jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

地面は動く--近代土木技術の限界が来た

大阪・関西万博会場でガス爆発事故…「メタンガス」の危険性は国会で指摘されていた(日刊ゲンダイDIGITAL) - Yahoo!ニュース (2024/3/30)。

 関西万博には,ほかにもいろいろな無理がある。主催者は日本国際博覧会協会で,開催都市ではなく政府である。組織としては,役員一覧 | EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト を参照すると,会長は経団連,理事(副会長)には関西各県の商工会議所,経済同友会,そして大阪府知事大阪市長,科学未来館館長などが名前を連ねる。特に吉村洋文大阪府知事,横山英幸大阪市長は,日本維新の会の代表と幹事長でもある。

 政府ということは自由民主党だが,日本維新の会は与党側であるとすると,関西万博は決行される。経団連の十倉雅和会長も,とんでも発言でミソをつけた(経団連・十倉会長、「万博から能登に足を伸ばせば復興のアクセルに」発言にネット上ではツッコミ殺到「むしろブレーキ」 (msn.com) 2024/4/1)。どこまで続けるつもりだろうか。

 地面からメタンガスが発生し,それに火がついて爆発した。夢洲埋立地である。何を埋め立てたのだろうか。東京の夢の島は,かつてはゴミを埋め立てて作られた。大阪の夢洲の土はどこから持ってきたのだろうか。

 東京電力福島第一原子力発電所の水素爆発・メルトダウンによって地域で放射能汚染した土壌が大量に一時保管されたままになっている。他県に移送するという計画も,移送先の自治体の住民の反対運動で全く実現していない。

 宅地造成で山を切り崩した土地と,切り崩した土で埋めた盛土の土地も,地震の際には崖崩れと液状化で不安定になる。

 能登半島地震熊本地震阪神・淡路大震災で崩壊した道路を見ると,舗装の厚さが10cm程度で,あっという間にめくれ上がってしまっていた。つまり,基本的に破壊をある程度抑制できる鉄筋は入っていない。

 法面を補強するために,アンカーを打ち込む工事が行われるようになっている。少なくともアンカーのない法面は,例えば震度6強ぐらいの地震では,確実に崩れる。アンカーがあったとしても,そのアンカーの根っこの部分が施工から数年後に初期の設計どおりの強度がキープできるとは限らない。

 土木工事を行ったとして,そのあとの数年のうちに舗装の下に水が入り込み,土が流出したとしても舗装があるために発見することはできない。補強のための金属メッシュや鉄筋も,年月が経つと錆びる。コンクリートにヒビが入り,圧縮強度は保てても引っ張り強度はキープできなくなっている。

 強度の劣化をチェックする技術も開発されているが,何百m,何百kmもの構造物のわずかな欠陥を発見し,それを補修するのに,どれほどの時間とコストがかかるかを考えると,劣化するに任せていると言っても過言ではない。

 地震で地面が動く。地震で起きた津波で巨大な津波が襲ってくる。これに対抗できる土木技術は,残念ながらいまのところ完璧なものはない。ビルは倒れ,家は傾き,スーパー堤防ですら崩壊する。作った時は完璧だったとしても,それから数年,数十年をキープできる技術がない。自己修復型コンクリートなどというものも開発されているが,まだほとんど実験レベルである。ただ,ギリシャ・ローマ時代の石積を支えているコンクリートは,雨水と反応して自己修復能力を偶然持てたという。

 仮に,舗装を1mもの厚さにしたとしても,地震による地面のズレに対抗できるものではない。つまり今の10倍以上のコストを掛けたとしても,大地震と呼ばれるクラスの地震が来た場合,破壊を防ぐことはできない。

 この鉄筋,あるいは鉄骨による土木建築技術は,できた時点の強度から下がる一方である。これに対して,1000年以上も地震に耐えてきた五重塔などの木造構造物にヒントを得て,木造の高層ビルを作ろうという計画が進んでいる(日本一“木造高層ビル”着工 地上18階・2026年完成予定 木材使用は「日本の未来」国土保全と林業持続へ|FNNプライムオンライン 2024/1/24)。新国立競技場も多くの木材が使われているし,関西万博でいろいろ話題の大屋根リングも木造軸組みである。しかし,1年で取り壊してしまう構造物に,わざわざ木材を使う必要もないだろう。完全消失した沖縄の首里城は,どのように修復されるのだろうか。フランスのアムステルダム大聖堂はどんな修復をするのだろうか。

 いずれにしても,近代の土木建築技術には限界があると思われる。10年で寿命がくる消費財と同程度である。なんと,木造の一軒家の寿命が25年,コンクリート住宅でも2世代持たないという。ダンパーで揺れを吸収するという技術も発表されているが,これも性能がバラバラだし,施工業者のクオリティーも保証できない。

 1回の地震によって,さまざまな歪が生じ,これによって2回目の揺れにはほぼ耐えることはできない。歪が修復されるような仕組みがないからである。これも含めて,もう少し頭を使って設計する必要があると考える。