jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

船、落としますか--詰めの甘さを感じる【訂正あり】

2022年5月24日、知床半島観光船の引き上げが行われた。その後、港に曳航する途中で海中に落下したという速報を見た。

   深さ120mから一気に引き上げ、これを一気に港まで運ぼうという計画に、本当に大丈夫かな、と実は思っていた。もともと海流もかなり強く、また天候もかなり荒れていたからである。吊り上げるのに2本のワイヤーを使う、というところでも、やや心配していたし、その後、曳航する際に曳航船に固定した、と報じられていたが、ワイヤーの本数を増やしたかどうかも不明である。

【訂正】吊り上げに使ったのは,5本のナイロン製の帯で,曳航中にそのうち2本が切れて落下したとのこと。安全策は取っていたが,十分ではなかったようだ。2回目の引き上げには,さらに強度の高い帯2本を使うという。これこそ2本で大丈夫か,という心配も出ている。【訂正終】

 筆者が考えたプロセスは、ワイヤーで船体を引き上げたあと、その落下を防ぐために船体の下にトレイを挿し込み、そのトレイに載せて安定させたうえで船上に引き上げるというものだった。海上が比較的落ち着いていれば、そのままトレイごと船上に引き上げ,曳航するにしても船体に影響が及ばないようになるべく囲むぐらいの措置はすると思っていた。

 事故の証拠品である。すでに運用上の不備がいくつも明らかになり,刑事罰は免れないにしても,外的要因による浸水なのか,船体そのものの老朽化なのか,整備不足なのか,などの原因究明によって,責任が重くも軽くもなる重要な証拠品の扱いとしては,あまりにもズサンではなかったか。民間業者の勝手な判断で進められただけで,行政の指導があってしかるべきではなかったのだろうか。現場での立ち会いはあったのだろうか。

 落とした船体は,船底を下にまっすぐ深さ180mの海底に沈んだという。さらに引き上げが困難な深さであり,さらなる負荷がかかって事故原因の解明が難しくなることが考えられる。

 せっかく鹿児島からはるばる移動し,潜水士も加圧室で準備するなど,危険の伴う作業を無事に成し遂げられたと思っていた矢先で,海上での作業担当者に何らかの気の緩みや責任感の欠如があったのではないかと思われて残念である。潜水士もまた加圧室に入り直しになるのか,別の潜水士が対応するのか,これもまた命がけの仕事をしなければならない。

 潜水士による最初の調査で,行方不明の方の情報は得られなかったという。そもそも,浸水の連絡があってから実際に沈むまでに1時間以上もあり,急に沈没して船内に取り残されるという状況は想定できなかった。また,強い海流によって国後島で発見された方もおられ,船体付近に留まっている可能性はほとんどないと思っていた。やはり初動の遅れが残念である チグハグな日本の「可視化」技術--木を見て森を見ずの科学立国政策・自衛隊政策に失望感【追記】 - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2022/4/29。

 東日本大震災の行方不明者が,11年経った現在も2500人を数えるという。震災の被害の大部分は津波と思われる。水の怖さを改めて考えさせられる。船の事故の場合,多くは岩礁との接触による船体損傷である。大型船の場合は,早めに気づいても進路を変更できないこともあるかもしれないが,小型船なら避けることもできるかもしれない。船舶への“i-サイト”(この場合は2つのソナーで障害物を検出して自動回避する)といった仕組みの開発・導入も必要かもしれない。