筆者は,問題解決型のテレビドラマが好きである。社会の悪に立ち向かう正義,という設定が好みなのかもしれない。
昔の時代劇がその典型例だろう。『水戸黄門』『暴れん坊将軍』など,確かに最後は権威を傘に場を収める,という設定ではあるが,悪人は悪人,不幸な人民を助け,正義を貫く,という姿勢は,ストーリーとしては単純で,結果も予想しやすく,1時間で解決するという読み切り設定もさっぱりしている。
昭和時代では,作者の西村京太郎や内田康夫の作品が好みである。鉄道ダイヤのトリックを暴くストーリーや,殺人事件の推理をするストーリーは,軽いクイズのようなもので,頭を少し使いながら最後のどんでん返しに作者の力を感じてスッキリと見終わることができる。
押しなべて,刑事モノ,医療モノ,災害救助モノが好みである。苦手なのは,政治モノや金融モノである。若者が主人公の青春モノも最近はまったく見ない。
時代劇モノと違って,昭和以降のドラマでは,主人公の所属組織の裏事情がドラマの伏線として使われることが増えた。時代劇でもワイロの話や女色の話などの裏事情がないわけではないが,たいていは主人公がバッサリと斬る相手の話である。ところが,現代ドラマでは,主人公の所属する組織の裏事情が実に陰湿である。権力抗争,金満体質,政治権力,組織の上下関係などが入り組んでくる。
刑事モノで言えば,犯人と政治家や官僚との癒着による上からの圧力,という伏線が出てくる。医療モノでは病院組織の経営から現場への圧力という構図がある。
2021/7から始まったドラマ『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(TBSテレビ)は,大型トラックの中に手術室を持ち,現場で緊急手術をする,という設定にかなり期待をしていたのだが,医療ハイアラーキの伏線に加えて,政治的伏線が組み込まれていて,筆者としてはガッカリした設定だった。
しかし,このドラマも視聴率は高い。2回目が1回目を超えて伸びていることも,人気を物語っている。筆者の好みのドラマは,なかなか現れないようである。女房役がいなくなったドラマ - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2021/3/27。結局同じことを繰り返し書いているだけかもしれない。
最前線で活躍する主人公にはちょっとほっこりする女房役がバランスを取るし,最前線から外された主人公そのものには,ほっこりする。先頭を切ってバリバリ進むベンチャーは,周りがついていくのが厳しくなる。何事もバランス感覚が必要なのではないだろうか。やはり政治とカネが絡むと,ストーリーが重くなる。それを和らげるために女性を配置する,というやり方は,もう古いのだが,結局,昨今のドラマも同じ轍を踏んでいるように思える。○○賞作品などのベストセラーはもうたくさんである。こちら系の仕事をしなくてよかったとつくずく思うこのごろである。