2022/2/27 佐賀県伊万里市にあるコンビニエンスストアで火災があり,店舗が全焼した。原因は,店舗で揚げ物を作るフライヤーからの出火と報道されている。いわば,「天ぷら油火災」の一種である。
考えてみれば,コンビニはかつては物品販売だけだったものが,弁当やサラダなどの消費期限の短い食品の販売に展開し,1日に何度も商品を運び込むというロジスティクスが生命線となった。さらに,店舗でパンを焼いたり,揚げ物を作ったり,おでんを鍋で提供したりと,屋台の機能まで持ってきている。売れた商品を補充するだけの経営から,どんどん機能を拡張してきた。
今や,カウンターには電気機器が並ぶ。コーヒーマシン,おでん什器,揚げ物を温める機器,カウンターの後ろには電子レンジが並ぶ。売り場の一角には,印鑑証明などの公的書類まで出力できるマルチコピー機,銀行ATM,チケット端末がある。もちろん冷蔵用のオープンケース,冷凍商品のケース,ホットドリンクのケースなど,こちらも多種類の設備が設置されている。
安全のために,火を使う機器は基本的にないが,電気で加熱する機器は多い。今回の火事は,油で揚げ物を作るフライヤーが原因とされている。業務用の機器なので,安全性は何重にも工夫されていたと思われるが,油火災の怖さを改めて思い知った気がする。
コンビニの業務で大変だなと思うのが,レジでの多様な仕事である。公共料金の支払い,宅配便の受付が始まったころにも大変そうだなと思ったのだが,コンサートチケットの販売,宅配便の置き配の受け取り,コンビニ各社のポイントカードに加え,乱立する電子マネーでの決済,そして最新のセルフレジの導入など,次々と新しい業務が加わっていく。単にレジ業務だけでなく,商品の補充,消費期限による割引棚への移動,揚げ物などの調理とともに,店内の清掃,コーヒーマシンなどの清掃も毎日実施する必要がある。フライヤーに至っては,油の寿命管理から保管,油槽の洗浄も大変な作業である。おまけに,これらの電気機器がエラーを起こさないという保証はまったくない。機器本体の故障もあるが,客の不適切な取り扱いによる破損もある。それをサポートする多くの機器メンテナンス業者も,24時間対応が求められることが多く,大変である。
業務の多角化は,事業主にとっての課題の1つだが,通常は多角化に伴って労働力を配分したり,新たに雇い入れたりするのが一般的である。既存の人員で対応することに限界があるからだ。しかし,人件費のことを考えると既存の人員の範囲で業務拡大を進めざるを得ない。しかし,コンビニはフランチャイズの経営者以外はパートやアルバイトの人材で運営されている。業務がきついこともあって,定着率も低い。そこにこれだけの多くの機器の操作や清掃などの教育もしなければならない。
今回の火災をきっかけに,コンビニエンスストアの業務の見直しと選択集中をした方がいいのではないだろうか。たとえば,揚げ物やおでん,焼き鳥などは,店舗の駐車場スペースを貸してキッチンカーでの専門業者に入ってもらうことで分業できるのではないか。全国のどのコンビニでもこれらが買えるということ自体,食品ロスを大量に作っているのではないのか。フランチャイズ経営者が,業務を取捨選択できるような業務形態にしてもいいのではないか。
24時間営業をめぐって,本部とフランチャイジーが揉め事になっているケースもある。どこか,このコンビニ形態に大きな矛盾が生じているのではないかと思える。24時間,弁当が買えるというのは,やはりおかしい気がする。それぞれの店の特徴が出せるようなユニークさを出してもいいのではないだろうか。