jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

「身分証明書」が出せない日本--迷走するマイナンバーカードがついにカードでなくなる日

アメリカには,グリーンカードという身分証明書がある。このカードがなければ,家を買うことも就職することも学校に行くこともできない。顔写真入り,指紋入りで,大人から子供まで所持している。

 日本で写真入りで身分を証明できるモノは,運転免許証だけだった。しかし,運転免許を取得した人しか持っていない。海外に行く人は顔写真入りのパスポートを取得しなければならないが,海外に行ったことがない人もまだまだ多い。

 一方で,日本国民全員が持っているのが健康保険証である。しかし,保険証には顔写真が入っていない。身分証明書にはならないし,不正利用も多々行われてきた。

 国民総背番号制は1970年に提案されたが,個人情報を国が管理するとして成立しなかった。1967年には住民基本台帳法で個人を特定できる「住基カード」も発行され,1999年の改正でネットワーク化が図られた。しかし,この住基カードも個人は特定できるものの,顔や指紋などの個人識別情報とはリンクしていない。

 マイナンバーカードは,この住基カードの発展型として,グリーンカードのように個人の特定と個人識別情報とリンクし,さらにROM型のICカードによって改ざんもできない。コンセプトとしては世界で最も素晴らしいシステムに出来上がったと思った。

 しかし,その発行プロセスがいかにも官僚的で,最初は印画紙に焼いた(あるいは紙にプリントした)写真を提出し,これをカードに印刷し,発行の際は自治体の窓口に出頭し,係員が顔と写真を目で見比べてて本人確認し,それからパスワードの入力を目の前でする,というプロセスで発行された。そのうち,顔写真は画像データを送信する方式に変わったが,発行プロセスは変わらなかった。代理人による取得はできなかったし,もちろん土日祝日は手続きができなかった。

 マイナンバーカードに印刷された顔写真は不鮮明である。大きさはパスポートの写真の1/4と小さい。カードの表面に印刷されているので,数年経過すると擦り切れてしまうだろう。パスポートは顔写真が冊子の内側にあり,しかも改ざんできないように透かし入りの透明シートを被せている。それでも組織的な偽造は行われる。

 個人が特定できるマイナンバーカードができ,不正使用が頻発する健康保険証の代わりに信頼できるマイナンバーカードが使えるなら,筆者は望ましいと思っている。実際,筆者はすでに医療機関ではマイナンバーカードを健康保険証として使っている。個人認証は暗証番号を入力している。顔認証でもできるはずだが,機械によっては認証できない可能性を否定できないので,暗証番号方式を使っている。

 そのマイナンバーカードが,2026年にデザイン変更されるという。2026年導入予定の「新マイナンバーカード」は何が変わるの? デザイン刷新、スペック強化、名称も変更! (週プレNEWS) - Yahoo!ニュース 。とにかく,デザインについては筆者は最初から否定している(デザインが最悪なマイナンバーカード--持っているが、使っていて誇りに思うことがない - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2022/10/14)。

 なるほどね,と思っていた途端,今度はスマートフォンマイナンバーアプリを入れることになったという。アプリが使えるようになるのは,2025年春。とりあえず2025年4月としておこう。しかし,現行の健康保険証を“廃止”して使えなくなるのが,2024年12月末。すると2025年1月~3月の3ヶ月間,マイナンバーカードに健康保険証機能をリンクしていなければ,保健医療を受けられなくなることになる。

 SUICAPASMOなどの交通系ICカードスマホアプリとしてスマホに切り替える人が増えている。そもそも現在,交通系ICカードを発行しようとしても,半導体が不足しているために発行できない状況にある。スマホのアプリを使うしかない。

 しかし,交通系ICカードは,お金を決済するだけなので,他人のカード情報を盗んで不正利用する事故は起きる可能性はあるが,せいぜい金銭的な被害だけで済む。

 一方,マイナンバーカード情報をスマホアプリで使えるようになると,個人情報の管理が疎かになる。しかも,スマホユーザーの2/3はiPhoneであり,アメリカのシステムである。残りはAndroidだが,中国,台湾,韓国などのメーカーがほとんどである。特に高性能なAndroidスマホは,中国や韓国が供給している。いずれにしても,個人情報が海外に流れないという保証はまったくない。

 さらに,スマホアプリという形のないものが個人を証明するということは,まったく理解できない。すべてのデジタルデータは,改ざんできるからである。

 生成AIが登場し,有名人や国家の指導者のフェイク動画,フェイク音声が当たり前のように出てきている。いずれ,アバターがキャラクターを持ち,人格を持ち,そして偽造したマイナンバーアプリを使って,実在しない人格として存在するようになる日が来る。いや,おそらくすでに,こうした悪事を構築しつつある悪いやつがいるに違いない。

 筆者は,たとえ手続きが面倒でも,物理的なカードを捨てる気はない。まして,身分証明書としてのマイナンバーカードは,大事にしたいと思う。最悪と指摘したデザインが2026年に変わるとして,正式ではないが予想された富士山を入れたデザインは,まあそれほど悪くはないと思っている。ここでまた,カード派とスマホアプリ派に分かれると,個人認証がおかしくなってしまうと思うのである。

 すると,子供のスマホ所持を推奨することになり,逆に高齢者にはスマホ所持とスマホ活用を義務づけることになる。筆者も正直言えば,スマホは使いたくない。いちいち電源を入れる,アプリを選ぶ,アプリを起動してパスワードを入れる,そこまでで1分はかかってしまう。カードなら,財布から取り出すのに10秒もかからない。おまけにスマホのバッテリーが切れていたら使えない。2年か3年経ったら,バッテリーが寿命となり,またOSの機能が上がったりするので,機種変更が必要になる。その都度,おそらくマイナンバー情報を高いセキュリティー環境で移せるのか,古いスマホに情報が残らないのか,など,心配事が多い。アプリを作るのが民間だったら,情報漏えい,情報の勝手使用の危険性は大きい。日本企業でも同様にリスクが高いが,海外企業の場合はさらに複雑になる。

 ということで,筆者はマイナンバーカードのスマホアプリ化には反対である。とにかく,つなぎでも保険証として使えるカードを,現在のカード不保持者に配布し,一斉に取引方法を変更する。イレギュラーな事態が起きる可能性は,1/1000以下だろうと判断している。

 とりあえず,現時点のマイナンバーカード未登録者には顔写真なしでカードを発行させる必要がある。これで2024年12月末で健康保険証・カードを全返却する。そのまま,2025年春のスマホアプリ化は白紙化し,2026年の新デザインカードまで,とにかく現在のマイナンバーカードを維持し,だれでも使いやすい仕組みであることを理解いただく方が早いし,現実的だと思う。

 ただし,世界的な半導体不足に伴うICカード発行ができない今の状況なので,そもそも新デザインカードが発行できるのかどうかも心配である。HITACHI : ニュースリリース : アンテナ内蔵型「ミューチップ」を開発 (2003/9/2)といった超小型ICチップ技術を日本は持っていたのではなかったのだろうか。

 新型コロナウイルスが拡大していたころ,海外ではワクチン接種証明をスマホQRコードを表示させ,これを読み取ることで電子化を実現してきた。一方で日本は,接種時の紙の証明書を所持する必要があったし,その認識は人間の目でしかなかった。

 とにかく,日本におけるデジタル化の手法がお粗末すぎる。せっかくの日本の発明であるFericaをスマホ連携で本気で活用できるのか,その際の情報漏えいが防げるのか,やるんだったら今度こそ本気でアプリ開発・検証をしてほしいものである。情報漏洩,偽装がない仕組みを作ってほしい。