jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

日航機が着陸時に他機と接触・炎上--帰省ラッシュ時の事故は人災と感じる件【追記】

2023/1/2,例年のようにニューイヤー箱根駅伝の往路の中継を見た。中継の間にも,能登半島地震のその後の余震や津波の有無などについての速報が伝えられる。被害の大きさがどんどん明らかになってきている。

 地震発生直後から,火災の映像が報じられていた。観光名所の朝市の町並みが全焼したことが報じられた。阪神淡路大震災時の神戸市内の大火の記憶が蘇る。食事の支度をしている時間帯での火災発生だったのだろうか。

 と思ってニュースを見ていると,別の火災の様子が報じられた。羽田空港日航機が着陸後に火災を起こしている現場だった。最初のニュースでは,放水が火災まで届いていない場面が映されていた。なぜそのような状況だったのか不明なのだが,火災が数ヵ所で起きていて,右手の火災を消しながら左手の火災に水を飛ばしたが届かなかった,ということなのかとも思った。

 日航機には,乗客367人と乗員12人の計379人が乗っていたということが報じられ,安否は不明だった。後に,全員脱出できたことが報じられ,少し安心したのだが,機体の火災は収まるどころか,機体内部の火災が機体上部の外装の火災に拡大して燃え続けた。筆者の目には,本格的な消火活動はいったん止められたように見えた。実際,その後も燃え続け,機体後部が焼け落ち,さらに機体全部も焼け落ちる様子が見られた。消防車70台以上,しかもおそらく航空機火災に対応した消火機能を持った消防車も含まれていたと思われるが,消しきれないのだと思った。

 一方で,着陸時に海上保安庁の空輸機と衝突したことが報じられた。6人の乗員のうち,機長の脱出は確認されたが,結果として5人が殉職された。能登半島地震の救援物資を運ぶ準備をしていたという。

 日航機の着陸時に車輪が出ず胴体着陸した,という話もある。また着陸前から機外に炎が見えたという話もある。海保機との接触によって火災が拡大したと思われるが,海保機がどこで衝突したのか,衝突後その場で火災が起きたのか,引きずられたのかなどの情報がない。また衝突した経緯についても,日航機が滑走路から外れたのか,海保機が着陸路に接近しすぎたのか,管制塔から誤って誘導されて進入したのか,不明な点がまだ多い。

 いずれにしても,普通に運航していれば航空機事故の発生確率は極めて低い。交通事故と比べても桁違いに小さい。飛行中は自動運転されており,超悪天候,機体の不具合以外は,爆弾テロ,ミサイル攻撃などの極端なケースでなければ事故は起きにくい。一方で,事故の多くは離着陸時に起きている。悪天候時の操縦判断ミス,管制からの指示ミス,そして地上の荷物運搬車や航空機牽引車,着陸後の機体が誤って滑走路を横切るといった移動ミスなどである。機体の整備も念入りに行われているが,見過ごされる可能性も否定できない。

 今回の事故では,管制塔からの海保機への誘導指示ミスが指摘されている。機体の大きさの差もあるとは思われるが,日航機が安定的に停止して火災が広まる前に乗員・乗客全員が避難できたのに対し,海保機へは衝撃が強すぎで乗員の避難ができなかったのかもしれない。また,消防隊も主に日航機の火災の消火に回り,海保機への救助対応が遅れたのかもしれない。

 年末の帰省の帰り客が多かったと思われ,無事に脱出できて良かったと思う。しかし,この事故によって羽田空港は機能不全に陥ってしまった。地震で機能不全に陥っている能登空港をサポートするために,小松空港新潟空港羽田空港の間で臨時便を運航する計画が発表された直後の事故だった。日本のメインの空港の閉鎖で,成田空港にもしわ寄せがいくことになる。これから帰省のピークが訪れる。関係者には,より安全に注力してもらいたい。

 今回の事故は,管制からの指示ミスが最大の原因かもしれない。管制官の仕事が,秒単位で状況判断を迫られる厳しい業務であることはよく知られている。現在,どの程度コンピュータでサポートされているのか分からないが,たとえば発着順の設定などは,便名を書いた板を入れ替えて順に処理するなどが以前紹介されていた。筆者にはとても務まらない仕事だと思った。これを単純に「業務上過失」で処理してしまわないでほしい。

 運送業界では,2024年4月より時間外労働に対して年間960時間の罰則付き上限規制が適用される。これに対応するために業界はデジタル化を含めた対策を急いでいる。航空業界も,いろいろと問題があるかもしれない。新型コロナ禍で調整した人員や,訓練の低下,経験不足など,こういうところにデジタルやAIを使うべきではないだろうか。

【追記】2023/1/4になって,管制塔と両機のやり取りの録音が公開された。日航機の着陸許可,海保機に対する待機指示はきちんと出されていたようだ。となると,海保機が「待機」場所を取り違えて,滑走路内に進入して停止していたことになる。

 不満は,このやり取りが英語でなされていたのに実音声が公開されていないことである。やり取りしていたのは,双方とも日本人である。正しい英語が使われていたのか,つまり海外の機長とのやり取りだとしても誤解を生まない表現だったのか,検証する必要がある。

 もう1つは,現時点でも日航機の機長,副機長のコメントが一切発表されていないことである。着陸許可を受けて着陸態勢に入ってからの操縦は機長の手動に切り替えられているはずであり,有視界飛行であるはずで,滑走路の状況を目で見ながら降下しているはずである。

 海保機が滑走路上に40秒も停止していたことが明らかになっており,日航機の着陸に当たって障害物が見えたのではないかと考える。ならば,仮に1回滑走路上に接地したとしても,エンジンの出力を回復して再離陸できたのではないか,という疑問が出てくる。なぜ危機回避をしなかったのだろうか。

 着陸時の機長,副機長の会話の録音も公開すべきだと考える。