jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

プライバシーとボランティアの矛盾

新型コロナウイルス禍で保健所の業務がひっ迫している。症状の申告を受けて,PCR検査を指導するのか,自宅で様子見してもらうのかの切り分けに,おそらく1人の相談者について10分はかかるだろう。症状が悪化した人の問い合わせには,診察や入院できる病院を探すという仕事があるだろう。しかし現在,病院が一発で見つかることはなく,5件も6件も電話してようやく行先が決まる。決まらないまま,亡くなる人も出てくる。

 その前に,保健所に電話がなかなかつながらないという。実は筆者もコールセンターの仕事を経験している。営業で電話発信する側の業務も,注文やクレームなどの電話受信する側の業務も知っている。現在の保健所は主にこの受信側の業務で手一杯になっている。実際,1件の受信に10分かかるとして,1時間で最大6件。1日でも60件が限界である。おそらく,1つの保健所で処理するコール数は1日で2000件に上るのではないか。すると,単純計算で34人のスタッフが必要になる。1件あたり10分で済めばいいが,実際は持病の確認なども含めると30分もかかるかもしれない。多分現在は24時間体制ではないだろうが,昼夜2交代とすると100人のスタッフが必要になる。

 民間のコールセンターの経験からすると,ここは民間業者が受託した方がいいのではないか,という気持ちにもなってくる。もっとも,電話をかけてくる相手が新型コロナウイルスに感染したかもしれない,という気持ちでかけてくるので,応対の態度には細心の注意が必要である。十分な訓練を受けた人でないと,相手を怒らせてしまったりして,対応は難しいだろう。

 もう一つ問題になるのが,相手のプライバシー保護である。最初,この受付業務を,仕事に困っている人に手伝ってもらって保健所の業務軽減ができないか,という意識でこのブログを書き始めた。ボランティアでも引き受けてくれる人は多いのではないか,という期待もあった。

 モノの注文を受け付けるコールセンターは発送伝票に必要な情報を記録するだけで済む。オペレーターと客の間に何の関係も生まれない。しかし,医療関係の情報だと,どこの誰が,どのような経緯で,誰と,といった行動履歴,病歴などを聞き取る必要がある。人間の記憶というのは厄介で,この手の生々しい情報が記憶に残ってしまう。そしてその情報について,外部でつい話をしてしまったり,後々まで気になったりするものだ。まして,たとえば電話の相手が自分の知っている町に住んでいるとか,知っている企業に勤めているとか,といった情報に触れてしまうと,一気に記憶の中に鮮明に取り込まれることになる。

 もともと「医療関係者」としての教育を受けた人でも,個人の健康上のプライバシーに触れて関心がないわけではない。どの業界であっても,聖人であり続けることは難しい。宗教人でも医者でも弁護士でも裁判官でも教員でも警察官でも政治家でも,同じである。保健所の人といえども,間違いがないとは言えない。

 情報を聞き出すところは,Web受付システムで自動的に行えばいいのではないだろうか。不十分な回答をすれば受け付けられないようにすれば,何度も聞きなおすこともない。

 コールセンターの業務で感じたが,最初の切り分けの部分はコールする側で条件を入力して判断してもらった方が,解決は早いと感じている。スマホアプリを作成できる能力があるといいのだが,だれか作ってくれないものだろうか。単純な条件分岐だけなのだが。