jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

「リスク」とは方便な言葉--中止の判断は陽性者数?日本選手への感染?

WHOのテドロス事務総長が東京オリンピック2020に合わせて来日,IOC総会で「感染例をゼロにするかどうかが、今後2週間の成功の基準ではない。リスクなしはあり得ない」と述べたという。「全ての感染を検知し、(感染経路を)追跡し、治療し、さらなる感染拡大を防ぐことが成功だ」と訴えたという(共同通信から引用)。

 すべての物事にはリスクがある。クルマを運転していても,飛行機に乗っていても,そしてただ歩道を歩いていても,いつどこで何が襲ってくるかわからない。

 どんなに予防策を取っても,防ぎきれないことはある。筆者はとにかく危険に巻き込まれないように細心の注意を払っているが,風邪も引けばケガもする。しかし,他人と関わることで身の危険に及ぶことからはできるだけ遠ざかろうとする。クルマが近づいてきたら,必ずクルマの方を見て,自分に突っ込んで来ないことを確認するまでは注意を怠らない。

 すべてのものに「絶対に安全安心」ということはない。これを裏返すと「リスクがある」ということになる。「リスクなしはありえない」とは「絶対に安全安心なことはありえない」ということである。「安全安心な大会運営を目指す」というのは,安全安心を目標とする,ということであり,「安全安心であるとは言えない」と言っていることと同じである。

 リスクが極めて低い事例として,空港の税関での危険物持ち込みがある。航空機に武器や爆弾を持ち込むことは極めて困難だが,しかし「絶対に持ち込めない」ということはない。完全に1人1人ある程度時間をかけてチェックしても,スルーされることはある。「絶対安全」ということはありえない。「この人だから絶対安全」ということもない。すべての人が疑いの目で見られている。

 オリンピック関係者ということで,選手もスタッフも,さらにメディア関係者も,基本的に厳格なルールが定められている。しかし,逆に選手に対しては「精神的な負担をかけさせたくない」という気持ちも湧かないわけではない。15分ルールなどという「穴」をわざわざ作ってガス抜きをしたつもりだろうが,それではルールの意味がない。「パンを床に落としても3秒以内なら大丈夫」という都市伝説のような3秒ルールも,まったく根拠がないのと同じである。

 COVID-19がなくても,オリンピック期間中の選手に対するリスクは必ずある。しかし,選手にもスタッフもメディア関係者も,基本的な人格に問題はなく,犯罪が起きることはない。COVID-19は,意図しなくても感染罹患および感染拡大のリスクをお互いに持っている。「自分はワクチン接種も受けているし,PCR検査も受けている。だから感染もしていないし,感染を拡大させることもない」と言えればいいのだが,ワクチン接種を受けていても定期的なPCR検査を受けていても,知らない間に感染し,それを日本国内に持ち込んで感染拡大させるリスクは持っている。一般の人であっても,オリンピック選手であっても,そのリスクの大きさは同じである。むしろ,選手仲間やコーチとの接触がある分,一般人よりも感染罹患リスクは高い。

 一般人でも,デルタ株変異ウイルスがまん延している国からの入国では,3日間の指定ホテル拘束とこれに引き続く11日間の自主隔離が必要である。隔離中,毎日連絡を取ることと,無作為にGPSでの位置検出が行われ,ルール破りはできない。

 しかし,オリンピック関係者,特に選手は,その後の競技で100%のパフォーマンスをしてもらいたいために,「お目溢し」があるのではないか。その分,自分自身が感染源となり,スプレッダー(感染拡散者)となるリスクを持っている,ということを自覚してほしいのだが,「選ばれた人」という意識があるために,考え方にも甘さが出てくるのではないか。

 選手もスプレッダー,メディア関係者もスプレッダー,そこに出入りするボランティアやデリバリースタッフはワクチン接種もしていないさらにリスキーなスプレッダー。本来なら,この人たちの行き来を厳密に制限して,バブルを維持することが「より安心安全な運営」につながるはずなのだが,その行動制限をする仕組みがまったく存在しないのが,今回の東京オリンピック2020である。

 あとはそのリスクの中で,どれだけ確率的に感染拡大を下げられるか,というまさにロシアンルーレット的な賭けである。「大会期間中の中止もあり得る」という中止の判断は,何を持って行われるのだろうか。すでに7/21現在でオリンピック関係者から78人の陽性者が見つかっている。その濃厚接触者は数倍になるだろう。中止の判断は,トータルの人数なのか,日本人選手の感染確認なのか,何も発表されていない。結局,2週間を黙ってやり過ごして閉会式になだれ込もうという作戦なのではないか。

 通常オリンピックのリスクに加えてCOVID-19のリスクを抑えきっていない段階で,やはり開催するのだろうか。選手の皆さんは,ケガのリスクに加えてCOVID-19感染のリスクも負わなければならないのだろうか。