jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

女房役がいなくなったドラマ

筆者はサスペンスドラマが好きである。ミステリードラマも好きである。そういえば,どう違いがあるのか,よく理解していなかった。カタカナ語などを解説してくれているサイトでは,サスペンスの意味とは (imimatome.com) と解説してあった。なるほど,suspendとつながる意味で,宙ぶらりんで不安定な(精神)状態をドラマ化したものとのこと。一方,ミステリーは「謎解き]を意味するらしい。

 好んで観るのは,主に刑事事件モノである。これを解決する主役が「刑事」あるいは「検事」というドラマを観ることが多い。犯人を特定するのに,聞き込みという刑事の本流のやり方で進むドラマよりも,科学鑑定であったり,時刻表トリックの解明であったり,そういう「謎解き」を楽しんでいることが多い。つまり,サスペンスでありミステリーであるものが好きだと分析できる。

 ミステリーの主役は,探偵が多いように思える。海外ドラマはミステリー系が多い。筆者の世代でいうとアガサ・クリスティコナン・ドイルなどの作品である。警察が一目置く探偵,という設定が多い。日本だと横溝正史ということになる。この流れで,アニメの「名探偵コナン」も好きである。また新聞記者(事件記者)が主役のドラマも,マスコミ人としては嫌いな方ではないが,だいたいが警察や被害者からは嫌われ役と設定されているのがやや残念である。まあ,実際にメディア側は横暴なことが多いことも確かだから,仕方がない。

 民事系はやや苦手である。主役は弁護士や会計士,税務署員。また,犯罪でも薬物や暴力団,詐欺などのテーマは苦手である。

 さて,このように分析を始めると,好んで視聴する俳優さんもだいたい決まってくる。渡瀬恒彦船越英一郎内藤剛志中村梅雀沢口靖子名取裕子東ちづる,そして単発では北大路欣也大地康雄恵俊彰石塚英彦などの「ちょっと主流からずれた主役」のドラマを楽しんでいることがわかる。また作家で言うと,西村京太郎のサスペンスドラマが圧倒的に多い。鉄道時刻表トリックが多いため,昔の“鉄ちゃん(鉄道ファン)”にはたまらないドラマである。内田康夫の「信濃コロンボ」シリーズも,本家の「刑事コロンボ」のパロディーとして楽しんでいる。

 この自分の好きなドラマを分析していると,別の意味で重要な人が後ろにいることに気づく。それが,愛川欽也であり,伊東四朗寺島進である。西村京太郎サスペンス「十津川警部シリーズ」では,亀さん(亀井刑事)役で十津川警部をサポートする。ちょっとおっちょこちょいだったりするが,一途なところが憎めない。エリートの十津川警部との絶妙なコンビになっている。刑事ドラマにおける重要な女房役である。

 さらに,主役を引き立てるパートナー役に,魅力のある女性を配していることにも気づく。市毛良枝森口瑤子山村紅葉など。いつも危険な仕事をし,なかなか家に戻ってこない主人公にそっと寄り添って,家庭的な雰囲気をドラマに加える。このバランスによって,ドラマに深みが出てくると思う。姿を見せない奥さんの存在が想像を掻き立てる。典型例は「刑事コロンボ」の「ウチのカミさん」だが,別れた女房がいたりして主役の「普通の人」の部分を描くことで,親しみを持たせる。

 ドラマには,こういう女房役であったりボケの部分が必要な気がする。新しいドラマだと,ムロツヨシが絶妙だと思う。俳優でありながら,「コチラ(お笑い)系」とも呼ばれたりしている。

 こういう人材が減っていると思う。テレビドラマの原作がアニメベースが増えて来ているからだろうか,内容の厚みが減って,最初から最後まで不安を煽るだけの演出が目立つ。まさにアニメ的である。また,主人公もその周辺も「平等」な立場になってきて,ほっとさせたりボケたりする要素が少ない。「女房」あるいは「女房役」という位置づけの役を置かない傾向があると思う。

 ボケ役を置くにしても,本当のお笑い系のボケ芸人を持ってくると,もともと俳優としてのベースがないので,単に軽くなり過ぎてしまう。役者としての素質が求められる。女房役の代わりに,単に恋愛ストーリーを絡ませることも多く,これによってさらにドラマが軽く感じられるようになる。

 考えてみれば,インベーダーゲームに始まったテレビゲームは,途中で気を抜くと死が待っていたり,ゲームオーバーになってしまう。常に緊張を強いられる。筆者はインベーダーゲームもクリアできなかったし,スーパーマリオもステージ2以上に進むことができないほどゲームが苦手である。緊張が続くのが苦手なんだろうと思う。途中で息抜きのないドラマや映画が苦手である。

 ホームドラマもなくなった。刑事ドラマも,単なるドタバタだったり,逆にホラーだったりする。内田康夫氏はもう亡くなり,西村京太郎氏ももう90歳である。もうこういった奥深いドラマ作家は出て来ないのかもしれない。筆者は現在,CS放送で過去の作品を出演者で検索して楽しんでいる。便利な時代になったものだが,同じ作品が繰り返し録画されるので,さすがに限界を感じている。

 その分,つなぎだがアニメの「名探偵コナン」も楽しんでいる。作者の青山剛昌氏は筆者より若いので,まだまだ期待したいところだが,最近のテーマはやや無理が生じているような気がする。ちなみにコナンの「女房役」は毛利欄ちゃんだろうか。ただ,役柄の設定も,時代錯誤と言われる可能性が出てきている気がする。

 「女房役」という設定が,すべて時代錯誤なのだろうか。ちょっと残念な気もする。