jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

スパコンや量子コンピュータが目的を失っているのではないか--シミュレーションに抑止力はない

世界各国は,スーパーコンピュータやさらにその上の高速を実現できる量子コンピュータを作ることに躍起になっている。量子コンピュータは,原子や分子のふるまいを扱うコンピューターであり,材料科学と創薬の分野で、高速になることが期待されているという。

 高速処理ができるということで,組み合わせが無限に近い暗号でも解読できるのではないか,というのが一般的な発想で,もはや暗号は無意味,とも言われているが,処理能力よりもどちらかといえば省エネで高速計算ができるということの方がポイントのようである。世の中のスーパーコンピュータが,火力発電所並みに発熱しているというから,省エネで計算できるということはそれで意味があるのだろう。

 一方で,並列計算で高速処理をしたのが,ニューロンマトリックスであり,これが現在の生成AIにつながっている。ゲーム用にただの高速画像処理ボードを作ってきたNVIDIA社が,一躍脚光を浴びた形である。

 さて,この高速計算機たちだが,正直,一体何のために開発されているのだろうか,という気がするのである。

 確かに,かつて人間の指で計算していたのがそろばんになり,真空管による大型コンピュータになり,これがパソコンからスマホまで進化して,文字処理から通信,画像処理からゲームまで,手元の端末で処理できるようになった。

 一方で,さまざまなシミュレーションをより細かい単位で行うために,スーパーコンピュータが活躍してきている。現実のモノづくりやフィールドの現実を,コンピュータの中で再現し,試作の回数を減らしてより良い物を作るために使われてきた。

 地球の気候変動のシミュレーションは,残酷なシナリオが現実のものになりつつある。これを回避するプログラムのシミュレーションは,残念ながら答えを出せていない。

 ゲームでは,非現実な世界に人を引き込み,新しいエンタテインメントの世界を樹立した。そしてVR(バーチャル・リアリティ)の世界はより高精細で現実とミックスされたAR(オーグメンテッド・リアリティ)の世界に入り,人々が1日中,ゴーグルを付けた状態でも生活できる日がもう現実になりつつある(一線を超えたApple Vision--「現実」が“現虚”になってしまうのか - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2023/6/17)。

 しかし,スーパーコンピュータや量子コンピュータがカバーする領域は,どれほど価値があるのか,正直言って筆者にはわからない。気象予報が仮に数時間後の予報を完全に予測できるようになったからと言って,人間の行動はほとんど変わらない。筆者のような心配性の人間は,絶対に晴れになる,と言われたとしても傘を持ち歩くだろう。月着陸船が正確な位置に狙いを定めて着陸したとしても,脚が土に引っかかる,などの不測も事態までは絶対にシミュレートできない。もしそれが予測できるのなら,初めから月着陸などに挑戦しないだろう。

 結局,精度の高い予測をより短時間に答えを出す,という意味ではスパコンの存在意義はあるだろうが,「So what?(だからどうだってんだよ)」といった気持ちにしかならないのである。

 このシミュレーションが説得力があり,抑止力になれば問題ないのだが,世界のリーダーは絶対にこのコンピュータの予測を受け入れない。自分の政策を否定されかねないからである。

 おそらく,地球全体の気象シミュレーションを高い精度で実現するには,さらなるスパコン量子コンピュータの開発が必要である。しかし問題は,「コンピュータのシミュレーションの数字を,世界のリーダー,政治家はまったく意に介さない」という事実である。どれほど悲惨なシナリオが導き出されても,「それはコンピュータ上の予測にすぎないでしょ」と反論されて,まったく結果が生かされないだろう。

 ましてや,ビッグバン直後の数秒後の状態を計算することも盛んに行われているのがだ,「So What?(だからどうした?)」である。日常生活に全く関係ない。月への移住を本気で考える人がいること自体が,筆者には信じられない。そのサポートだけのために,高性能コンピュータを用意しシミュレーションをしたとしても,人類が月に移住する可能性は低い。

 現実予測がどこまで必要なのか,昨今の雨雲予測などは,生活に直結するだけに不気味である。しかしいくら予測が当たったとしても「So What?」であり,説得力にも抑止力にもならないのである。未来予測はあくまでも予測であって,未来が見えているわけではないからである。

 計算した結果がバーチャルなら,もうそのような開発は不要なのではないか。どれだけ正確にシミュレートしたとしても,月面で着陸船が転んだり脚を引っ掛けたりする事態までは計算できない。

 ただ速いだけの開発は,それこそムダである。