jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

全EV(電気自動車)化への警鐘--すべてがチグハグな世界中の環境政策

世界中がEV(電気自動車)化へと突っ走っている。「地球温暖化を防ぐ」という大義名分のために,排気ガスを出すガソリン車やディーゼル車は悪というイメージが定着しつつある。

 一方で,この全EV化への警鐘を鳴らす書籍も多く出版されている。正直言えば,どちらの論理も正しいと筆者は考える。

 かつて,化石エネルギーである石油は,「あと○○年で枯渇する」と言われ続けてきた。そのたびに,新しい油田開発が行われた。ただ,油田の場所がこれまでのような陸地ではなく,海底に掘り進んで抽出するという無茶な開発が進められていたり,シェールオイルのように,岩盤に水圧でひび割れを入れて石油成分を絞り出すという新しい技術によって無理やり抽出しているように思える。いずれも,やがて資源を使い切ってしまうだろうことは予想されるし,開発による環境破壊も懸念される。

 CO2を出さないという理由で設置が進む再生可能エネルギーだが,太陽電池パネルにしても風力発電所にしても,広大な土地に多くの設備を設置しなければならない。特に太陽電池パネルの製造には大量の電気が必要で,その主な生産国である中国は,この電力の大部分を石炭火力発電で賄っている。CO2を大量に排出するばかりか,できあがった太陽電池パネルの寿命は20年と短い。そのリサイクルにも大量の電力が必要になる。

 同様に,EV化で必要なリチウムイオン充電池が大問題である。製造に必要なリチウムやコバルトなどのレアメタルが,ほとんどが中国資本によって開発されているというのが最大の問題だが,全世界的に量が足りなくなることに加え,開発に伴う環境汚染と,リサイクルのシステムがまったくできていないことである。

 充電ステーションの設置もなかなか進まない。バッテリーを積み替えるという仕組みも今ひとつすっきりしない。

 EV車は,箱に電池とモーターを積めば基本形はできあがる。部品を買ってきて組み合わせれば作ることができる。これまでのようなピラミッド型の系列の部品会社を育てるという仕組みが崩壊する。最終的にクルマを組み立てる会社も,社員数は半分で済む。

 中国の新興企業が続々とEV車を市場投入し,価格リーダーになることで価格破壊が進む。素材を押さえ,製造工程も押さえ,そして世界市場の1/5を持つ中国が,いつの間にか世界を動かしている。一方で大規模に環境破壊も続けている。

 国連のSDGsの呼びかけも,世界の人口と土地の多くを占める中国やインド,そしてロシアにはまったく届かない。環境保護を自称する環境団体や環境活動家は,プロパガンダ的な過激な暴力的な活動で自己アピールするだけで,「経済活動を止める」こと以外に何の具体的な仕組みを提案していない。2022年には,有名な絵画にペンキをかけるなど,まったく方向違いの活動になっているのが,非常に残念である。

 日本が何ができるのか,もう一度考えてみたい。キーワードはやはり「水素」だと思う。現在のガソリンスタンドのインフラを使って水素ステーションを整備すること,世界に先駆けて開発されている燃料電池車のコストダウンを図ること,そして水素燃焼エンジンを普及させること,そしてこれらを世界に向けて即座に情報発信することである。

 水素エネルギーの問題は,水素脆性と呼ばれる現象と,燃料電池に必要な貴金属であるプラチナ(白金)の確保である。水素が金属に染み込むことにより,金属の弾力性がなくなって破裂する水素脆性は,樹脂とのコンビで解決しつつある。またプラチナに代替できる材料開発もかなり進んでいる。

 EV車のリチウムイオン電池か,燃料電池車の燃料電池か,世界がどちらを選ぶかは,水素供給インフラにかかっている。現在の日本の自動車会社が,EV開発に向いているのは,正直言えば「欧米で売るため」である。EUがガソリン車やディーゼル車だけでなく,日本が先行したハイブリッド車も締め出そうとしているので,EV車を開発せざるを得ないからである。

 かつて日本車は,性能はほどほどだが品質は高く,しかも安い,ということで欧米市場に受け入れられた。今,この立場を中国が担おうとしている。圧倒的な価格破壊が起き,欧米の自動車産業も大打撃を受けるだろう。

 日本は,水素エネルギーを謳い文句として,低価格な水素エネルギー車インフラを提案していくことで,再び世界に対して発言力を持てるようにする必要がある。日本最大手自動車会社による全方位外交は結構だが,正直,水素燃焼エンジン車と水素燃料電池車が「本命」であることをきちんと宣言してほしい。EVでお茶を濁すことのないことを期待したい。