jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

EVに対して否定的な理由は充電時間--バッテリーカセット交換式やタンデム式を支持

筆者はずっと,EV(電気自動車)不支持派である。今でもそれはあまり変わっていない。その理由をもう一度考えてみた。

 その最大の理由は,満充電にするまでの時間が掛かり過ぎることである。

 航続距離,つまり1回の給油や充電で走ることのできる距離は,EVの場合は基本的にバッテリーの容量でほぼ決まる。容量が2倍になれば,航続距離は2倍になる,というのが単純計算である。バッテリーの量産化により価格が低下し,同じコストで搭載できるバッテリーの容量が増える。いわゆるバッテリーセルという単位の個数を増やすだけで容量は増え,航続距離は増える。ほとんど何の工夫も要らない。

 バッテリーの容量が2倍になるということは,重量も基本的に2倍になる。その分,車重は重くなり,走行性能は悪くなり,モーターにも負担がかかる。回転のための物理的な抵抗が増えるので,効率は下がる。モーターを支えるベアリングにも負担が増える。ガソリン車時代に,軽量化で燃費を向上させてきた努力がまったく生かされない。

 もともと大型車で車重が重く,また価格も高い高級車では,バッテリーのコストの割合も少ないし,もともと重い車重に対する設計がされているので,あまり問題にならない。ユーザーも金持ちが多いし,自分でメンテナンスすることもないので,平気で外車のEV車を乗り回している。電池交換コストも平気だし,数年で高額買い取りさせて乗り換えるので,痛くも痒くもない。庶民はそうはいかないのである。

 この車重問題,バッテリー価格問題を仮にクリアしたとして,もう1つの問題はバッテリーの充電に掛かる時間が長いことである。

 ガソリン車であれば,ガソリンの足し注ぎに掛かる時間は会計を含めても約5分である。1台の給油機で単純計算で1時間に20台の処理ができる。普通のガソリンスタンドであれば給油機が10台はある。1時間で最大200台の給油ができる計算になる。

 一方EVでは,最近の急速充電でも30分で30kWh程度で,バッテリー容量の1/2ぐらい。しかも充電時間制限が30分になっている。家庭の電源で100%充電するのには,10時間はかかる。使い終わったら,夜の間に充電しておく,という使い方になる。

 もちろん,1日に数百キロも走る人は,毎朝満充電になっていることを確認した上で,走り方の工夫,途中充電場所の計画なども怠らないだろう。日常的に下駄使いする一般人でも,乗った時点で残量がほとんどない,という状態はありえないし,10%でも残量があれば行きだけ,あるいは行って帰ってくるぐらいは問題なくできる。行った先で仕事をするのであれば,そこで数時間充電すればいいし,自宅に戻れるならそこで充電すればいい。

 しかし,ガソリン車の場合,週末にだけ使うといった使い方でも,1週間の間にガソリンが勝手に減ってなくなってしまうことはない。ところがEV車の場合,わずかだがバッテリーは消耗する。具体的には,初期モデルである日産リーフでも,1週間で1%減るか減らないか程度の数字のようである。内容は,バッテリー自身の自己放電,寒冷地でのバッテリーの温度を一定に保つプレコンディショニング,並用する鉛蓄電池がある場合の補助充電などがある。

 リチウムイオンバッテリーが登場する以前の鉛蓄電池で電気自動車を作ろうとした時代は,電池の重さに対する出力が少なく,しかも鉛蓄電池が自己放電しやすいために,EVに対する過剰な警戒があったが,現在のリチウムイオンバッテリーではその過剰な心配は必要ないようである。

 高速道路を走行するときのように,スタンドの間隔が離れている場合は,EV車だと少し不安になる。ガソリン車の場合,ガス欠が近づいている警告であるスタンドマークが表示されてからの走行可能距離は,だいたい10kmある。よほどのことがない限り,次のスタンドに行き着く前にガス欠になることはない。

 EVの場合も電欠警告が出るが,どの%でも残りの走行可能距離が計算されて出てくる。たとえば15%の残量で30km走れる,といった表示になるようである。

 さらに,0%の表示でも,どうやら1kmぐらいは走れるようである。実際に乗っている人にとっては朗報だし,頼りにもなるかもしれない。EV否定派には,精神的にはあまりよくないかなと感じる。

