいと思う。