jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

鉄筋コンクリートに代わる次の構造物を考える--外は鉄製パイプ,中は鉄筋+コンクリートのハイブリッド構造を提案

2022/3/16 23時36分に宮城県沖で起きた大地震。今回の地震は横揺れが1分以上も長く続き,低周波振動による被害が多く見られた。横揺れが繰り返されることで,おそらく瞬間的な揺れには耐えられる構造でも,前半の揺れによって生じたヒビや構造の崩れが,後半の揺れによって破壊につながるという仕組みなどだと考えられる。

 1923年の関東大震災では,地震の後の火事で東京が火の海になった。この教訓から,地震にも火災にも強い鉄筋コンクリート構造物が増え,木造住宅も耐燃性材料の使用や軽量の屋根,筋交い(すじかい)構造などが標準となっていった。

 1995年1月17日の阪神淡路大震災では,直下型に近い縦揺れが特徴となり,上下方向の揺れによる建物の基礎の崩壊,基礎から建屋が浮くことによる崩壊が目立った。この教訓から,基礎の強度の高いベタ基礎が標準となり,上モノとベタ基礎をボルトで接合する構造が一般的になった。

 2011年3月11日の東日本大震災は,津波による被害が大きかった。個別の建物の構造というより,町や地域全体の構造をどうすべきか,という課題を突きつけられ,町を高台に移したり,土地を嵩上げするなどが進められた。しかし,もともと平地のない日本で,海の恵みで生活を立ててきた日本にとって,海から離れることは日本らしさと逆行するような気がする。

 筆者が生まれ育った関西は,気候が温暖で住むのにいい場所だったが,阪神淡路大震災では実家は半壊し,その後,両親も他界し,兄が旧家を取り壊して新しい家に建て替えた。近所ではマンションが傾き,その後,倒壊した。2階建てのアパートは1階が押しつぶされた。

 古い建築基準の建物は結局被害が大きい。しかし新しい基準になっても絶対に大丈夫という保証はどこにもない。実際,一般住宅よりもはるかに強度の高い学校などの公共施設でも大きな被害を受けた。その後,外付けで耐震補強をする事業が進められた。教室の外側に大きなバツ印の補強が見える校舎はなんとも痛々しい感じだった。

 公共の建造物では,高層ビルと鉄道,高速道路などが評価のポイントになる。

 高層ビルは,鉄骨構造による柔構造が採用された。ところが今回のような低周波振動に対しては,振動が収まるまでに10分近くかかるという欠点があることが明らかになった。東日本大震災や今回の地震において,都内では震度4程度だったにもかかわらず,高層ビルで大きくゆっくり長く揺れることで,住民や職場の人が不安を覚えたという。最新のタワーマンションでも,同じような影響があった。通常の地震振動を吸収する重りや振り子を設けた高層ビルでも,低周波振動をキャンセルできないものもある。これからの課題だろう。

 そして,今回の地震でまた見かけたのが,鉄筋コンクリート構造物の大規模な崩壊である。山形新幹線脱線事故では,やまびこの17両中16両が脱線し,まだ復旧に2週間かかると言われているが,その線路を支える高架線の鉄筋コンクリート構造物も,一部でコンクリート部分が崩れ,鉄筋が「ん」字のように曲がった形になっていた。

 同じような光景は,阪神大震災の新幹線の高架線でも見られた。当時は構造物の中から空き缶やタバコの吸い殻が見つかり,建設作業時の不適切な行動が問題になっていた。最も有名になったのは,阪神高速道路が高架脚ごと横倒しになったことで,その後,各地の高速道路の高架脚の補強が行われたのは記憶に新しい。

 筆者が阪神大震災のときは関東に住んでおり,帰省したのは1週間後だった。最寄り駅までは電車は動いておらず,2駅を1時間かけて歩いてたどりついた。その途中でも,国道にかかる陸橋の太さ2m角もあろうかという脚が見事に圧縮崩壊して鉄筋がむき出しになっていた。

 実は,今の家の近所でも,地震が来たら危険だろうな,と思われる構造物は数多い。1つはコンクリートブロックの塀やコンクリート板による土地の嵩上げ壁である。コンクリートブロック塀がいとも簡単に崩れるのは,比較的小規模な地震の際にも各地で見られる。イヌの散歩をしていて,「この瞬間,地震が来たらこの塀が崩れてくるかもしれない」という不安は常に持っている。

 そしてもう1つが,電柱である。多くの電柱は鉄筋コンクリート製である。電柱メーカーの実験をテレビ番組で見たときは,電柱に曲げ方向の力を加え,40tぐらいまでは耐えられることを知っている。

 しかしこれは,新品の電柱の話である。鉄筋は品質が安定しており,仮に錆びてもそれなりの強度を維持できる。ただし,鉄筋の強さは引っ張り方向には強いが,曲げ方向には限度があり,座屈してしまう。一方,コンクリートは圧縮方向には圧倒的に強いが,引っ張り方向にはからきし弱い。このため,高強度の鉄筋コンクリート構造物を作るには,鉄筋を引っ張った状態でコンクリートを固め,コンクリートに圧縮力をあらかじめ持たせることで,より強度の高い構造物を作ることができる。しかし,一般の施工においては,鉄筋をただ組み上げた状態でコンクリートを流し込んで固めるだけなので,コンクリートに圧縮力を持たせるには至っていない。

 さらに問題なのは,コンクリートはヒビが入ると一気に強度が下がることである。

 正直,世の中のコンクリート構造物は,ほとんどが野ざらし状態である。数年経過するうちに,雨水が微小な隙間から侵入し,これが中の鉄筋を錆びさせたり,また凍ってヒビを拡大させたりする。亀裂が入ったところは,微小亀裂であってももはや引っ張り強度はほぼゼロに等しい。地震などの大きな力にはもはや耐えることはできない。自宅の近くの電柱にも,よく見ると縦に数10cmもの亀裂が見える。地震の揺れや強風に耐えられるのか,心配になってくる。崩壊の最後の部分を鉄筋が支えて完全崩壊は免れるかもしれないが,これは耐震といえるのかどうか疑問である。

 鉄筋コンクリート構造といえば,巨大なダムも基本的には同じである。ダムには万一を考えてさまざまなセンサーが取り付けられており,日常的な点検も行われているはずだが,数十年も経過すると安全を保証できるかどうかは疑わしい。しかも,常に強大な水圧がかかり,また地震にも見舞われる。海外でのダムの決壊の映像を見ると,日本でも起きないとは限らない。

 自然災害は人智の及ぶところではない強大な力を持っている。特に地震国日本では,鉄筋コンクリート構造をさらに強化した構造物が求められているのを感じる。阪神大震災の後,高速道路の高架脚を炭素繊維シートで巻いて強度を高める工事が施された。コンクリートが崩壊して強度を失う前に,炭素繊維シートがその柔軟性で構造物を支え,コンクリートの崩壊を防ぐという構造だと思う。しかしその効果はまだ実証されていない。今回の地震山形新幹線の高架脚にこの構造が適用されていれば,良かったのだがと残念でならない。

 後付工事では炭素繊維シートは施工はしやすいが,品質のばらつきが気になる。やはり工場製造段階できちんと管理すべきだろう。

 高価な炭素繊維シートをすべての構造物に採用するわけにはいかないので,外側を鉄のパイプ構造,中に鉄筋構造,そしてその間にコンクリートを積めるハイブリッド構造が望ましいのではないかと考える。また,コンクリートに代わる軽量の耐圧縮性のある素材の開発も必要かと思われる。