 さて,高速道路で充電することを考えると,高速充電で30分かけてでも50%は回復したいと思うのが人情ではないかと思う。しかし,現時点ではサービスエリア1ヵ所につき,高速充電器が1器あるかどうか,という状況らしい。30分充電なら,充電器に接続して充電している間に,売店に行ったり,軽く食事を取って,再出発する,という感じになるが,これができるのが1台だけ。ガソリンの給油機は3基ぐらいはあるので,ガソリン車が満タン給油して出て行くのなら60台は処理できる勘定になる。

 水素もカセットボンベ方式にすべき--安全性が担保できる方法として日本主導で - jeyseni's diary (hatenablog.com)(2023/11/2)で,ホンダがカセット式のバッテリー交換の仕組みを提案したことをお伝えした。電動バイクからEV車まで,同じカセット式バッテリーを使って交換する方式である。EVなら10個ほどを差し替えれば50%分を充電した形になるし,交換時間は5分で済む。ガソリン車の給油と同じぐらいで可能になる。専門性も要らない。充電設備を集中管理し,満充電になったカセットバッテリーだけを配送すれば,大げさな設備を設置する必要もない。5本ぐらいを予備に積んでおけば,いざというときに自分で交換すればその場で充電した形になる。

 実は,現在の携帯電話が電池交換式でないことに非常に不満を持っている。今でこそ,1回充電すれば丸1日は使うことができるし,残量が数%になってもメール1本,LINE1本の連絡はできる。しかし以前は,残り10%ぐらいになると,なぜか急速に減り,あっという間にシャットダウンしていた。

 バッテリーは長持ちがいい(1) - jeyseni's diary (hatenablog.com)(2020/9/13)。この時,現在使っているSharpスマホに替えたが,その前に使っていたSamsungスマホが,バッテリー交換できる最後の機種だった。予備バッテリーを1個常にカバンに入れておくだけで,仮にシャットダウンしても予備バッテリーと差し替えるだけで,即座に100%の性能に戻る。現在のスマホではACにつなげば1時間で満充電できるが,出先で充電するには充電用のバッテリーEVを持ち歩かなければならない。2回ぐらい充電できるバッテリーでも,重さは200gぐらいあり,スマホとそれほど変わらない重さである。予備バッテリーだと30gで済むのに,と思っている。なぜ,自分で交換できなくなったのかと思ったりするが,結局,バッテリー交換式だと,蓋を開けたり,バッテリーとの間をコネクタで接続したりするため,部品数が増える。規格品のバッテリーだと設計の自由度がなくなるため,バッテリーの形もさまざまとなり,結局設計が追いつかなくなてしまったのかもしれない。

 ホンダのカセット式バッテリーも,結局は設計の自由度を制限する原因になりかねないが,標準化することでコストダウンもできる。ぜひ,他社も採用して広めるべきだが,すでにアメリカのテスラ,中国のBYDなどが圧倒的に先行しており,いまさら難しいのかもしれない。

 もう1つのアイディアは,タンデム式である。これは,同じ規模のバッテリーを2基搭載し,基本的に使うのは1基。これが0%になれば,もう1基に切り替える。そして次のステーションで1基を載せ替えるのである。1基を充電するのに急速充電で30分かかるとしても,載せ替えなら10分で済むし,普通充電すれば10時間かかるとしてもコストは安くなる。

 この方式も,全EVメーカーが協力して統一規格の下で運用する必要がある。規格ができれば,リサイクルやリユーズへの転換もしやすくなる。

 昨年末から実験を始めている太陽電池パネルとポータブルバッテリー(ポータブル太陽電池パネルを導入--ベランダ設置から屋根上設置に移動 - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2023/12/30)でも,バッテリー1個では運用がしにくいことをお伝えした。1台を充電し,その間にもう1台を使う。満充電になってから使わないと,連続して使うことに不安が出てくる。残り10%になったとしても,もう1台が十分充電されていることが分かれば,いつでもすぐに切り替えられるという安心感がある。いわばタンデム方式である。使い切ってから充電すると,そこに1時間の使用できない空白時間が生まれる。これが不安になる理由である。

 できれば,ポータブルバッテリーでもタンデム方式を採用していただき,半分に充電しながら,もう半分でフルパワーで使用できるような設計にしてほしい。そうすれば,1ヵ所に設置したまま,充電と使用を同時にできるからである。

 しかし,いずれにしてもリチウムイオン電池では材料資源が限られるし,リサイクル技術もまだ十分に完成していない。筆者としては,化学反応を利用しないキャパシタ方式の蓄電システムの実用化と普及を期待している。