jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

おせちで「食材の安全」と「ロジスティクス」と「SDGs」のバランスを考える

お正月3日目。早起きして台所の片付けをしてみた。筆者宅のおせちは,黒豆や田作り,小芋,お煮しめ,紅白ナマス,栗きんとんなどを家で調理し,カマボコや錦玉子などのほかのアイテムも併せて,重箱に詰めて楽しんでいる。かつてはカミさんと二人で手分けして年末に調理していた。子供たちが成人になり,いくつかのアイテムの調理を任せられるようになった。筆者も現在は,黒豆作りのみを担当している。

 これまで数回,出来合いのおせちを買ったことがあったが,おせちといえば普段と異なるメニューなので,子供たちが食べられるアイテムが少なかったりしたため,自分たちが好きなアイテムを集める方式が続いている。時間的には,年末の忙しい時期に準備しなければならないので,出来合いのおせちは楽なのだが,年々単価がどんどん上がっているので,手が出ない。

 さて,おせちと言えばもともとは正月に「切る」を意味する包丁を使わないという縁担ぎから始まったと理解している。家庭の主婦を正月の間だけでも家事から解放するという意味もある。さらに3日間の保存性を上げるのに濃い味付けをしている。

 出来合いのおせちは,多くは予約販売されている。したがって,おそらくそれほど無駄を出さないのではないかと思われるのだが,実際はどうなのだろうか。おそらく10月ぐらいから製造を始めて,冷凍状態で年末まで保存し,解凍して消費者にわたす,という流れなので,解凍してしまったものは無駄になる可能性もある。

 一方,我が家のように家で重箱を整える場合,豆などの素材にしても,カマボコなどの加工食品にしても,多くはポリエチレンなどの軟質プラスチックで密閉包装されている。お正月用の特別な商材も多い。この時期に使わないと,他の時期にはあまり使わない。それでもおそらく半年ぐらいの賞味期限はあるので,無駄にはならない。しかし,プラスチックによる密閉のため,包装はゴミになる。

 実は,今朝台所の片付けをしていて気になったのが,このプラスチックゴミである。2日目に食材を追加したためだが,「結構,ゴミが出たな」という印象だった。普段よりも多い感じだったのである。

 プラスチックによる密閉包装によって運送上の食材の安全が確保され流通を促進することで経済は発展する。また賞味期間が延びることで食材の無駄も減らしている。しかし,プラスチックゴミは増える。賞味期間切れが起きれば,食材は無駄になる。SDGsの視点から言えば,痛し痒しというところである。

 つまり,現代社会の流通においては,特にコンビニエンスストアはプラスチック包装の山である。スーパーマーケットも,一部の野菜以外はプラスチック包装ばかりである。コンビニは,配送センターから配達されるアイテムを並べるだけなので,プラスチック包装は仕方がないが,スーパーは魚も肉も店鋪のバックヤードで加工したものをわざわざプラスチックパックにして店頭に並べている。

 こうなると,昔ながらの「魚屋さん」「肉屋さん」の方がまだゴミの発生は少ないかもしれない。もっとも,昔は生魚を新聞紙に包み,肉は竹の皮に包んで販売していたものを,結局は水やニオイが出ないようにプラスチックの袋に入れて販売されるので,プラスチックゴミがまったく出ないということではない,というのが現在の状況である。

 プラスチックゴミを減らすために,紙やワラ,薄く削った木材などさまざまな取り組みがされているが,結局防水性を持たせるためには樹脂(プラスチック)を塗ったり染み込ませたりラミネートしたりしなければ実現していない。可燃物として処理できるようになっているが,燃やせばこのプラスチックを燃焼させることになり,CO2排出ゼロというわけには行かなくなる。

 同じように,食器の油汚れをうまく洗うためには,中性洗剤が多く使われるが,食器から除かれた油も,それを洗い流した洗剤も,結局は下水に流れて行ってしまう。その先で浄水場で濾過され,海に流されるのだが,中性洗剤の化学物質をすべて取り除けているわけではない。川や海の「富栄養化」をもたらし,赤潮青潮などのプランクトンの大量発生を引き起こしたりする。かつて,中性洗剤をやめて石鹸にしよう,という運動があったが,いったいどこに行ってしまったのだろう。

 また,トイレの洗浄剤やパイプ洗浄剤,また風呂の洗浄剤も,どんどん強力になっている。カビ取り剤もさらに強力である。掃除を楽にする分,環境に負荷をかけているのではないか。かつて,川に流れ込む排水の半分以上が家庭排水で問題になり,油汚れはまず紙で拭き取ろうなどと言われてきたが,どうも最近はほとんど顧みられていないのではないだろうか。

 植物由来の「生分解プラスチック」は微生物が分解するから問題ない,という話はあるが,完全に分解する前の段階でバラバラになったものがマイクロプラスチックとして環境汚染に加担もしている。

 消費者がレジ袋を受け取らないことも必要だが,販売者がプラスチック容器そのもので飲料を提供したり,ストローやスプーンの配布を一切なくすような取り組みが必要だろう。かつて,自分の鍋を持って豆腐を買ったりしたように,マイバッグ,マイカップ,マイストロー,マイスプーンのないお客には商品を売らない,というぐらいの気概がほしい。