jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

クルマ,ドローン---災害時の関連企業の初動が遅い

2020年7月の「令和2年7月豪雨」が継続中である。昨日7/10に,災害時のドローン出動の意義に言及した。自衛隊や消防,自治体などが積極的に導入し,被害が拡大する前に,的確な状況把握をするツールとして使うべきだと述べた。導入の問題となる予算については,国がサポートすべきと述べた。

 さて,災害用ドローンの条件として,悪天候でも飛べること,長時間飛べること,ある程度の荷物を運べること,などを挙げた。報道や趣味の世界の撮影に特化したドローンではなく,「はたらくドローン」である。条件を備えたドローンとして,モーターとエンジンを搭載したハイブリッド型が望ましい点も述べた。

 一例として,80万円の産業用ドローンのことに触れた。個人的には「高いな」という値段であるが,自治体で導入するにはこれぐらいの価格は普通だろうと考えた。しかし,すでに世界中ではもっと大型で高性能な産業用ドローンが開発され,使われていることを改めて知った。

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www.drone.jp

 主に山岳での遭難や,徘徊者の捜索などの実績が紹介されている。ある捜索では,6機のドローンを同時に飛ばし,それぞれが予め設定されたルート上を飛ぶことで,広範囲の捜索を行い,いち早く行方不明者を発見した例が紹介されていた。

 産業用ドローンの一番のニーズは,農業での農薬散布用のようである。日本ではない。アメリカなど,広大な農場での農薬散布は,これまでは小型飛行機で実施されていた。決められたパターンで低空で飛ばなければならない農薬散布は,パイロットにとっては危険なフライトであり,きっとストレスのかかる仕事だったに違いない。ドローンならば,GPSで位置を把握し,決められたパターンをくまなく低空で飛ぶことができ,効率よく農薬散布ができる。

 これまで飛行機でカバーするような広大な土地である。開発されている農業用ドローンは,搭載重量(農薬)70kg,飛行時間3時間という大型である。1時間で80エーカーの農薬散布ができるという。お値段も2万8000ドル(約300万円)と一桁上だった。

 送電線や石油パイプラインの点検にも,産業用ドローンが使われている。飛行経路をプログラムでき,不具合情報を接近して確認することもできる。おそらく,飛行時間も数時間は確保されているだろう。何より,高所作業などがなく,また有人ヘリコプターよりも安全でコストも低いはずである。

 農業用ドローンの搭載重量70kgには驚かされた。より安全性を確保できれば,人の救出にも使えるレベルである。もっとも「空飛ぶクルマ」としてのドローンタクシーが登場している現在,人の救助運搬も夢物語ではない。ただし筆者は,空飛ぶクルマが常時飛ぶような社会にはなってほしくないと思っている。せいぜい観光地や離島だけにしてもらいたい。

 さて,産業用ドローンが1機100万円~300万円としても,クルマほどの数が出るわけではない。おそらく原価はもっと安いのだろう。日本向けだと,たとえば農業用ドローンとして,飛行時間1時間,搭載重量5kg程度のドローンをメーカーとしてどんどん作ってほしい。

 そして,購入したユーザーは,どんどん活用して,さまざまなフライト条件で飛ばせるように日頃から訓練してもらう。災害時には,この農業用長時間フライトドローンを災害現場に急行してもらい,情報収集に協力してもらうような体制を作れないかという思いがする。

 もう一つは,産業用ドローンメーカーが,自ら災害現場での事前調査や情報収集に活躍してほしいと思うのである。

 たしかに,警察や消防が活動している空域では,報道ヘリコプターも活動が制限される。それは正直言って,マスコミの報道が救助にはほとんど役に立たないからである。東日本大震災の際も,救助を待つ人の上をマスコミのヘリコプターが何度も通るが,何の役にも立たなかった。逆にマスコミ側も何の助けもできなかったという忸怩たる思いがあるという話も聞く。

 本来,災害現場の初動は,自衛隊が一番慣れている。警察や消防のヘリコプターも,初動で出動するが,正直言ってかなり上空からの状況確認だけしかできない。自衛隊,警察,消防,自治体に災害用ドローンを装備して初動に当たらせ,情報収集をする。すでに被災している個所の把握や,これから危険になりそうな個所の把握をするとともに,被害住民により接近しての注意喚起,逃げ送れた住民の発見,流された人の追跡など,これまでテレビ画面を見て「あああ」とため息をつくだけでない,より積極的な行動をドローンを通じてできる可能性がある。

 現時点で,自衛隊自治体,警察,消防への高性能ドローンの配備は,残念ながらほとんど進んでいないと考えられる。国が方針を明確にして,導入の補助をすべきだと書いたが,期待薄であることにも言及した。

 ならば今できるのは,産業用ドローンメーカー自身ではないのだろうか。上記のような,航続時間1時間,搭載重量5kg程度の産業用ドローンをとりあえず100機,それを操縦できる人も100人確保し,災害の可能性のある状況で初動して情報収集に協力できる体制を自ら提案してほしい。警察や消防,自衛隊の活動に影響を与えない飛行パターンの提案も必要だろう。

 今回のような1級河川が決壊するような災害では,たとえば3機編隊で川の中流から上流にかけての往復撮影を繰り返すことで,堤防決壊の兆候を発見できる可能性がある。山の斜面を広範囲に編隊飛行することで,地すべりの兆候の早期発見や予知ができるかもしれない。

 2019年の台風19号による千葉県の停電では,電源車の配置に不備があったことが問題になった。その後,しばらくしてから日産自動車から電気自動車のリーフを避難所に送って,電源供給に役立てるという話があった。停電が長引きそうだ,あるいは避難所に電気が来ない,という状況になったら,即,手持ちの電気自動車を配備するような決断があのときできなかったのか,と思う。今,テレビCMで紹介しているが,リーフの満充電で一般家庭の4日分の電気を確保できるらしい。冷蔵庫もエアコンも使った状態である。少し節約して使えば,避難所で3日間ぐらいの電力供給ができるのではないか。今回の大雨災害でも,避難所へのリーフの配備をぜひ日産には期待したいところである。