東北に次いで、北海道が豪雨に見舞われている。梅雨がなく、どちらかと言えば大陸風の土地である。豪雨に対する備えも、まして洪水に対する構えもほとんどないだろう。ゆったりとした平野をのんびり流れていた自然豊かな河川が氾濫してしまった。
どこでも大雨が降る可能性については、新しい「環状不安定モデル」で定義したとおりである 「環状不安定パターン」という定義をしてみる--日本海から太平洋を丸で囲うと答えが出てくる - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2022/7/19。川の堤防が見える家では、その高さまでは水が氾濫すると見ておくべきだろう。
水の力は想像以上である。少しでもヒビがあればそこを集中的に攻撃して土砂を奪い、そして一気に舗装や堤防、橋げたなどを流してしまう。堤防に1箇所亀裂が入れば、あとは幅10mぐらいまでは一気に崩れ、一気に水が街中に流れ出す。
30cmくらいの深さで床下浸水しても、床下はもちろん、畳も壁も湿気てしまい、使い物にならない。まして、床上浸水では、家電もタンスも資料もすべて廃棄になる。
日本各地で、ここ数年、河川堤防の大規模な崩壊や越水が続いている。1つの地域で長時間大雨が降る線状降水帯が当たり前のように発生している。人口がどんどん増えていたころに住宅地が山に広がることで,土砂崩れ災害の被害も増えているが,一方で昔からの平野部も大河川の堤防決壊と内水氾濫の危険にさらされてしまう。
最近の多くの家はベタ基礎にボルト留めすることで地震に対して強くなっているし,堤防決壊に対して流されないぐらいの強さは持っているが,浸水は免れない。いくら床の高さを高く設計しても,堤防決壊による浸水までは想定されていないからである。
そこでもう,逆転の発想を考えた。家の1階を完全気密構造にするのである。
コンクリートでベタ基礎を築いたのに続き,1階の壁も密閉構造とするため,①全面コンクリート壁とする,②通常の軸組構造に加えて船舶の船体のようなFRP(強化プラスチック)のシートで囲う,などの方法を開発する。
ドア,窓はオプションである。1階全体をコンクリート壁とすることは,現状のコンクリート住宅でも実現できている。ただ,ドアや窓サッシなどは防水構造にはなっていないので,ここの設計・部品変更をする。
1階のドアや窓をすべてなくし,入り口も2階にする設計もあり得る。さすがに2mの深さまで水が来る確率は限りなく少ない。津波のような強い流れがなければ,家全体が流されることもない。内水氾濫での逆流に対応するためには,風呂やトイレなどの水回りも2階に備えることにすればいい。
1階に光が入らないという抵抗もないわけではないが,最近の壁面照明技術を使えばそれほど違和感はないのではないか。最近の家は1階から2階まで壁一続きの真四角なデザインが多いので,それほど違和感はないのではないかという気もする。
以前,車庫の地下にシェルターを作ることを提案した 庭や駐車スペースの地下にシェルターユニットを埋め込むアイディア - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2022/5/28。コストの問題なども指摘していた。今回提案の「1階をシェルター」にする方法の方が現実的に思われる。
コンクリート住宅で,扉と窓を完全防水構造,水回りを2階,という設計が,これに最も近い,実現可能な構造に思える。また,ユニット工法でも1階部分を完全気密構造にするように設計すれば,問題なく実現できる。
違和感のない,暮らしやすい設計をするのは,住宅メーカーの仕事である。日本住宅のいい面や美しさはあるが,新しい日本の住宅イメージを提案するといいと思う。