2024年元日の能登半島地震から10日が経過した。2023/5/5に起きた奥能登地震クラスをイメージしていたが,被害が想定以上に大きかった。
孤立地区も多い。半島の地形的特徴として,海岸線にある主要道路が土砂崩れで寸断され,細い山道も土砂崩れで通行不能になっている。1週間経過時点で山道の通行は改善してきたが,海岸線の道路が使えず,最終的に孤立地区に到達できていない。
次の有事に日本はどう備えるべきか--世界に対してSDGsの具体的な提案と実行で日本の存在意義を明確にせよ - jeyseni's diary (hatenablog.com) (2022/2/19)のブログで,トンガでの火山噴火に対する自衛隊の対応を書いた。以下に引用すると,
「トンガで1/14に起きた火山島の噴火で,自衛隊輸送機が救援に出発したのが1/21。しかし,隊員のコロナ感染や飛行場の不具合などで支援が遅れた。輸送艦「おおすみ」が出発したのが1/24で,現地到着が2/8。輸送機隊は2/19に現地を撤収した。」
航空機での支援で1週間後,船舶での支援で1ヶ月後である。もちろん何を送るかの選定と調達,搭載などさまざまな業務はあるにしても,時間がかかっている。支援を政府が決定するのが遅かったのか,自衛隊の有事対応が遅いのか,あるいは他国の支援の様子を見てから決定したからなのか,事情はいろいろあるのだろう。
しかし,国内の有事にまず対応すべきなのは自衛隊である。陸路,空路,海路の支援ルートを判断してもう少し有効な支援ができたのではないかと思うのである。
特に,同じ県内にある小松基地を支援拠点とした空路でのサポートはできなかったのだろうか。小松基地から輪島までの片道は約130km。自衛隊のUH60JAヘリコプターの仕様を見ると,「陸上自衛隊の多用途ヘリ。 愛称はブラックホーク。 乗員は最大14人で、全長19.8メートル、全幅16.4メートル、全高は5.1メートル。 巡航速度は時速約240キロで、航続距離は約470キロ」(Wikipedia)とある。片道30分。行きに物資と救助隊員を運び,帰りに被災者を運ぶ,ということを繰り返せば,もう少し被害を軽微にできたのではないか,と考えたりする。この陸自のヘリの使用が決定されたのが1/8である。1週間も経過した後である。
そこが役所仕事なのか,政府の判断任せなのか,とにかく初動が遅いのはいつものことのように思うのである。
空路では,小松基地だけでなく,富山空港,能登空港,福井空港も一般の利用制限をしてでも救援拠点としての利用に転換すべきではなかったのだろうか。
今回の地震では,津波を伴っており,海路での救援は難しかったのかもしれない。実際,想定外の地盤隆起で海岸線が盛り上がり,船舶の着岸ができない状態になっている。しかしそれでも,船舶からの小型ヘリでの物資輸送ができたのではないかと思えるし,こんなときのこそ,活躍すべきなのが災害用ドローンではないかと思うのである(災害時にもっとドローンを活用せよ - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2020/7/10)。沖合から陸地まで,灯油のポリタンクを運ぶことぐらい,容易なのではないだろうか。
海路からの支援という意味では,阪神淡路大震災や東日本大震災の際に,米軍の支援を政府が断ったことが思い出される。最終的に,米軍艦の入浴設備を使わせてもらって助かった思いをした日本人がどれだけいたことだろうか。いずれも寒い季節の地震だっただけにありがたかったはずである。
今回の地震では,現地への重機の投入ができておらず,電気と水道の復旧に時間がかかる。陸路の復旧には土砂の取り除きと整地,さらなるがけ崩れの防止など,時間がかかる。ならば空路,海路で断続的な物資補給を数多く続けることがより効果が高いように思える。発電機と燃料,暖房器と燃料をまず投入して,明かりと熱を連続して確保することが第一だと考える。水,食糧は少しガマンはできるかと思える。
防衛省・自衛隊|令和4年版防衛白書|資料8 主要航空機の保有数・性能諸元 (mod.go.jp) を見ると,自衛隊の陸海空のヘリコプター保有台数は大小合わせて260機ある。この際,オスプレイを投入してもいいではないか。活動している隊員の方の努力には感謝するが,どうも有事の初動対応がいつも遅いように感じる。自衛隊の最高責任者は内閣総理大臣だが,防衛大臣,参謀長などによるボトムアップ申告と,それに即応して出動できる事前の準備態勢の確立を改めて求めたい。正直,関東直下型地震や南海トラフ地震が現実となった場合,支援に対する不安が消えない。