話題が集まるところにお金が集まるのが世の中の常である。それが金儲けの話になれば,一気に話が盛り上がり,拡散する。芸能人が加われば,さらに話に信憑性が増してくる。
年金制度は,いわば強制的なネズミ講である。今必要な資金の原資を,次の世代から徴収して当てる。物価は上がるのが常識なので,これに比例して人口が増えることが原資確保の条件になる。物価が上がり続けるのに人口が減少傾向にある日本で,年金制度が破綻を起こしてしまうのは自明の理である。
その物価は上がるのに,給与は上がらず,経済が低迷する中で企業の設備投資や開発投資が進まないので,銀行からの資金調達もしない。したがって,金利は上がらず,預金金利もほぼゼロになる。
その手持ちの現金がどこに行くかと言えば,1つは一攫千金狙いの宝くじやTOTOなどの賭け事である。一発当てれば何百倍にもなる夢や,元々「◯億円」などと賞金を煽り,多くの人から資金調達する。胴元はその何倍もの資金を集めて自ら儲けを受け取り,そのごく一部を社会福祉と称して誇らしげに還元する。元々の資金が多くの人から集めたお金なので,世代は越えないまでも一種のネズミ講である。
この低金利時代に,おそらく新手のネズミ講が出現しているように筆者には見える。それは,金利を武器に資金を集める手法である。
当初,正直言ってマイナーな地方銀行が,大手銀行を上回る金利を提示し,1口100万円といった資金を調達して運用する広告が出回った。数倍の金利を提示したのだが,おそらくその程度の金利では資金は集まらなかったのではないかと思われ,結局倒産した銀行も出てきた。
その一方で,不動産や投資ファンドといったいかにも「専門家」が運用して利益を出して還元する,という謳い文句で小口資金を集める動きが顕著になっている。数万円の投資でリターンが数倍,というありえない内容に,飛びつく人が増えることは間違いない。
しかし,筆者が思うにこれは完全なネズミ講である。最初の数人は,その次に投資する人の数が2倍あれば2倍の利益を得られる。2番めの人はさらにその2倍の人が関わらなければ2倍を受け取ることができない。
ところが,従来のネズミ講がリアルな世界で行われ,自分の家族や親戚,友達などにつなぐ中でその異常さに気づけるプロセスがあると思われるのだが,現代のネズミ講は個人のつながりがなく,すべてバーチャルで行われるため,異常意識が生まれない。
おそらく,「投資」という名のもとに,常にプラスではなく,ときにはマイナスになる,という何となくそれらしい運用をされることで,トータルはほとんどプラスにはならないようなプログラムが仕組まれているのではないかと思われる。後になればなるほど,運用実績は上がらなくなる仕組みなのだと思われるのである。
先に投資した人はプラスばかりとなり,逃げ得になるのだろう。どこかで大儲けをしようと大量の資金を投入する人が現れると,その資金が分配されて,儲かった気分になる。しかしその大部分は,胴元が着服する。
これらの仕組みを「AI運用」とか話題のキーワードで銘打って,いかにもすごいコンピュータ・プログラムが動いているように見せて投資を煽っているのだと思うのである。
筆者も資金には困っているが,いちおうこの種の投資には手を出さないようにしようと思っている。バーチャル,メタバースの世界で,仮想通貨が乱高下する中で大儲けをする人がいたり,リアル世界の株やFXで大儲けをする人がいることは理解している。nisaのような積立投資で税金優遇などで資金を集めた銀行や証券会社が,結局は株や為替などの資金運用で焦げ付かせて,そのしわ寄せを投資者に背負わせるという,こちらもまともな商売とは思えなくなっている。生命保険会社は,さらに病気や事故,死亡,天災と危機感を煽り,資金を調達しては大口投資に回してしまう。大手だけに破綻する前に逃げ切ることが逆に難しいのかもしれない。
少し力や能力,知識,情報のある者が,弱者から小金を吸い上げるという構図は,結局変わらないのかもしれない。真面目にコツコツ働く人間がバカを見るのは,いつの時代でも同じなのかもしれない。