jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

zoteroという文献管理システムを使ってみた--今の研究者は楽になったのかも

研究者にとって,論文執筆時に文献の掲載は必須の仕事になる。世界中に星の数ほどもある論文から,自分の論文に必要な論文を文献として入手し,管理するのは大変な仕事だと思っている。

 何しろ筆者が卒論で引用した論文はわずか10本。それも自分の実験の手順をまとめたような論文が中心で,理論的な論文は半分ぐらいだった。当然,文献引用の書式に従って手書きで記述し,卒論の最後に加えた形である(当時,ワープロはまだなかった)。

 現在,仕事の関係で論文を参照する機会も多いが,数十本,ときには100本を超える文献を掲載した論文に出会うことがある。文献だけで数ページを占めてしまう。これを,引用個所の記述とともに間違いなく作成するだけで,数時間かかるのではないか,と思い,論文研究者にならなくてよかったと思うのである。

 一方,Microsoft Wordの中には,以前から目次作成,索引作成,文献作成の機能が盛り込まれている。論文を書く人には便利な機能なのだと思うのだが,筆者には宝の持ち腐れで,Wordに出会ってから30年も経過するが使ったことはなかった。

 冬休みの課題として,この文献管理システムを少し研究してやろうと,昨年末から取り組んだ。文献管理システムも10ほどのシステムがあり,それぞれ無料/有料,文献の登録の方法,文献一覧の出力の方法などが異なっている。まず,比較的有名と言われたEndNoteを触ってみることから始めた。無料で使えるという点も選択理由である。

 文献管理システムは,論文を掲載しているジャーナルのHPから情報をダウンロードし,システムの中に格納し,それをまたジャーナルに合わせた出力形式で出力できる仕組みである。筆者は,出力形式の中からNature誌の形式で出力する方法を目指したのだが,Wordの中にEndNoteからNature形式で出力する方法が提供されていなかった。

 以前は,このWordの内蔵システムしか知らなかったのでここで終わっていたのだが,今回は複数の選択肢を試して可能性を探ってみた。

 次に,同じく無料で使えるMendeleyというシステムを試してみた。MendeleyにはNature形式の出力が標準で付いており,これは使える,と思ったのだが,論文を登録してもページ情報が出てこないことに気づいた。ところが,ジャーナルからPDFをダウンロードし,これをシステムに読み込んで登録すると,ページ情報も登録できることが分かった。しかし,筆者の仕事ではいちいち論文をダウンロードして管理する必要がなく,また有償論文も多いため,このシステムは断念した。

 AI機能を売り物にするシステムとしてPaperpileというシステムがあり,これは強力そうなのだが,最初から有償システムなため,まだ試すには至っていない。

 そこでちょっと名前がおどろおどろしいzoteroというシステムを使ってみた。無償で100MBまで使えるという。またデフォルトではNature形式がないものの,その他1万以上ものジャーナルに合わせたStyleテンプレートが提供されていた。ここからNatureを選び,追加登録するだけだった。また,PDFをダウンロードしなくても,ジャーナルのページから情報を登録することができ,ページもdoiも必要な情報はすべて登録できた。ジャーナルのページへのアクセスは,google scholarから検索している。

 Nature形式は,ジャーナル名をイタリック,巻号をボールドにするなど,書式設定が面倒なのだが,zoteroからの出力はこの形式に従っている。チェックする必要もない。

 ただ,標準のNature形式の出力Styleだとdoi情報がうまく出力されなかった。Styleを見てみると,doi情報も書き出せるようになっているように見えたのだが,実際はうまく行かない。そこで,Styleを分析し,所定の位置にdoi情報を書き出せるようにアレンジしてみた。これには10回ぐらいの試行錯誤が必要だったが,ようやく納得のいく形式への出力ができた。

 すべての論文やWebサイトリンク,書籍情報で機能するかどうかは不明だが,通常の業務には使えそうである。たまたま知り合いの若い研究者に聞いたところ,そこでもzoteroを愛用していると聞いて,最近の若い研究者は論文作成にこういう文献管理システムを使っているのだろうと思った。正直,文献ページの出力だけでも手打ちではないのだろうと思った。相当楽になったのではないだろうか。その分,研究本体に時間をかけて,いい論文をどんどん出してもらいたいものである。ということで,今のところ筆者はzotero押し(推し)である。