ソニー関連のニュースがあった。内容を忘れてしまうほど筆者にとってショックだったのは,「大手電機メーカーのソニーが・・・・」と紹介されたからだと思う。
筆者にとってのソニーで一番印象が強いのが,オランダのフィリップと提携して開発したCD(コンパクト・ディスク)である。これまでのアナログ方式のレコードから,ディスク上に形成したドットをレーザーで読み取って音楽に戻すというデジタル方式のメディアの登場だった。
同心円状にドットが配置されている。円と円の間隔は1.6ミクロン,ドットサイズは幅が0.5ミクロンで長短で信号を記録してある。このドットパターンにレーザー光を正確に当てて信号を読み取り,音楽に復元するという高度な制御をしている。
もともとは東京通信工業という官需会社だったソニーが,テープレコーダーという音響分野で目覚め,「音」を意味する英語から社名としたエピソードは有名である。世界中で大ヒットとなったウォークマンなど,音響機器メーカーとしての存在が大きかった。
その後,ゲーム機,ゲームソフト,コンピュータやパソコンなどに展開し,製造で培った自動化技術をベースにロボットや半導体も開発した。独自技術の有機ELパネルでディスプレイへの参入も図ったが,すでに液晶パネルで日本の電機メーカーが韓国や台湾にリードされ,有機ELパネルも結局は韓国のLG電子の一人勝ちになり,ソニーのパネルは消えてしまった。半導体技術の展開により,デジタルカメラが次の柱となっていった。
さらにグループは,映画産業に広がり,また金融業界,保険業界などにも広がっている。正直,今,何がソニーの中心業務なのか,わからなくなっている(調べれば簡単にわかると思うが)。
筆者の時代には,ソニーといえばVTRのベータ規格でVHS規格陣営に対抗し,結果は破れたことが印象に強い。CDともども「AV(オーディオ・ビジュアル)」分野で世界をリードしてきた日本企業だと思うのである。
ところが,現在は,世界をリードしているのはGAFA(Google,Apple,Facebook,Amazon)であり,EV(電気自動車)ではテスラと中国のBYD,そして1年前から生成AI用半導体で8割ものシェアを持つNVIDIAなど,海外企業が名を連ねる。日本は,自動車産業でトヨタが唯一残っている感じで,液晶パネルを率いてきた電機メーカーの存在は影が薄い。東芝もパナソニックもシャープも,そのニュースをほとんど聞かなくなった。
AVがテレビ中心の時代は,電機メーカーが主役だったが,いまやインターネット中心の時代となり,ネットワーク企業,プラットフォーム企業,ソフト企業が世の中を席巻し,さらにネットワークを利用した物流システム,仮想通貨などのデジタル金融,メタバースなどの裏ネットワークを先駆けた企業が,世界をリードしている。
クルマの世界でも,石油(ガソリン,軽油)から電気(バッテリー)に世界の関心が動いたことで,旧来の自動車会社が迷走している。ただし,EVに10年後はないと筆者は考えている。
AVやクルマが,人類のエンタテインメントを支える産業で成長してきて,実際にまだまだ発展途上国には巨大な市場拡大の余地が残されているのは確かである。
しかし,そのエンタメが拡大することに対して,地球の環境破壊が止められなくなりつつあることが明確になってきている。
ならば,世界をリードする企業が,今何をすべきかと言えば,エンタメや金儲けではなく,「地球を本質的に救う」ビジネスではないか。
化石燃料を燃やすのをやめて,CO2の排出をしないクリーンなエネルギーとしての水素エネルギーの開発と,人類の食料危機をなくすための植物工場や陸上養殖などの生産技術の開発という2大産業に対して,日本は国を挙げて取り組まなければならないと考えるのである。
まず,宇宙航空産業をすべてやめること。国民に安定して継続できる仕事を提供すること。これにより,結婚,出産,教育,福祉介護などがすべて正しく回るようになると,筆者は考える。