jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

新型コロナウイルス感染者の全員把握方針を転換--各地のIT技術に期待

政府が,新型コロナウイルス感染確認者の全員把握の方針を転換することになった。感染確認者数の報告は必要だが,各人の個人情報から症状などについてのHER-SYSへの全員入力は求めない,という方針になった。

 HER-SYSにしても,cocoaアプリにしても,どうして国主導のシステムは不都合が多いのだろうか。設計者の才能を疑ってしまう。まるでかつての大型コンピュータシステムのように融通が利かない。ほかにも,マイナンバーカードの仕組みも年金ネットワークのシステムも,使いにくいことこの上ない。

 「HER-SYS入力必須」という状況がなくなったことで,業務の8~9割がなくなるという。80%になるのではなく,20%つまり1/5になるという。いかに負荷がかかっていたかを物語っている。

 筆者は実は,感染者も含めて全員の動向を日々追跡できる仕組みは必要と考えている。2年前の新型コロナ感染拡大時に,感染者の行動把握が感染拡大防止につながることは明らかだったからである。しかしオミクロン変異株に変わった2022年1月の第6波以降,感染力がデルタ株の5倍になり,さらに第7波のBA.5では1.3倍になった。インフルエンザ並みの感染力になり,誰でも感染する可能性が出ている。それでも,インフルエンザと違って特効薬のない状態では,誰がいつどのように感染し,今,どういう状態でどこにいるのか,をきちんとフォローしなければ,いつ病状が急変しても対応できなくなる危険があると思っているのである。

 筆者は以前,自治体は,ICチップ,写真なしの「マイナンバーカードmini(仮称)」をただちに配布することを提案--新型コロナをいい機会に全手続きにマイナンバーを活用 - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2022/8/5 に提案していた。マイナンバーだけで個人情報は管理できる。入力の半分は軽減されるはずと考えた。

 また,HER-SYSの入力項目として「熱の有無」「倦怠感の有無」などを入れる項目もあると聞いて,「これはマークシートで入力すればいいのではないか」とも思った。最初の問診のときに,マイナンバーと体温は手書き,症状の有無などは塗りつぶしで用紙に記入すれば,あとは業務の合間にまとめて読み込ませればあっと言う間に入力が完了するのではないかと考えた。さらに,マークシート情報をQRコード化し,これを読み取らせるという方法もあり得ると思った。

 とにかく,HER-SYSのインタフェースの拡張性が全くないことが,業務崩壊の最大の元凶である。開発者出てこい,と言いたいぐらいである。

 今回の措置で,HER-SYSへの入力は,重症者や基礎疾患のある人,65歳以上の人,といった限定をそれぞれの自治体が考えて,業務の削減を図れるとしている。しかし,逆に登録されずに放置される患者が8割となり,これらの患者が自宅療養中に病状が急変したりした際の取り扱いが懸念される。またゼロから登録を始めるのだろうか。

 報道では,一部の保健所が住民全体の個人情報を引き出して別システムで運用し,使い慣れたパソコン上で集計や並べ替えの処理をして柔軟に運用する仕組みを自治体独自で開発したとしている。全員の病状などを点数化して,重要度の高い順にフォローの割合を割くなどの柔軟な運用ができるとしている。HER-SYSが「とにかく全員の情報を報告せよ」と命令するだけで医療機関や保健所,自治体自身にとって何の利用価値もないのに比べて,圧倒的に有効である。本来は,さまざまな運用の仕組みまで想定して開発を継続すべきところ,トップダウン,お役所仕事,と言われても仕方がないだろう。

 筆者としては単純に,データ入力はクリニックの電子カルテとして問診時に医者が入力するだけで,あとはCSV形式で出力したものをHER-SYSが読み込めば簡単なのに,と思っていた。その入力インタフェースすら用意されていないとは,運用を知らないIT開発者だったと思える。

 少なくとも,発熱外来の指定クリニックに住民の個人一覧データが開示されていれば,マイナンバーだけで運用が可能であり,その情報を電子カルテと連動させれば,HER-SYS用のデータなど簡単に出力できると考えていた。いわゆるリレーショナルデータベースの仕組みを使えば実に簡単に個人データと電子カルテが融合するからである。

 結局,国はマイナンバー情報の管理をすべて国の仕組みだけで管理しようとしており,自治体との連携,医療機関との連携をさせてこなかったのが原因である。自治体は,マイナンバーの発行とマイナンバーカードの登録業務だけで,その情報を使った運用ができないようにされているのではないだろうか。

 ちなみに筆者も,ファイルメーカーを使ってのマイナンバー連携の実験はしている(もちろん,実際のマイナンバーデータは入手できないので,仮想の12桁の数字を使っているだけである。マイナンバーカードの読み取りは,マイナンバーカード対応のカードリーダーに差し込むか,マイナンバーカードに印刷されているQRコードを読み取るだけでできる。あとは,データベースと照合して個人名を確認できれば,住所などの個人情報は自治体が管理しているから簡単である。

 タブレットを使えばタッチ操作で症状の入力もできるが,HER-SYSのインタフェースとして使うことはできない。まったく役に立たないシステムソフトである。ほとんどバージョンアップされていないのではないか。

 さすがに医療機関や保健所でデータ流出などの不手際は発生しないと思われる。政府や役人は,もう少し地方の公務員や生命を預かっている医療関係者を信頼すべきだろう。むしろ,このようなブサイクなシステムを開発したシステムハウスとの間に,癒着があるのではないか,また正式なコンプライアンス契約を結んでいるのか,といったところまで疑わしく思えてくる。

 筆者は,Excelは嫌いである。多くのデータに対して同じような計算をさせるのに,すべての行に同じ計算式をコピーしなければならなかったり,その計算式結果が表示されていると思ったらただの数字が入っていたりする。最大の問題は,列ごと数字が上下にズレてしまってデータの信頼性が一気になくなることである。ファイルメーカーとの出会いは衝撃的で,以来30年以上の付き合いになるのである。

 各地のITプログラマーがどのようなカスタマイズを盛り込むか,楽しみにしたい。