マイナンバーカードをめぐるトラブルが次々と出ている。紐づけ作業が人力で行われているということを聞いて、「手抜き」であり「無チェック」だったということだろう。
マイナンバーカードについては、そのデザイン性、登録の不便さ、使い勝手の悪さなど、さまざまな不満が確かにある。しかしその根本的な間違いは、「カード」が先にありき、になっているからである。
そもそも、マイナンバー制度の根幹は、国民1人1人に割り当てた「マイナンバーという数字」である。この数字で個人を特定できるからである。
ならば、運転免許証でも健康保険カードでも、「マイナンバー」を書き込むだけで済む話である。仮に健康保険証に書き込まれたマイナンバーが間違っていても、保険診療は受けられる。何の問題もない。運転免許証にはさらに写真も入っており、個人の特定もしやすい。
韓国がマイナンバー先進国としてよく紹介されているし,デンマークのようにカードという物理的なものを発行しないと決めた国もある(デジタル先進国からマイナカードに疑問符 韓国では「国民の40%がカード紛失」 | デイリー新潮 (dailyshincho.jp))。カードという物理的なモノを所持していること自体が,カードの紛失や盗難といったセキュリティ上の問題になっているという。各国では,登録に当たって指紋押印,顔認証など,より厳密なチェックをしている。カードを紛失しても,問題ないような仕組みになっており,カード発行そのものを絶対条件にしている日本とは考え方がまったく違うように見える。
紐づけとは、複数のシステムをきちんと対照させることであり、1つに集約することではない。日本ローカルならともかく、パスポートと紐づけされてもパスポートを廃止することはできない。健康保険証も同じように考えればいいのだが、「一度決めたことはテコでも変えない」という政治家、官僚の悪いところが出てしまった。
既存の健康保険証や運転免許証やパスポートに「マイナンバー」を入れ、新規登録や更新の時に確実にチェックすれば、仮に手動で作業しても間違いはほとんど起こらないはずである。それは、普段の健保組合や警察、出入国管理事務所の業務だからである。間違いや不正使用の多い健康保険証にしても、次の更新から顔写真入りにすれば済む話である。
何でもかんでも「マイナンバーカード」という物理的なモノに集中させようとし、しかも一気に進めようとして、ポイント付与などという姑息なニンジンを吊るし、締め切りを設けて追い立て、果ては締め切り日に集中した申し込みをさばくのに「手抜き」「無チェック」だったことが悲劇を招いた。
解決法はただ1つである。健康保険証は廃止しない、その代わりに健康保険証にマイナンバーを入れ、さらに写真も入れるようにして、従来の仕組みを続けつつ、「マイナンバーカード健康保険証」では、業務の合理化をした医療機関と利用者により多く還元する仕組みを作ればいいのである。
電車でも、SUICAやPASMOのなどのIC カードと紙の切符の二重料金制になっており、少しでも割引になることからICカード化が進んだ。同じように健康保険証も二重価格にすれば、「マイナンバーカード健康保険証」に切り替わるはずである。
なお、マイナンバーカードが使いにくい1つの理由は、手続きごとにスマホやパソコンのカードリーダーでカードの認証をイチイチ行わなければならないことである。銀行カードでもクレジットカードでもID とパスワードで個人認証される。マイナンバーカードにおいても、ID とパスワードだけで認証するだけでいいはずである。その意味でスマホのマイナンバーカードアプリが有用なのだが、ここでもカードのタッチ認証が必要なのは、使いにくい最たるものであることを政治家は認識できていない。
正直言って,「どうせすべて秘書任せ」だろうし,「保険診療などミミッちい医療は自分には関係ない」と思っているのではないか。ひょっとしてマイナンバーカード不所持者もいるのではないか。政治家にとって,「マイナンバーカードは個人情報(すべての財産情報まで)が紐づけられるので,政治資金調達には厄介な制度」と思われているのではないか。
もう一度,原点に戻り,「マイナンバー(個人番号)」を配布した通知票のQRコードを使って,スマホアプリで自分の「スマホ判マイナンバーカードアプリ」に登録し,利用するときはさらに暗号化したQRコードの表示の読み取りか,個人番号を表示して相手に目で読み取らせて照合する,というスマホアプリにしてはどうだろうか。もちろん,スマホを持たない人は,最初の「マイナンバー」の通知票のコピーの提示でも十分である。
「カードありき」「集約ありき」こそ,古い形のデジタル化であり,今の時代にはそぐわないように思える。