jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

24時間で復旧した台湾鉄道--落石を砕く重機。傾いたビルの解体にも大型重機が活躍。日本では,民間企業との協力体制は皆無

台湾で2024/4/3に起きた震度6弱の大地震で,台湾東岸の鉄道は一時全線で不通になったが,24時間後には全線で開通した。これにより,孤立した地区にも大量の食料が迅速に届けられたという。

 道路の復旧も3日後。孤立地区に足止めされた700人の観光客も,クルマで脱出することができた。

 地震発生から3時間で,体育館などの避難所にプライバシーが守れる四角いテントが設置された(自治体は避難所用の「避難テント」の準備を--台湾地震に学べ - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2024/4/6)。

 鉄道の不通の原因は,山から崩れた大岩が線路に落下し,線路を塞いだことによる。地震から数時間後には,この岩を砕く大型重機が稼働した。岩を取り除いた後,線路の復旧と点検で1000人が動員され,丸1日で全線開通した。

 能登半島地震と比べても,被害の状況,線路の状況もすべて異なるので同じ土俵で語ることはできないが,それにしても圧倒的な動員力の差があるように思える。

 9階建てのアパートが傾いた現場では,翌日にはそれ以上の倒壊を防ぐため,建物の手前に土砂を積み,そして建物の真ん中に鉄製のつっかえ棒が取り付けられた。2日後には先端部分の解体も始まっている。瓦礫の撤去も,ベルトコンベアが設置されているように見えた。

 台湾では,災害時に地方自治体と民間企業,NPOが,情報を共有し,同時に動き出す体制が取られているという。2018年に起きた大地震の後,体制を整えたという。自治体の中でも,災害対策課だけでなく,水道,電気,福祉,教育など,災害復旧に関係する部署がすべてSNSでつながっており,同時に活動を開始していた。避難所の設置,配給食料の準備などが,災害発生後すぐに稼働したのだという。

 日本だと,まず政府に対策本部が設置され,自治体からの状況報告を受けて状況を判断し,自衛隊の出動を指示する,というところでもうすでに半日は経過してしまうだろう。そもそも対策本部に政府関係者が集まるまでに数時間もかかる。そして活動を行うのは自衛隊だけであり,地元の自治体などは独自に動かなければならない。被害状況を政府に報告することが優先して,住民の立場に立った活動ができないのではないか。

 能登半島地震でも,鉄道と道路が被害を受けて,半島全体が孤立状態になった。電気も水道も止まった。8割もの家屋が倒壊した。

 道路の寸断状況からみて,孤立状態からの復旧には時間が掛かりそうに思えた。急円物資を運ぶことも難しい。ならば,自衛隊のヘリコプターやオスプレイを大量に投入して,被災者を孤立状態から救出することが先決だと考えた(自衛隊の有事対応の不安--機動力が発揮できていないのは政治のせいなのか - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2024/1/10)。孤立地区へ向かうのは,徒歩による自衛隊の姿しか見えなかった。

 悪路走行が得意なキャタピラー車で孤立地区に入れないものかとも指摘した(地盤が盛り上がった特異な能登半島地震--これまでの大地震と異なるパターン(比較表掲載)【追記】 - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2024/1/13)。普通の農業用運搬車でもいいと思った。

 しかし,考えてみると,土木建設用の重機でガンガン攻めれば,もっと早く道が開通し,孤立の解消ができたのではないかと思ったりする。今から考えたら,石川県にはこうした土木建設用重機を製造するコマツがあるではないか。なぜ大量投入ができなかったのか。

 台湾のような,有事における政府,自治体,民間企業,NPOなどの協力体制が,日本には皆無だから,手の出しようがなかったのか。

 結局,トレーラーハウスにしても,トイレカーにしても,ボランティアで関連企業が数台を供出して何日も経ってから協力を申し出る,といった形しか取れない。あらかじめ,「こういう有事のケースでは,1台あたり1日◯◯円の協力費を政府が出す」といった取り決めがあれば,即座に協力ができたのではないだろうか。

 結局,ボランティアも地震直後には現地に入ることができず,また現地で宿泊することもできず,片道3時間,現地活動時間1時間,などというまったく役に立たない運用しかできなかった。被災者をいち早く孤立地域からヘリで救出していれば,現地の避難所などをボランティアの宿泊・活動拠点として使え,効率的な復旧活動ができたのではないだろうか。

 正直,能登半島地震と台湾地震が逆の順番で起きていれば良かったのにと思う。台湾地震での対応の早さに感心しているうちに国内で災害が起きれば,台湾に習った行動ができたかもしれない。

 本当にこんな状態で,首都直下地震南海トラフ地震が起きたときには,誰にも助けを受けられずに亡くなる人が多くなるのではないかと心配である。