jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

ChatGPTでついにテキスト作成分野にもAIが進出--ChatGPTブログもできるのだろうか

OpenAIが2022年に発表した対話型AI「ChatGPT」,これに対してGoogleは「Bard」というAIチャットボットを投入した。Microsoft検索エンジン「Bing」にAI機能を盛り込んだ。

 筆者が勤務する出版社の部長も,「ChatGPTはすごい」と語っていた。彼のPCの周りで部員も関心を持って会話に参加している。筆者は「正解が1つ」であるクイズ王みたいな仕組みにはあまり興味がないので,このChatGPTについては知ってはいたものの,試したことはない。ノイズの中から自分に合った正解を自分の判断で見つけるのが,自分の仕事だと思っているからである。

 そんなことを思っていたら,今朝ほどこのChatGPTについてのネットコメントを見つけた。なぜ人々は、ChatGPTという“トリック"に振り回されるのか? Google「Bard」参戦、チャットAI戦争の行方。清水 亮さんというITMEDIA NEWS のコメントである。長年,チャットボットを見てこられた方のコメントなので,ぜひ参考にしていただきたいと思う。

 このコメントの中で,AlexaとSiriがいい感じのAIチャットだと言っているのが目についた。『Alexaは今のところ「いい感じに低機能」である』とコメントしているのである。筆者もこの正月に同じようにコメントしている。2023年元日に思う--ちょっと抜けたAlexaぐらいがちょうどいい感じ - jeyseni's diary 2023/1/1。実際,「Alexa,ただいま」と語りかけたところ,単に「おかえりなさい」と答えるだけでなく,おかえりコーラスを歌ってくれたり,そのあとに「もっとお話したいです」とかいろいろ聞いてきてくれる。おそらく,音声インタフェースになっていることと,発声が実に自然なことが,違和感を最低限にしているからだと思われる。この辺りについても,清水氏のコメントを見ていただけると納得がいくと思う。

 筆者も,MS-DOSパソコンの時代に「人工無能くるみちゃん」というフリーソフトをインストールしていた。PCの画面上にキャラクターがちょこちょこと現れ,テキストで話しかけると答えを返してくれるというソフトである。現在のAIチャットボットも,基本的に聞いたキーワードに関連する話題を絞り込んで返してくるという意味では,まだ「知能」というわけではないのだが,何しろ背景となっている情報量の多さと,そこから絞り込んで瞬時に返事をするあたりは,見事なのかもしれない。

 しかし,かつてgoogle検索がシステム側の意図した検索結果に誘導したりすることが明らかになるなど,AIだろうがシステムだろうが,答えを出してくる方法が公平で正しいという保証はどこにもない。だれも責任を取らないのに,その答えを信じて被害に遭わないという保証はまったくない。

 検索の対象が,プルーフリードされた学術論文に限る場合なら情報の確度は上がるが,今筆者が書いているような一般的なコメントまで参照している可能性を否定できず,そこにフェイクニュースが多数発信されている現在,1つの答えで返してくる現在のチャットボットはかえって危険だというのが,筆者の認識である。

 まあ,出版社に関わっていることで,監修者,執筆者を精査し,情報の中身も精査した上でコストを掛けて本を作っている,ということで,情報の確度という信頼性を加えているのが「本」「書籍」というリアルメディアの強みだと筆者は考えるのである。

 現代人,特に若い人がテレビも見ず,新聞も読まず,そして本も読まないという状況になっており,インターネットの個人の発する情報に左右されていることは,非常に危険だと感じる。

 もちろん,マスメディアも私企業であり,営利目的であり,広告主の意向に左右されていない保証はまったくなく,実際,何らかの思想に偏っているテレビや新聞がないわけではない。広告主の意向に沿うように作られている部分もあり,広告収入に頼っているほとんどの雑誌も,情報がすべて正しいわけではない。また書籍も,特に1人の執筆者による単著書籍の場合,すべて正しい情報を伝えているわけではない。政治,経済はおろか,法律や医学,歴史に至っても,正しい情報であるかどうかは疑って見るべきだろう。宗教に至っては,信者にとっては正しい情報かもしれないが,一般常識に照らし合わせれば怪しいことも多い可能性が高い。

 その中で,筆者が挑戦しているのは,インターネット上のポータルサイトのリンク集を書籍の形で提供する試みである。しかも,情報に重みの差を設けず,網羅することを目的として編集している。

 一般に,Webサイトの片隅に「リンク集」なるページが設けられ,そこには一般的に10数個,あるいは多くても数十個のリンクがテキストで羅列されていることが多い。多くの人にとって,このリンク集をクリックして関連サイトを見ることはない。というのも,このリンク集は「意図して集めたリンクではない」からである。

 筆者は,あるテーマに関係するリンクを200以上集め,それを分類したリンク集を書籍の形で提供している。読み物でもなく,資料として図書館に置いてもらうことを狙っている。Webサイトのリンク集では,ワンクリックで目的のサイトにジャンプできるホットリンクの機能があるが,書籍では難しいため,それぞれのURLにジャンプできるように二次元コードQRコード)をすべて印刷した。

 これまでもQRコードをポスターやちらしに印刷したことはあったが,それは情報としてのおまけみたいなものだった。しかし,この書籍ではQRコードが実は主役なのだが,これを理解して活用してもらえるのは時間がかかりそうである。「QRコード」は株式会社デンソーウェーブの登録商標で,おそらくこれほど積極的に利用した書籍は例がないと思われるのだが,残念ながら情報拡散はしてもらっていない。

 google検索が出てきたときは,正直言って便利だと思った。それまで複数の新聞情報からトピックスを入手していたため,朝の新聞読みは欠かせなかった。1件の取材から芋づる式に信頼ある多くの情報源にたどり着くことで,情報収集ができたが,時間も手間もかかった。google検索によって机に居ながらに情報を集めることができるようになった。しかも,過去に遡ってリストアップされる。その中から必要な情報を確認する作業は大変だが,そこに人間の知性と感性が関わっていると感じた。

 ChatGPTは,おそらく1つの答えを勝手に出してしまうだろう。それがいかにも正しいように見せるテクニックも盛り込まれているだろう。正直,多くの人がこの「AIが出した答え」が正しいと思い込んでしまうことが恐ろしい。

 現時点でも,情報検索を掛けて最初に引っかかってくるのがWikipediaである。おそらく,Wikiの情報はほぼ正しい。タレントの出演番組の履歴からプロフィールに至るまで調べ上げているのは,ファンでありオタクであり,そこに何らかの一貫性が見られる。それでも筆者は,Wikiの情報を信じることは基本的にない。またWikiを参考文献にすることは絶対にしない。

 筆者はボットではない。しかしそのうちChatGPTが自らテーマをピックアップし,それに対してブログを発信し始めるのではないだろうか。ちょうど,新聞の1面下にある天声人語のような感じで,もっともらしいブログを発信し始めるような気がする。そうなったら,ニワトリが先かタマゴが先か,という感じになってしまうのではないか。チャットボット同士が会話するようなシナリオもできるような気がする。

 実際,音楽分野ではボットが当たり前になってきている。初音ミクというボーカロイドも,いまやメジャーである。1人の人格として勝手にブログを始めてもおかしくないだろう。

 そろそろぜひ,リアルな書籍に再度注目し,信頼ある情報に対して対価を払っていただく世界が復活してほしい。フィクション作家やカリスマ専門家の単著のみが売れるのは,異常だと思うのである。