jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

久しぶりに聞いた「半導体は産業の米」--かつてのメモリー大国だった日本の凋落ぶり

1980年代,あらゆる電化製品にマイクロコンピュータが搭載された。炊飯器にまで搭載され,火加減のコントロールが細かくできるようになった。電子化が困難と言われたクルマのエンジン制御用にもマイコンが搭載されるようになり,その後は排気ガス規制のために必須の要素となった。

 当時,半導体の生産は欧米が中心。これに日本は半導体モリーの高密度化による大容量化で一大半導体産業拠点となった。日本にとってまさに「半導体は産業の米」と言われた時代である。

 その後,この大容量メモリーの生産は,台湾,韓国,中国からインドなどの人件費の安い地域へと中心が移った。あらゆる機器に半導体が使われる背景には,その低価格化が寄与しており,日本での生産では太刀打ちできなくなった。九州や四国,東北を中心に一時期は日本のシリコンバレー構想が進められたが,ほぼすべてなくなった。高機能のマイクロコンピュータは欧米の設計で主に台湾でTSMCが受託生産しているし,メモリーに至っては東南アジアのどこで生産されているのかもわからない状態である。それでも,建屋から製造装置まで丸ごと作り上げて,生産は自動化なので,品質のバラツキはほとんどない。最後の大量生産品といえるかもしれない。

 コロナ禍で,これらの半導体の生産が通常の1/3ぐらいしかできない状態になっている。従業員が工場に行けない,行っても離れて作業しなければならず効率が悪い,世界中の物流がうまく動いていない,などの理由と合わさって,「半導体不足」が世界中で起きている。

 クルマも新車を作れない状態だが,仕事で必要な人は待つことができない。このために中古車市場が高騰している。筆者の家の近所にある中古車販売店でも,通常はフィールドにほぼ一杯の中古車が並べられており,何となく閑散をしているのだが,現在は半分ぐらいのスペースが空いた状態になっている。おそらくどんどん売れているからだろう。中古車市場もなんと,新車より高値で取引されるような状況になっているそうだ。

 こうした中,熊本県に台湾TSMC半導体工場を誘致する話が決まった。残念ながら日本のメーカーにはもう半導体製造のノウハウがなくなってしまったようである。TSMCから優先的に供給を受けて国内需要に応えようという計画なのだが,生産開始が2024年だという。とても間に合わないような気がする。

 クルマだけでなく,ガス湯沸かし器でも製品不足が進んでいるという報道があった。一般家電でも,家庭用のプリンターの生産が止まっているという。修理を依頼しても半導体チップがなくて受け付けられないケースも出ているらしい。

 冬場に必要な給湯器,夏場のエアコン,テレワーク用のPC,必要悪で持ち歩いているスマホ,そしてゲーム機など,ほぼあらゆるもので半導体が必要になっている今,とにかくまず「壊さないように大事に使う」ことが求められている。壊れたら代わりがない。あっても中古でバカ高いなんてことにもなりかねない。

 結局,日本人はいい意味での「したたかさ(強かさ)」を失ってしまったのではないだろうか。かつて,欧米から技術を盗んででもNo.1になろうとした貪欲さをなくし,安易なカネ儲けの道を突っ走っている。汗まみれ,油まみれ,徹夜残業,どぶ板営業などをしない,ほとんど詐欺まがいの商売か,本当の詐欺によるカネ設け,そして毒にも薬にもならない雑学と,人気アップのためには手段を選ばぬアフィリエイト商法やYoutuberなど,世界に対して恥ずかしい日本の姿ばかりが目立つ。

 クルマ作りも,場当たり的なハイブリッドから,将来の電池資源の枯渇につながるEVシフトなど,誤った方向に向かおうとしている中,トヨタが提案・試作している水素燃焼車が唯一,日本オリジナルな技術として筆者は評価している。

 せっかくTSMC半導体工場が日本にできるのなら,日本人従業員を雇用して勝手にチップを作らせるだけでなく,日本の設計エンジニアによる日本独自のチップをTSMCに作らせて世界に供給する,という「頭」の部分に日本が食い込んで居場所を確保してほしい。そして再び,半導体立国の復興をしてほしいとも思っている。

 たまたまニュースで聞いた民間宇宙ビジネスの話など,「今の地球にまったく必要がない」事業に,頭脳とカネを使ってほしくない。それよりも,COVID-19再感染拡大が起きている世界の中で唯一,低水準をキープしている日本が,早く「なぜキープできているか」を解明して,世界に向けて情報発信することの方がよほど大事ではないのか。