jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

Bluetooth骨伝導イヤホンを使ってみた--万能ではないが耳への負担がないという安心感

骨伝導イヤホンというのは、もう何年も前から気になっていた製品である。耳の穴を塞ぐこれまでのイヤホンは、耳や鼓膜に負担がかかるし、ずっと装着していると汗をかいたりして気持ちが悪い。周囲の音が聞こえないと危険だし、聞こえ過ぎると音楽などに集中できない。

 一般的な有線のイヤホンの欠点として,ケーブルが服などに触れるときに生じる振動がノイズとして耳に達することが挙げられる。ケーブルの素材の改良も進んでいるが,完全にこのノイズを防ぐ方法はまだ聞いたことがない。

 この点で,ワイヤレスのイヤホンは,ケーブルの擦れ音がなく,移動中の視聴には向いている。かつては,FMトランスミッターというラジオ電波を利用するイヤホン(筆者が持っていたのはヘッドホン)があった。FMラジオの特定の周波数を利用する方法で,クルマの中で車載ラジオにFM電波で音楽を飛ばして,車内で楽しむという使い方もされていた。

 現在のワイヤレスの主流はBluetoothである。車載オーディオへの無線接続も簡単にできるようになった。パソコンの周辺機器でも,キーボードやマウスをBluetoothで無線接続すると結構快適である。ここでもかつてはWi-Fi接続のマウスなどがあったが,消費電力が結構多く,頻繁に充電する必要があった。Bluetoothは消費電力が少ないので,マウスでも1週間以上無充電で使うことができている。

 イヤホンでもBluetoothによる無線接続が増えている。特に,インナーイヤー型で,左右独立型の完全ワイヤレスイヤホンが大流行である。かつては若者といえば大型の密閉型ヘッドホンを頭に装着して肩でリズムを取りながら歩いていたものだが,今では多くの若者が耳にこの左右独立型のイヤホンを装着して歩いている。

 ワイヤレスイヤホンの長所は,ケーブルの擦れノイズがないことである。ガサガサという擦れノイズがないので,移動時や運動時にノイズが気にならない。特に完全ワイヤレスイヤホンの場合は,耳にきっちりと固定されているので,そもそも擦れノイズが発生しない。

 一方,完全ワイヤレスイヤホンは耳に装着するために大きさの制限がある。わずか数mLの体積の中に小型のスピーカーと小型の通信回路とバッテリーを収納する必要がある。また,ボリュームと電源スイッチも配置する必要もある。最近では,ノイズキャンセリング回路を搭載した完全ワイヤレスイヤホンも登場しているが,設計者の努力には感服する次第である。

 1つのうまい解決策が,バッテリーによる充電機能を持つケースの採用である。もはや当たり前のようにケース付きで販売されているが,イヤホン未使用時にケースに入れておくとケースからイヤホンに充電される仕組みである。ケースは帰宅後に充電しておけば,イヤホンがバッテリー切れになることはない,という発想である。よく考えたなと思った。イヤホン内のバッテリーも容量が増えて,長時間の視聴が可能になったが,丸一日,耳に入れていることはない,という着眼点からの設計だろう。ケースがあることで,左右がバラバラになることもない。左右を間違えることもない。

 ただ,この完全ワイヤレスイヤホンは,落下の危険から完全には解放されていない。耳の穴だけでなく,耳たぶにも引っ掛けるなどの工夫もされているが,いったん落ちかかったらそれを止める方法はない。高さ1.5mからコンクリート床に落ちれば,ダメージは大きい。筆者は初期のころの完全ワイヤレス型をいくつか試したが,数回は歩行時に落とした。パーツに分解されたこともあった。

 最近のモデルは,さらに進化しているのだが,完全ワイヤレス型に数万円を投資するかと言われると考えてしまっている。また,ノイズキャンセリング機能も付いて没入感もさらに向上しているというのだが,もともとのBluetoothが低速通信の規格なので,高音質の伝送はできないのではないかという疑いを持ってしまっている。バージョンが上がるごとに通信速度は上がっているはずなのだが,特に音楽鑑賞に堪えられるかについては,まだ疑問を持っているのである。

 このほか,ネックバンド型や左右一体型などのBluetoothイヤホンがある。このタイプは,イヤホン部とバッテリー部,スイッチ部を別に配置できるため,使用時間が長かったり,スイッチ操作が楽だったりする。片耳だけ外して普通に電話をしたり,会話をしたりする際にイヤホンを落とさずに済むため,筆者としてはネックバンド型を結構重宝して使っていた。しかし,イヤホン近くのケーブルやネックバンド部の擦れノイズはある程度発生してしまう。このガサゴソ音をノイキャンすることはできないので,擦れノイズは仕方ないと思っていた。

