2021年に,1年遅れで開催された東京オリンピック・パラリンピック2020におけるCOVID-19について総括してみる。
東京オリンピック2020。期間は,2021/7/23~2021/8/8の17日。参加国数206,選手数11,092人。ボランティアは,のべ51,672人だった。
東京パラリンピック2020。期間は,2021/8/24~2021/9/5の13日。参加国数161,選手数4,403人。ボランティアは,のべ24,514人だった。
COVID-19関連の数字を見てみよう。
期間中の,選手・関係者の感染確認者数は,東京オリンピック2020で547人(のべPCR検査は約60万回),パラリンピックで316人(のべ検査数は99万3268回)。期間中に来日した選手・関係者は,空港検疫通過数で54,214人で,そのうち空港でのPCR検査での感染確認者は数は54人だった。
陽性率として発表されているのは,これらの数字を使って,東京オリンピックが0.1%,パラリンピックが0.03%,空港検疫が0.1%となっていた。
しかし,陽性率の計算の母数が異なっているのが気になる。通常の市内では,PCR検査数と検体数はほぼイコールである。つまり,1000人を検査して10人が陽性と確認されれば,陽性率は1%である。空港検疫での0.1%の場合の母数は,入国した人の数とほぼイコールと言える。しかし,開催期間中の陽性率の母数は検体数であり,1選手が期間中,10回は検査を受けている。単純に選手数で割ると,オリンピックの場合は4.9%,パラリンピックの場合は7.2%という割合になる。10万人当たりでいうと,4,931人と7,177人という高い数字になる。東京でも1週間の感染確認者数は,10万人当たり100人未満(93人),日本全体で70人。オリパラの開催期間をそれぞれ2週間とすると,この2倍の数字なので,それでも186人と140人。桁が違う。
やはり,オリパラ期間中の選手・関係者のCOVID-19感染率は,日本の市中感染よりも高かったといえるのではないだろうか。選手同士,選手と関係者の距離は,市中感染よりも明らかに近い。マスクなしで競技する時間も長かった。心肺も300%使って競技をしている。感染拡大リスクも大きい。
正直,バブル方式が基本的に採用され,さらに無観客で試合が行われたことにより,日本国民との接触は限定的だった。しかし,ボランティアやデリバリーなどが選手村や会場に入る際はPCR検査を都度行っていたわけでもなく,そのルートでの感染がゼロではなかったのではないかと考える。
「オリパラ2020における陽性率が0.1%と0.03%」という報道を聞いた際,即座に逆算して「母数が100万人というのはおかしい」と筆者は家族に話したのを覚えている。のべPCR検査数が100万回に対しての陽性率の計算は,正直言えば開催者である東京都がオリパラでのCOVID-19感染拡大は抑えられたと発表するために,数字を小さくするゴマカシだと思うのである。「新型コロナウイルス禍における東京オリパラ2020は成功」とIOCも開催者も政府も発表しているが,感染確認者がその後,国内で治療を受けたのか,競技に出ないまま帰国することになったのかなどについての報道もまったく見かけなかった。もし,陽性のまま帰国されたとすると,今度は自国での感染拡大のきっかけにならないとも限らない。
結局,東京オリパラ2020とCOVID-19の関係は,「ウヤムヤ」のうちに「無事閉会」し,「すべてが雲散霧消」して,「なし崩し」的に終わって,だれも騒がなくなるというパターンで終わってしまったようだ。日本中には感動を残したものの,世界でどのように評価されているのか,もう一度検証する必要があると考える。