日本は事前の予告の段階で「これはロケットという名を借りた弾道ミサイルの発射だ」と決めつけていた。しかし、6月ではなく5月に発射が強行された。単に、出し抜かれ、単に騙されたということで、駆け引きにも負けた形である。
そして、相変わらずの抗議をし、今回はたまたま来日していたアメリカの氏と協議して連携を確認したという。連携というより、単なる「守ってね」お願いをしたに過ぎない。
何かもう次の方法を考えないと、人的、物的な被害が出てからでは遅い。ロシアのウクライナ侵攻と照らし合わせると、同じような行動を始めてもおかしくない。逆に,アメリカが守ってくれるという保証ももはや期待できなくなっている。
その後,トルコが戦闘機を自国で開発したというニュースを見た(「F-35くれないなら自分で作る!」国産ステルス戦闘機を生み出したトルコの思惑 無人機大国の“親分”登場か | 乗りものニュース (trafficnews.jp) 2023/6/2)。これで,アメリカ,ロシア,中国,韓国に次ぐ5番目の戦闘機輸出国になると宣言している。
筆者は,軍事産業を支持はしていない。輸出して外貨を稼ぐなど,あってはならないことと思っている。しかし,自国を守るために海外から購入する,というのでは,購入先の軍事産業をさらに拡大させる。世界全体から見れば緊張が高まる。購入するだけでは家電と同じで,基本的にブラックボックスとして使うだけで,何の発展もない。外車を購入して喜んでいるだけになる。
日本のロケット産業も,結局はニーズがないために疲弊したのではないか。アメリカもロシア(旧ソビエト)もまず,武器としてのミサイル開発の流れの中でロケット開発ができ,自国の軍事衛星を打ち上げるためにさらに開発を進めた。カーナビゲーションでお世話になっているGPS衛星も,元をたどれば軍事衛星だし,リモートセンシング衛星も監視衛星である。さまざまな軍事衛星を打ち上げるために,ロケット開発が進んだ。有人宇宙飛行や月への飛行,そして宇宙ステーションなど,いかにも「科学技術の発展のため」の開発に見えるが,結局は場所を支配し,覇権争いに勝ちたいだけである。
北朝鮮は,明らかに軍事目的であり,弾道ミサイルとロケットは基本的に共通である。軍事開発のために国民の生活を犠牲にしているのは確かだと思われるが,失敗することを恐れずひたすら挑戦を続けるバイタリティは,今の日本にはない。
日本のロケット開発は,三菱重工業1社が民間企業の経営の範囲である意味で細々と事業を続けているに過ぎない。国からの予算もない。実験や失敗を繰り返すことができない一発勝負を強いられている。もはや,目標を失っている。
日本国内にニーズのない航空機開発が失敗したのと同じではないのか。広大な国土を持つ中国は,国内用に航空機のニーズがある。国内用であれば,国際標準に準拠していなくても開発して国内で飛ばすことは問題がない(中国初の国産旅客機「C919」就航、ボーイングやエアバスに対抗 - CNN.co.jp 2023/5/29)。いずれ,価格競争力が出てくれば,ひょっとしたらこの中国製旅客機が国際標準になるかもしれない。
日本は何を必要としているのかを,もう一度考える必要がある。宇宙開発ビジネスに乗り出すベンチャー企業がゴロゴロと出始めているが,何を目的にしているのかまったく見えてこない。宇宙体験旅行--パイロットはだれが育てるのか,人的な保証はできるのか。月探査ロボット--おもちゃが月で使えることを証明? 流星の演出--もはや謎。金持ちを遊ばせてお代をいただく,というのなら,アラブの富豪にゴマをするビジネスと何ら代わりはない。
日本にニーズのあるのは,エネルギーと食糧である。水素エネルギーも,日本は技術を持っていてもビジネスでは負ける可能性はある。しかし,国内のエネルギー需要をそれで賄えるのなら,国策として全面的に支援し,資材と資金と人材を投入して開発すべきである。同様に,陸上養殖,植物工場など,他国にない技術を駆使して,国内で食糧を確保する方向に早く舵を切り替えないと,本当に「消えてもだれも困らない国」になってしまう。