 さて話を元に戻して,骨伝導イヤホンである。Bluetooth接続である。筆者が試したのは,左右一体型で,頭の後ろで接続するタイプ。耳たぶの上に引っ掛けて耳の穴の前方の平らな皮膚に振動ユニットを軽く押し付ける形になっている。

 骨伝導といっても,小型のスピーカーユニットの振動を骨に伝えるだけなので,音を出す仕組みは普通のイヤホンと同じである。ただ,鼓膜を振動させるか,耳骨を直接振動させるかによって,振動特性をチューニングしてあるものと思われる。普通に耳の穴の前に置くと音は聞こえるし,ボリュームを上げれば音漏れもする。ただ,耳の穴を塞ぐことがないので,外界の音も聞こえるのが特徴である。

 かつて,イヤホンを電車の中などで使うと,電車の走行音に負けないようにボリュームを上げる必要があり,これが耳への負担を高めて「イヤホン難聴」や聴覚の老化の原因になると言われていた。同時に音漏れが大きくなり,周囲の人に迷惑をかけることになっていた。その時代にも,骨伝導イヤホンは耳への負担が少ないからいいと言われていた。

 イヤホン各社はこの問題に対して,ノイズキャンセリングという方法で対応した。周囲の音をマイクで拾い,これとまったく逆相の音を意図的に回路上で加えることで,周囲の音をキャンセルしてしまう,という発想である。筆者もこのノイキャン型は複数持っている。最初は不思議な感覚だったが,たしかに音に集中することができた。このノイキャン回路もさらに進化を続けており,最近の製品はより完璧になっているのだろうと予想する(インナーイヤータイプは,店頭で視聴ができない=衛生的な理由という=ので賭けなのだが,やはり数万円という価格に躊躇してしまう)。

 骨伝導イヤホンも数万円するものがほとんどで,安いものは骨伝導とは言えないような代物,というイメージがあり,これまでは手を出せなかった。今回試したのは中国ブランドであり,その安い商品かと思われたのだが,意外にもしっかりした製品だった。梱包も高級感があった。スイッチもカチッとしたクリックができる。正直,これを作れる中国はすごいなと改めて思う。

 左右一体型なので,頭の後ろにバネ弾性のある太さ3mmぐらいの接続ワイヤがある。ネックストラップ型のイヤホンの経験から,この接続ワイヤが服の襟と擦れてノイズが入るのではないかと思っていた。ところが,いくらこすれても擦れノイズがしない。皮膚を通して耳骨に直接振動を送り込む構造のため,擦れノイズは皮膚で吸収されてしまうのではないかと思われる。移動中の使用でも,擦れノイズはまったく聞こえなかった。

 一方,ボリュームを大きくすると音漏れは発生する。電車の中では,耳には周辺ノイズが直接入ってくるので,骨伝導の音もある程度大きくする必要がある。しかし,仮に最大限に音を大きくしても,鼓膜への負担はほとんどないので,安心して音を大きめにできる。なんと,製品には耳栓も同梱されていた。電車内のノイズキャンセルは,耳栓でどうぞ,というわけである。

 1時間以上,装着して移動してみたが,まず耳への装着感がまったくなく,快適だった。耳たぶを押し付けることも,耳の穴を塞ぐこともなく,また多少ずれても音が聞こえる。ただ,たとえばニュースや朗読などの言葉を聞くには,周辺ノイズが大きすぎて聞き取りにくい。ポップ系のBGMを聞き流す,という使い方が合っているようである。また,自転車を乗るときのBGM用途も,耳を塞がないので安全かと思われる。オートバイの場合は,そもそもイヤホンはグレーアイテムなので,注意が必要だろう。今回のモデルではネックバンドがヘルメットに引っかかるかもしれないし,スイッチがヘルメットの中に入ってしまうので操作ができない。 

 筆者の自宅では,リビングルームにテレビを置いてあるが,家族が見る番組の大半は筆者の趣味に合わない。また,それぞれがタブレットやノートパソコンでネット動画などを視聴しているので,音が混在する。そこで,Bluetoorhイヤホンでスマホで動画を1人で聞いたりしている。家族にはイヤミと思われているようだ。さらに,家族に話しかけられることも多く,イヤホンをつけっぱなしにするわけにもいかない。Bluetooth骨伝導イヤホンは,こういうシーンでも活躍しそうである。防水性も高いため,テレワーク日の日課となっている皿洗いも,楽しくできるかなと期待している。