jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

H3ロケットの打ち上げ失敗--日本は航空宇宙ビジネスから撤退すべき段階

2023/2/17 日本の大型ロケットH3が,3回の打ち上げ延期後にメインエンジン点火まで行ったものの,補助エンジンが点火せず,打ち上げが失敗に終わった。JAXAなどの関係者には申し訳ないが,日本は航空宇宙ビジネスのプラットフォームから撤退すべきタイミングだと思った。

 JAXAについては,宇宙ステーションにおける実験をするための予備データ取りの段階で,報告書に偽造があり,実験の遂行責任者だった古川聡氏が処分を受けた JAXA研究不正、古川飛行士ら処分 来年度の飛行計画変更なし | Science Portal - 科学技術の最新情報サイト「サイエンスポータル」 (jst.go.jp) 2023/1/13 というニュースが流れたばかりである。H3ロケットの打ち上げ成功をもって挽回を図ろうとできた部分もあるはずだが,残念ながら失敗した。

 さらに,三菱重工が中心に開発していた国産ジェット機MRJも開発の中止が正式発表された 三菱重工の国産ジェット旅客機が開発中止、政治の責任を忘れてもらっては困る(JBpress) - Yahoo!ニュース 2023/2/9。MRJも1回の試験飛行をしただけで,ほとんど飛ぶこともなかった。

 正直,筆者が大学進学した頃,工学部の航空工学科は建築科に次いで偏差値が高かった。原子力工学科も電気工学科に次ぐ高い偏差値を誇っていた。興味がなかったとはいえ,こんな高偏差値の学科に進む同期は,世の中のために大活躍するのだろうな,とうらやましくさえ思っていた。しかしそれから40年経った今,残念ながら日本を背負って立つエンジニア部門ではなくなってしまった。というか,モノづくりエンジニアそのものが,絶滅危惧種となってしまった。さらにモノづくりオペレーター(職人)が消えてしまった。

 かつて日本の経済を支えた造船業も,ほぼ息絶えてしまっている。航空機産業も,日本の出る幕はほとんどない。国産ジェット機,国産ロケットで日本の純国産技術を世界にアピールするはずが,残念ながら逆効果になってしまった。おそらく,H3ロケットH2Aロケット人工衛星を打ち上げてもらいたいと依頼してくる国も企業もないだろう。かつての日本の自動車産業のような「圧倒的低価格」を打ち出すことも,かつての半導体産業のような「圧倒的な低不良率」を訴えることもできない。お客様がついてこないプラットフォームは,ビジネスとしてはありえない。

 そもそも,MRJは富裕層のプライベートジェットから国賓級の専用機などに向けた高価格商品である。リーマンショックで世界中の経済がおかしくなった時点で,もはや勝機はなかったのではないか。中東の石油マネーすら,プライベートジェットのような自分のモノにお金を出すことはなくなっている。H3ロケットが,たとえば世界最大のペイロードを持っている,といった謳い文句でもあれば別だが,売り文句に魅力がない。

 世界の旅客機ビジネスが,経済,環境などの面で今求めているのは,圧倒的な低燃費だろう。これにMRJは答えることができない。一方で,航空機ビジネスで最もお金が動くのは,武器としての戦闘機や爆撃機,輸送機などの部門である。アメリカを筆頭にロシアもイギリスもそして中国も,開発に凌ぎを削っている。さらにインドは,国産戦闘機を国産空母に搭載するという国産化を進めている。この分野で,日本製の戦闘機がまったく歯が立たないのは言うまでもない。

 ロケットに至っては,これはもう武器以外の何者でもない。欧米やロシアが先行して宇宙開発が進んだが,これは別に月や他の惑星に行くという冒険が目的ではなく,宇宙空間に軍事人工衛星を打ち上げるための技術開発である。さらにかつてドイツがV8ロケットを武器であるミサイルとして開発したように,明らかな戦略兵器の開発である。中国,韓国が躍起になって開発し,さらに北朝鮮大陸間弾道ミサイルを開発した。これをロケットと称しているが,搭載するのは核弾頭であり,明らかに日欧米を狙った武器である。ロケット保有国がこぞって原子力開発を行っているのも,核兵器を開発するための隠れ蓑である。

 第二次世界大戦後の骨抜きによって平和ボケしている日本のみが,戦争反対,武器反対,核反対,と叫んでいる中で,世の中の航空機もミサイルも武器としての性能を明らかに向上させ続けている。設計も加工も組み立ても,1つ間違えば自分の国が被害を受けるという使命感もあるし,武器製造にかかわる人の給料も高く保証されている。より高度でいいモノを作るというプラスのスパイラルが働くのは当然である。

 ロケットに載せるための人工衛星にしても,日本が飛ばせる価値のある衛星はもうないのではないか。軍事,気象,通信,GPSなど最先端人工衛星はすでに欧米が打ち上げている。大学生やベンチャーが作るようなミニ衛星など,正直言ってたかが知れている。スターリンクのように数千個の衛星を打ち上げるビジネス力の前に太刀打ちができない。

 おそらく,現在の大学で,航空工学や原子核工学を目指す学生はほとんどいないのではないだろうか。日本には働く場所がないからである。以前から提案している水素エネルギー,食糧資源の開発のために,「水素工学科」や「水産工学科」「農業工学科」を創ってはどうだろうか。そして大学発ベンチャーも含め,どんどん種を撒いていってほしいものである。