久しぶりに電車の振替輸送に遭遇した。安全確認で1電車が停まると,全線で電車が停まることになる。さらに,その続きの乗り入れラインにも影響が出る。
以前は,プラットホームからの落下や人身事故,踏切への立ち入りなど,人が原因の事故が多かったが,近年はホームドア設置によって人身事故はかなり減ったのではないかと推測する。
安全確認で電車が停まるケースが増えているのは,このホームドアの不具合によるものが多いように思われる。さらに,安全確保のために設置個所が増えた非常停止ボタンを故意に押して電車を停める不届き者が増えたからのように思える。
さて,電車が停まったとき,筆者は比較的早い段階でその路線をあきらめ,振替輸送を選ぶ傾向にある。とにかく,じっとしているのが嫌いなのである。
ところが,その振替輸送への対応が正直言ってあまりにもアナログすぎる。自動改札機を1つフリー状態にし,駅の係員が呼びかけながら,振替客を誘導するのだが,その振替開始タイミングも案内方法も,対応方法もほとんどマニュアル化されていないように感じる。有人改札口を通る必要があったり,駅係員に声を掛ける必要があったり,さらに定期券のチェックをされることもある。誘導すらない場合もある。
筆者は現在,PASMOカードの定期券を使っている。これを定期券入れに入れて使用している。以前の磁気カード式のころは,定期券入れから定期カードを取り出して,自動改札機の機械を通す必要があった。現在は自動改札機にタッチするだけで済む。SUICAはスマホにアプリを入れて利用している。いずれも,自動改札機へのタッチで入出場と料金の精算ができる。
ところが,PASMOカードの表面の乗車区間や期限などの印刷表示は, ほとんど消えかかっている。仮に有人改札口を通ったとしても,駅係員が認識できるようなレベルではないほど印字が薄くなっているのである。
さらに,SUICAは現在,スマホアプリのモバイルSUICAになっている。スマホを画面OFFの状態なら自動改札機にタッチするだけで認識される。これも,有人改札機や窓口で駅係員が確認するとしたら,画面をONにして,アプリを起動するという時間が必要になる。
定期券のパターンは無限にあるとしても,区間外で使用すればチェックできるわけだから,「振替輸送」が発令されたら,区間外からの乗降客の交通系ICカードでのタッチを「正常ルート」か「振替ルート」かを判断して,普通に通過できるような「迂回モード」プログラムを作ることは,それほど難しくないのではないか。
事前に,どの路線が停まったときにどの他社線で迂回させるかは,コンピュータ上では簡単にシミュレートできる。振替が決まった瞬間,迂回ルートでこの「迂回モード」に自動切り替えすれば,定期券を見せたり,口頭で説明しなくても,迂回ルートの自動改札機を通り,しかも料金加算なしで通れる仕組みは作れる。
いちおう,「迂回モード」になった自動改札機を全体の半分数ぐらいで有人窓口に近い側に表示するようにすれば,振り替えしてきた乗客が迷うことも減るし,駅係員に口頭で確認することも,係員が口頭で案内することもでき,顧客満足度は上がる。
問題があるとすれば,この「迂回モード」を通常モードに戻すタイミングである。通常なら,路線が回復してから迂回ルートに回る人はいないが,乗り場間の移動を考慮する必要がある。解除してからとりあえず30分ぐらい経過したら通常モードにするなど,現在はそれぞれの駅でアナログ的に判断しているのではないか。
「迂回モード」でどれだけの乗客がどのタイミングで迂回してきたか,というデータを取ることで,このデータを分析すれば,次回の振替輸送のときに「迂回モード」にする自動改札機の数を増減したり,通常モードに戻すタイミングを正確に設定できるようになり,よりスムーズな振替輸送が実現すると思うのである。