もはや“Global heating(地球過熱化)”状態。--想定外の「紫色」を掲げて地球蘇生を目指せ - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2021/8/10 で「水素燃焼発電を本命とすることを提案」とコメントした。
水素エネルギー社会が,日本では世界に先駆けて動き始めているが,正直言ってアクセルとブレーキを両方踏みながらなので,なかなか進まない。メリットは分かるが,デメリットも多いからである。
ブレーキの要因は,主に技術的な面と社会心理的な面である。
社会心理的に「水素は爆発するから怖い」という一般認識が強い。水素爆発と言えば,福島第一原発の建屋をふっ飛ばしたあの爆発の威力をイメージすると,とても怖くて,という意識があるだろう。理科の実験で,水を電気分解してできた水素に火を点けてみるというのがあるが,現在は全員防護メガネを着用するか,教員が代表して実験,あるいはビデオだけで学習,など,安全側にどんどんシフトしている。
技術的な問題は,水素と接する材料がもろくなる「水素脆化」が起きることである。水素を溜めるタンクやパイプなどがもろくなってヒビ割れし,そこから水素が漏れて爆発につながる危険がある。
水素脆化に対しては2つのアプローチがある。1つはタンクなどの内側を樹脂でコーティングすること,もう1つはそもそも樹脂のタンクを使うことである。いずれもまだ完璧ではない。
そこで提案である。これまでの技術的アプローチは「何十年も使えるようにする」ための材料開発に血眼になっていた。視点を変えて,車検と同じようにたとえば5年ごとにすべての部品をすっかり新しいものに取り替え,古い部材は溶かして脱水素して脆性のない材料に戻し,タンクなどの部品として再生することを繰り返すのである。
これを前提としたシステムの設計を行う。つまり常に二重系あるいは三重系でシステムを構築し,不具合時にはすばやく切り替えて連続稼働できるような設計にするのである。
原子力発電所の安全率は,通常の化学プラントや発電用ボイラーの安全率と同様,4だという。当初はより堅固な設計だとして安全率3に設定されていたようだ。ちなみに航空機の安全率は1.5である。安全率を上げれば上げるほど,たとえば部材の厚さが厚くなり,重くなる。航空機は結構ギリギリの設計だといえる。
原発に対しては,単なる不確定性の低さで安全度を設定するという考え方が違っていたのではないかと思われる。同じ水蒸気漏れでも,そこに放射性物質が乗ってくる可能性も含めた設計が必要だったのではないだろうか。
その点,水素燃焼発電は,一般の化学プラントと同程度の設計で進められる。万一の爆発時も,たとえば化学工場や石油タンクなどの爆発よりも環境影響が少ないことが期待される。おそらく初めてとなるシステムの二重化(タンデム化)と,定期的な部品全交換,そしてリサイクルによって,循環することが期待される。
水素燃焼発電を推す理由は,電力の安定供給が可能な点である。太陽光発電,太陽熱発電,風力発電が天候の影響で不安定であり,火力発電所のバックアップが必要という欠点がある。水素燃焼発電は,通常の石油火力発電と同様,電力供給の不安定性がない。燃料となる水素は,太陽熱発電などを利用して水の電気分解で作って溜めて使える。
設計,メンテナンス,運用の仕組みをきちんと説明すれば,安全な運用は可能である。逆にパイロットプラント段階での不備は,その後の不安を掻き立てるので,慎重かつ迅速に実証プラントを実現してほしい。