jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

鉄工業は、水素燃焼のノウハウを発電に転用せよ--「水素は産業の米」を再演せよ

日本製鉄(NIPPON STEEL)のCM 動画がトレインチャンネルで掛かっている。鉄と水素で、出るのは水だけ、カーポンニュートラルに貢献する、としている。 

   製鉄には、鉄鉱石の酸化鉄を還元(酸素を引き剥がす)工程が必要で、従来は鉄鉱石とコークス(炭素)を混ぜて加熱して燃やし、酸化鉄の酸素とコークスの炭素をCO2(二酸化炭素)として結合させ、鉄を取り出すという方法が一般的だった。当然、大量の二酸化炭素を放出するのだが、かつては無害だった。

   この還元工程にコークスの代わりに水素を使えば、水素と酸素が結合して水になり、鉄が精製される。水素還元法である。確か、高温をキープするためにコークスをゼロにはできなかったと思うが、二酸化炭素の回収の手間は少なくて済むと聞いている。

   筆者が注目するのは、「水素を大量に取り扱っている」という部分のノウハウである。安全に保管し、供給して燃焼させる技術は、鉄王国日本ならではの武器ではないのか。筆者が提案する水素燃焼発電で大いに生かしてもらいたい。

 鉄工業と言えば,歴史上では九州の八幡製鉄所が日本の産業革命の中心を担っていた。高張力鋼板という特殊な鉄板を必要とする自動車産業の伸長と相まって,日本の高度成長期を牽引した。そこに韓国や中国が価格破壊をもたらし,日本の鉄工業は衰退していった。水素還元法はさらにコスト高となるため,価格競争力の面では不利だが,そこにさらに付加価値をつけて再び活性化してほしい。

 ただし,鉄工業へのさらなる投資は困難にも見える。最終的に世界のクルマが量産される土地での現地生産しかないとすると,鉄づくりそのものは難しいかもしれない。

 そこで,高度な水素還元法を支える技術を,水素製造や水素燃焼発電に転用することが生き残りの道でもあり,またさらなる発展の道でもあるように思える。

 かつて,「鉄は産業の米」であった。近代は「半導体は産業の米」となっている。いずれも設備に膨大な投資が必要な産業であり,常に性能向上と低価格化が求められ,日本はその戦いに敗れた。

 プラスチック成形でも,日本は高度な成形技術を誇っていたが,そのための金型生産技術で職人技に頼っていたために中国が導入した最新のNC(数値制御)工作機械群による低コスト生産にまったく付いていくことができなくなった。筆者も,日本企業が職人技を伝承するための取り組みを取材したことがあったが,現時点でそれらの企業はまったく精彩を欠いている。筆者は学生時代に実習で,手作業でネジ加工やフライス加工などをしたが,同時にNC工作機械でのプログラムと加工も体験していた。最後の仕上げは必要だが,短時間に正確に加工を行うNC工作機械に未来を感じていたのだが,まさかお株を他国に奪われる結果になってしまうとは思いも寄らなかった。

 エネルギーとしての水素にも「グレー」「グリーン」「ブルー」とグレードがある。製造過程でCO2をどれだけ排出するかによる。ブルー水素は,再生可能電力を使って電気分解で水を生成するので,CO2をまったく排出しない代わりにコストが高い。すでにイスラエルベンチャー企業が,低コストで電気分解する電極技術を開発して注目されている 安い水素製造技術をイスラエルが開発--すでに企業化と投資集中 - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2022/11/17。ここはタッグを組んで「量産」のプラント建設を早く積極的に進める必要がある。

 ここに,トヨタ自動車社長を退いた豊田章男氏に絡んでもらいたいものである。トヨタが新しい半導体企業を共同出資で始めるとしているが,後追いで追いつけないのではないかと危惧している。水素量産はまだスタートラインについたばかりで,どの国,どの企業が飛び出すかによって勝敗が決まるように思う。思い切った投資と,高い技術力による安全性サポートを謳い文句に,再び世界に向けて発信できるチャンス到来と見ている。

 「水素は産業の米」になりうる。いや,しなければならない。同時に,「農水産業の工業化(工場生産)」も大きなテーマである。正直,岸田首相が掲げる「少子化対策」も「防衛強化」も,あまりにも目先の小さな政策にしか見えない。財源がないことに加え,海外の軍事企業を潤すだけで,国の借金が膨らむばかりだからである。まず,原資を作るための輸出できる産業の復興に集中投資すべきだと考える。豊田章男氏がトヨタ自動車会長に--次は日本再生に乗り出してほしい - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2023/1/28。水素産業への投資は,水素エンジン,燃料電池を開発してきたトヨタ自動車にとってもプラスに働くはずである。