ちょっとした移動に使える乗り物が欲しい。そう考えて折りたたみ自転車やキックボードなどをいろいろと検索しては眺め,ため息をついている。
かつて,筆者がアメリカに留学していたとき,下宿から大学までの行き来用としてニューヨークで折りたたみ自転車を購入した。メーカー名は「ダホン」。当時は「ホンダ」をパロディー化した不届きな会社だと思っていたが,実は自転車では世界有数のメーカーだったとあとで知った。アパートの8階の自分の部屋に持ち込むのに,折りたたみ自転車は便利だった。マンハッタンを黄色い折りたたみ自転車に乗って颯爽と走る姿は,けっこう自慢だった。
日本は坂道が多い。すでに老齢に入った筆者にとっては,普通の多段変速自転車では負担が大きい。上り坂をゆっくりしか上がれないのもくやしい。現時点の最適解は,電動アシスト自転車である。
ところがこの電動アシスト自転車,ママチャリと同じ体型なのだが,重量がかなりある。30kg近くあり,ママチャリの2倍ほどもある。玄関の段差を越えて外に出すだけでもけっこう大変である。ちょっと郵便局へ,ちょっとコンビニへ,という場合,家族のママチャリを借りることが多くなる。
もう一つの用途として,家から少し離れたところに車庫を借りており,そこに置いてあるクルマまでの行き来に使えて,かつクルマに簡単に収納できるものがあるといいのだが,というニーズがある。ママチャリだと,車庫に自転車を置きっぱなしになり,用心が悪いからである。
そうすると,「折りたたみ自転車」が順当な選択肢なのだが,かつて使ったダホンの折りたたみ自転車も,いざ折りたたんだり広げたりする作業はけっこう面倒だった。また,重さも16kgと結構あり,持ち上げて収納するのはいいが,持ち運ぶことはできない。輪行袋に入れて肩から掛ければ電車での移動は可能だが,持ったままの移動は苦痛な重さだった。
もう一つの選択肢がキックボード(人力キックボード)である。現在流行りの電動キックボードではなく,普通に脚で地面を蹴って進むようなものをイメージしている。電動キックボードは,まず値段が高い。個人で持つようなものではない。しかも重い。30kg程度は当たりまえである。それで車道でも時速20km,歩道だと6kmしか出せない。不安定でもある。クルマに乗り切る気がしない。
一方,本来の人力キックボードは遊具として定義されており,免許もいらないが「公道走行を禁止」「交通量の多い道の通行禁止」とされている。これが解釈が難しい。車道は無理としても,歩道なら良さそうなものだが,解釈は警察に任されており,場合によるようである。自転車が走行可能と標識がある歩道は,電動キックボードも時速6km以下で走行できる。なら人力キックボードも良さそうなものだが,「道路で遊んではいけない」ということらしい。
折りたたんでさらにコンパクトになる人力キックボードが,最も持ち運びに適しているのだが,それでも最も軽量なタイプでも5kgを少し切った程度ある。
2024年に平年の5割増しという高値を記録したおコメだが,2kg袋なら普通に持てるが,5kg袋になると両手でしっかりと持たないといけない。これを考えると,移動時にタイヤで転がせるモデルを考慮しても,「手軽」とは言い難い。
まして,自転車で5kgなどほぼありえないようである。部品が増え,凸凹が増え,さらに後輪を駆動するのにチェーンがあり,歯車があり,そこには潤滑油がある。持ち運びで汚れないわけにいかない。
ロードバイクで7kgぐらいの軽量モデルが存在する。基本はプロのレース用である。フレームにはGFPR(炭素繊維強化プラスチック)を使い,鉄製の1/10,アルミ製の1/3で実現する。同時に価格も目が飛び出るほど高くなる。
1つの解決策は,畳んだときにキャリーバッグ状に変身し,タイヤの2輪ないし補助込みで4輪で自立して転がせるようになるイメージである。変身の仕方は,別にパタパタと折りたたむことが必然ではなく,簡単にバラバラにして,また簡単に組み立てられればいい。数秒や1分で使えるようになるのがベストとはいえ,5分~10分程度の手間があってもすっきり収まる方が恰好いい。日本ではまずお目にかかれないが,スーツケースの中のバラバラにした部品を組み立てて射撃用のライフル銃になるようなイメージである。
部品を入れていたキャリーバッグは,乗車時には後ろの荷物入れにすればいい。部品を入れている状態では普通のキャリーバッグとして,移動させればいい。
つまり,「分解しやすく,組み立てても強度の出る設計」を優先させれば,“キャリーバッグ・イン・バイク”が実現するのではないか。
キャリーバッグをベースに,そこに収まる方法を考えてみたいと思う。クラファンしてみようかな,なんて思ったりするが。
【追記】輪行袋の代わりに「キャリーバッグに入る」とうたっている折りたたみ自転車や,折りたたんだときに小タイヤが地面について転がして移動できるというモデルがいくつかあることが分かった。しかし,いずれも筆者にイメージからは「オマケ」の感がぬぐえない。