jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

量産した昆虫はニワトリやサカナのエサに--人が直接食べなくても利用する方法を考えよ

昆虫食を考える - jeyseni's diary (2021/12/15)と,ずいぶん前に書いていた。その後,学校給食でコオロギ粉末をひき肉代わりに使った「カボチャコロッケ」が提供された(食用コオロギの粉末を学校給食に 全国初、まず徳島で - 日本経済新聞 (nikkei.com) 2022/11/28)。

 その後,いろいろな事業者や個人が食用コオロギの生産を始めたが,反対意見も根強く,ついに倒産した企業も出てきた。

 身近な食肉である哺乳類も,畜産養殖された肉はあまり抵抗がないが,ジビエとなる鹿,イノシシは,物珍しさや料理人の努力によってそれなりに定着しつつあるが,まだメジャーにはなっていない。かつて食用とされていたウサギも,現在ではほとんど食用で供されることはない。ウマも馬肉として供給されるが,脂肪制限食や趣味食以外で一般スーパーで買う機会はない。カンガルーもオーストラリアでは食されるが,日本ではほとんど見かけない。

 海洋性哺乳類としてクジラはかつて大量に食されたが,現在は捕鯨が原則できなくなって食卓から消えた。そのほかアザラシはイヌイットの貴重な食料だが,日本では食することはない。

 鳥類も,日本ではチキンだけで,かろうじてカモが出てくる程度である。アメリカの七面鳥ホロホロチョウなどは市場に出てこない。ダチョウを飼育している牧場もあるが,メジャーではない。かつて焼き鳥として供されたスズメやその他の野鳥は,カスミ網などでの捕獲が禁止されてからはお目にかかることはない。

 爬虫類,両生類をとりあえず飛ばして,魚類は食料のメインである。甲殻類は,エビが天然,養殖ともに食されるが,カニは天然モノしかない。貝類も多く食される。

 人の手によって育成されたり,養殖されたりしているのは,ウシ,ブタ,ニワトリ,魚類,貝類,エビである。

 さて,飛ばした爬虫類と両生類だが,マムシやハブが強精剤の原料や焼酎につけて酒として供される以外は,ほとんど食用にはならない。海外ではワニを供するところがあり,日本でもメニューになっているレストランはある。トリのササミのような食感と味なのだそうである。同様に,ガマガエルのモモもトリのササミのような肉になる。中国では普通に食べられている。

 ここまで見てきた食材は,いずれも「肉」が基本である。哺乳類も鳥類も魚類も,タンパク源というよりは肉源として食べる。日本ではほとんど見られないカンガルー,ワニ,カエルなども,基本は肉である。

 しかし,一般に肉として市場に出るのは,「人間が与えるエサで飼育できる種」に限られる。しかも主に穀類で育てられることがほぼ条件になっているように思われる。ワニは鶏肉,カエルは生きた昆虫しか食べないから,育てようがない。人工飼料をおいしそうに食べるヘビなど見たことがない。

 逆に見ると,人間が与えたエサを食べない生き物は,飼育しにくいことが分かる。野生の本性が消えない生き物は,飼おうにも慣れないし,逆に攻撃的でもある。飼育する側が危険を感じてしまう。特にヘビ,トカゲ,ワニなどの爬虫類では顕著だろう。大きなハサミを持つカニも,なかなか飼育はしにくいと思われる。

 この点では,昆虫は比較的飼いやすい生き物である。与えたエサで育つし,攻撃的な種も限定的である。日本でもこれまで食べられてきたイナゴやハチノコ,ザザムシなどもハチの成虫以外は攻撃的ではない。育てなくても大量に繁殖している。佃煮やハチミツ漬けなどの珍味としては成り立つが,主菜にはなっていない。

 つまり,昆虫はタンパク源にはなるかもしれないが「肉源」にはなっていないのである。

 昆虫のタンパク質は,外殻や内臓に含まれている。生きた状態では全体の水分量は80%で,ほかの生き物を変わりなく,利用時は乾燥して粉末にするために「タンパク質含有量が他の食品に比べて数倍も高い」といった表現になる。しかし,肉はなく,外殻と内臓だけである。

 外殻だけを見れば,キチンというムコ多糖類と複数のタンパク質でできている。キチンは細胞膜や外殻の構造体を形成し,一種の食物繊維である。手術用の溶ける糸としても使われれいる。タンパク質が糸状になったものとして代表的なのはカイコの糸で,フィブロインというタンパク質でできている。

 栄養素としてタンパク質は必要だが,そのために乾燥内臓や絹糸のような繊維を食べ物として摂取することは,「肉」をとる理由とはまったく異なる。

 動物の骨や甲殻類の外殻にはカルシウムも含まれるが,昆虫の外殻にはカルシウムはない。何のために昆虫を乾燥粉末にして摂取する必要があるのか,理解できない。

 肉源としての生き物は,エサの種類を変えたり,品種改良をして肉質や肉量を変えたりして,より好みの味に近づける努力ができるが,昆虫の場合,肉質が変わるわけでも,味が変わるわけでもない。短期間で生育することと餌に対する成長率が高いことだけが特徴になる。

 昆虫をエサとするのは,鳥類と魚類である。ニワトリは現在,穀類で育てられるが,このエサを昆虫に代えることはできる。サカナの養殖も,人間でも食べられるアジやイワシなどをエサにしているが,これを昆虫に代えればアジやイワシを人間が食べることができる。

 もう1つ可能性があるとすれば,昆虫をエサとするカエルを養殖して,その肉を食用にするという選択もあるのだが,食べられるところが基本的に後ろ脚のモモの筋肉しかなく,効率は悪い。

 せっかく量産が可能になったコオロギなので,これをニワトリやサカナのエサにするビジネスモデルを再構築してはどうだろうか。穀類の輸入コストと比較してペイするようであれば,輸入も減らせられるし,食糧安保にとっても有利になる。

 日本人は,魚や貝の肉から始まり,鳥肉を食べ,そして明治時代にウシやブタの肉に目覚めた。もともと肉は食べてきたのである。昆虫を食べるサルとは,最初から一線を画しているのである。生き物を飼育し,植物を栽培し,火で加熱するという能力を持つ人間は,もはやサルには戻れない。今さら昆虫を直接食べる必要はなく,それを食糧となる肉源を育てるために使えばいいのではないかと思うのである。なんでもブームに乗る必要はない。