ようやく「緊急事態宣言」が出ることになった。これの是非はとりあえず議論しない。
さて,「クラスター」について少し考察してみる。本来の意味は,「房」「集団」「群れ」などである。
ITの世界では,「ネットワークに接続した複数のコンピューターを連携して1つのコンピューターシステムに統合し、処理や運用を効率化するシステムのこと」をいうようだ。“まとまると強い”というわけだ(いずれも各社から拝借)。
一方,やっかいな単語もあった。クラスター爆弾。小型の爆弾や地雷を広い範囲にバラまくことで被害を広範囲に及ぼす爆弾である。不発弾として地中に潜ったままになることもあり,爆撃後の長い期間,被害が継続する。禁止条約もできている。
今回の新型コロナウイルスにおけるクラスターは,後者に似ている。1人の感染者から,その属する集団に感染が広がり,それが連鎖し継続する,という性格を持っている。病院や施設での院内感染,大学内での感染,家庭での親子感染,そして都市から地方への移動に伴う感染の拡大などが,これに相当する。感染の拡大は,指数関数的に増える。
この拡散,増殖を今の時点で防ぐには,「移動の制限」しかないが,今回の緊急事態宣言では,都道府県知事にさまざまな権限が与えられるが,海外で実施されているロックダウン(都市封鎖)をする権限がない。「移動の自粛」にとどまる。
これまでも「不要不急の外出の自粛」「県外への移動の自粛」などの言葉で表現されており,緊急事態宣言後も,「より一層の自粛」が行われるに過ぎず,移動の制限ができない。すべて個人,企業などの「自主判断」に任されている。
移動を制限できない現状で,家族や社員という「集団」を守るために,「守備クラスター」という言葉をあえて使うことを提案する。
「守備クラスター」とは,自宅や会社などの集団単位で「外からのウイルスの侵入を徹底的に防ぐ」概念である。家からの外出を自主的に制限するのはもちろんだが,外出した場合,外での接触を避けることはもちろん,家の中に持ち込まないよう,アルコールによる手指消毒,手洗いの徹底をすることである。
いまどき,自宅での検温や入室時の検温,アルコール消毒,手洗い,マスク着用なしでの会話,密集した状態での会議,会食などをフリーで実施している会社や学校があることが信じられない。外がだめなら,内(自宅)を守るしかない。まず,「自宅を守備クラスターに」の徹底をしたい。他人は信じられないが,せめて家族は信じたいと思う。