jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

3D撮影はどうなる--キヤノンの新技術を考察してみる

ブツ撮りを変える? 1度の撮影で高解像度3Dデータを生み出すキヤノン「EOS画質3D」のすごさ (msn.com)。 「CP+2024」というカメラ関連の展示会でキヤノンが技術発表していたという報道である。

 立体写真は昔からいろいろな方法があり,いずれもちょうど人間が両眼でモノを見て立体と認識するという理屈が使われる。両眼でモノを見る時の角度の微妙な差を脳が判断して距離や立体と認識する原理である。

 青と赤の像を重ねて,これを青と赤のフィルムを貼ったメガネで見ると立体に見える,というものから,両眼がそれぞれ別の画像を見るように仕切りを付けたメガネ,さらにディスプレイの画面上でこの2枚を交互に切り替えて表示し,それをメガネの液晶シャッターと同期させる方法までいろいろと試みられてきたが,いまだに立体テレビが主流になるということはない。脳が極端に活動するため疲労してしまうからだろう。

 一方,今回のキヤノンの発表は,カメラで捉えた立体像をコンピュータ上で3Dオブジェクトとして認識し,これを左右に回したりして立体オブジェクトを提供するための方法である。従来は,一定角度ごとの画像を複数枚取得し,これをコンピュータで処理して立体モデルを作成していたが,今回の技術は1枚の写真から立体情報を取って立体モデルを作成する。1回のショットで立体モデルが作れるのが特徴である。

 原理は,情報を取得するCCDの中で,人間の立体視よりさらに微妙な角度の違う情報を分析し,モノのそれぞれの部分の距離を計算し,立体モデルを作成するという仕組みである。よく考えられたものだと思う。

 すでに,スマホの顔認識技術でもこの原理は応用されていて,スマホのロック解除で顔認識する際は,従来の平面情報だけでなく,立体的な複数点の情報を使って本人認識できるようになっている。これをさらに細かく分解して,モノ全体のすべての点の情報を高速計算して立体モデルを作成したのが,今回の展示である。

 平面上に写った各ポイントの距離を確定し,その位置に各ポイントを示す微小なポリゴン(多角形)を定義し,その面の方向と色(しかも環境光線の要素を排除した元の色)を定義して,これをつなぎ合わせれば,3Dのモデルは完成する。

 これまでも,単眼カメラを使って「深深度撮影」という手法で全領域にピントの合った写真を作ることはできた。本格的には一眼レフデジカメとPhotoshopを組み合わせて,少し時間をかければ作成できるし,コンパクトデジカメでこの機能を持つモデルもある。筆者も2年前に手に入れ,花や昆虫,静物などを撮って楽しんでおり,これで物撮りもできるな,と思っていた。

 しかし,深深度撮影でデジタル画像を組み立てても,それは写真のような一瞬ではなく,作り物と言えなくもない。ならば今回のキヤノンの技術のようにワンショットでデータをすべて取得して解析する方が実物に近いようにも思えてくる。

 ただ,ブツ撮りならいいが,これが人物の場合は少し厄介な問題が出てこないとも限らない。まさにリアルアバターが完成することになる。いずれこの立体モデルをフェイク動画として使う場面が出てくるだろう。

 個人の顔の肖像権を,どう考えるか,真剣な議論が必要だと思う。