企業には,さまざまな部門がある。筆者は1つの成果物に対して企画・制作・進行管理から一部営業,Web制作まで一貫して手掛けているので,社内の人に仕事を依頼するのは,本格的な営業推進と,経理,システム管理,そして出退勤などの総務関連の業務である。
フェイス・ツー・フェイスの交渉が必要な営業活動は,出かけていく必要があるが,その他の自分の業務は基本的にテレワークが可能である。これまでも,パソコン1台があれば出張先であろうが海外であろうが喫茶店であろうが,また休日や夜中であっても,仕事を進めてきた。必要なハードウエア,ソフトウエア,通信環境などは,自分で勉強し,自分で費用負担して,自分が都合のいい方法で構築してきた。システムの不具合に対応するためのバックアップ,コンピュータウイルスへの防御システム,そして情報漏えいを防ぐための暗号化処理やロック処理なども,自分で勉強して導入してきた。
世の中には,万全のセキュリティーシステムやテレワークサポートシステムがある。導入コストや維持コストは当然のことながらかかる。おそらくこういう市販のシステムは,完全であるがゆえにガチガチに管理され,融通が効かない仕組みなのだろうと想像する。しかし,その流儀さえ身につければ,頭を使うほどのことはない。ただ費用を基本的には企業側が支払う必要がある,というだけである。
テレワークをしない企業は,経営者のITリテラシーが低いのと同時に,社員のITリテラシーも低いことが原因で,テレワークの導入を進めない。いや,導入するかどうかの検討もしない。テレワーク導入に対する追加コストと,導入によるメリット・デメリットを計算して,「効果がない」「コスト増になる」と否定的になる。
当然のことながら,正しいシステムを導入するのにコストは必要である。一方,テレワークを導入することによるコストメリットを評価・計算する基準は極めて曖昧であり,「目に見える効果が分からないから導入しない」という判断になりがちである。
「テレワーク」ではなく「テレコンダクト」 - jeyseni's diary 2021/8/26 と書いた。要は,社員にいくらテレワークしろと言っても,部長や社長がリアルに出社していては,テレワークにならないという話である。部長が出ているから,部下の自分が家で仕事をしていていい訳がない,と勝手に忖度して出社してしまう。「まず隗より始めよ」というのは,リーダーに対して言いたいことである。
もう1つ厄介なのが,共通部門,管理部門の人間である。人事情報や経理データ,顧客情報,マイナンバー情報などの個人データを管理するという理由で,社外からリモートで仕事をする,という感覚がほとんどない。現在の共通部門の仕事ぶりを見ていると,確かにパソコンで仕事をしているのだが,専用のソフト(経理,データベース)以外はExcelとWord,そしてメールソフトで仕事をしている。
「自分の仕事は会社の中でなければできない」と頭から思っているので,テレワークなど自分たちには関係ないと思っている。しかし,すでに経理も総務もアウトソーシングできる社会情勢になっている現在,わざわざ出社して共通部門業務を遂行する社員は要らないとまで,企業側は考えなければならない。当然,アウトソーシングする以上,守秘義務契約は厳格に行われるので,むしろテレワークで情報漏えいが起きる可能性のある社員よりは,アウトソーシングした方が安全性を担保できている可能性が高い。
単純に,自宅に個室を指定し,オフィスの端末をリモートアクセスできる仕組みを作れば,自宅にいながら共通部門の業務はできる。会議もオンラインですればいいし,メールも電話も使える。個室がなければ,防音ボックスを準備すればいい。
経理関係の処理は,オンラインで銀行での取引ができれば実現できる。稟議の必要な書類は,電子回覧システムを入れれば実現できる。
何でもやろうと思えばできる時代である。そのシステムを導入するコストと,自分の人件費,交通費の削減効果と,可能な時間帯に業務することによる業務効率の向上効果を算定すれば,ほぼペイするはずである。共通部門の仕事は,ほぼ定形業務だからである。
管理部門とともに,共通部門をテレワークにして,外部から操作できる環境を作り,さらにこれらの部門のITリテラシーの再教育,ないしアウトソーシングでの取り換えを図らなければ,次の時代のグローバル経営はできない。