筆者の現在のメインパソコンは,2017年9月に購入したAsusの11.6型WideのノートPCである。Windows10搭載。CPUはCeleron N3060。メインメモリーは4GB。その当時,Win10が動作するおそらく最低限のスペックのマシンである。価格も激安。本当にこの価格のノートPCでWin10が動作するのか,と疑いながらの選択だった。
当時,筆者はMacBookメインで仕事をしていたが,オフィスではWindowsマシンであり,ファイル構造やソフトのバージョンの違いに少し難儀していた。Windowsでしか動作しない拡張機能があり,MacのBootcamp上でWindowsを動かすことも考えたが,Win10が仮想環境で動作するのか確証がなかった。またBootcampを動かすパーティション変更をするだけのハードディスクの空き容量もなかった。
我が家では,パソコンやネットワークの管理を筆者が一手に進めている。しかし,Win10の環境は家族が先行していた。相談されても助けることができないのはまずいので,最低限のスペックのマシンでも導入する機会を狙っていたのである。
筆者のノートPC遍歴は,NECから始まり,東芝,パナソニック,日本ビクター,NECネットPCなど,MacBook Pro以外は日本メーカー・ブランド品を使っていた。1台,鳴り物入りで購入した米国メーカー・ブランド品が,まったくの見掛け倒しだったこともあり,正直言って海外ブランドにはあまり興味がなかった。また,日本IBMのブランドを引き継いだ中国Lenovoパソコンもあるが,作りはいいものの動作は今ひとつ緩慢で,価格の割に納得いくものではなかった。
日本のパソコンメーカーが続々と撤退する中,家族のノートPCは,ダイナブック,パナソニック,富士通と日本のブランドPCが購入された。学校標準パソコンだったり,量販店オススメモデルだったりするため,文句は言わないが,普通のノートPCの値段である。特にハードディスクの代わりにSSD(半導体ドライブ)を搭載したモデルは,正直言ってとても軽く,動作も静かでビックリする。しかも衝撃や曲げなどの外力にも強いという。この辺りの設計能力は,まだ日本メーカーも誇れるものを持っているのではないかとうれしくなってしまう。
さて,筆者が導入したAsusノートPCは,ハードディスク500GBモデルで,重さは1.21kgである。これまで導入してきたノートPCは,黒色かシルバーだった。初めて白色モデルを選んでみた。選択の基準は,通販でそこそこのスペックがあり,その中の最低価格であることだった。箱から取り出したとき,まずその表面のツルッとした仕上げの美しさにビックリした。この価格でこのクオリティは凄いと思った。丸みのある外観は持ちやすく,カバンにも入れやすかった。なにより,電車の中で使っても格好いいと思えるところが凄かった。強度も十分である。正直,「これ台湾製?」と目を疑ったものだ。
動かしてみると,まったく問題なかった。SSDモデルだとさらに動作が速く,ハードディスクモデルの換装をするユーザーがいると聞く。素のまま使うと「遅くてとても使い物にならない」というのが一般的な評価だからだ。実際,ほかのノートPCやMacBook Proの動作と比較すると,ソフトの立ち上がりや切り替わりにはかなりの時間待たされる。
しかし,筆者のパソコン歴はもう40年になり,「パソコンってこんなものだよ」というのを知っている。Windows 95以前のDOSの時代も知っている。最初に購入したNECのノートPCはDOSモデルで,ハードディスクはなんと20MBだった。マルチタスクもない。通信もようやくモデムが使えるようになった時代である。何か処理をさせて,それが終わるまでコーヒーを入れにいくといった使い方をしていた。つまり,繰り返しの動作はパソコンが,それを指示するのを人間が,という役割分担である。したがって,繰り返し動作が丸一日かかろうが,結果を出してくれればそれで良かった。大学時代,大型計算機センターの巨大計算機で丸2日かかって実験結果を処理させた使い方と全く同じである。
実は,現在もパソコンを使う姿勢は当時と基本的には変わらない。WordでもExcelでもファイルメーカーでも,また仕事に使うPhotoshopでもInDesignでもAcrobatでも,とにかく自動化できるところはすべてソフト側でマクロを組んで連続処理させるという使い方をさせている。筆者は,そのお膳立てのマクロプログラミングをするだけである。
こういうパソコンの使い方をする上で,一番大事なのは「フリーズしないこと」である。多少,処理に時間がかかっても,その間にフリーズしなければ,結果は出せる。自動化処理は,食事をしている間や寝ている間に完了していれば,多少もたもたしていても結果は出せる。
今日,デジタルで仕事をしている人の多くが,たとえば画像処理やコミックの描画などリアルタイムでデジタル処理するためにパソコンを使っている。また,ゲームをする場合は,ディスプレイの処理速度がms単位で速くなければ動きが追いつかない。そういう人にとって,筆者のノートPCはまったくの「クズパソコン」なのだろう。しかし筆者にとっては,「この価格で,このスペックで,Adobeの業務用ソフトが動き,フリーズしない」ということは,実は驚異的なことである。
購入時,実は5年保証を付けた。ノートPCとして持ち歩くことを前提としていたが,3年間使用して今のところ落としていないし,壊れる気配もない。実によく働いてくれている。i5やi7のマシンに比べると明らかに非力だが,デザイン性も含めて筆者は高評価を与えている。
台湾には以前,液晶パネルのメーカーに話を聞きに行ったことがある。当時の台湾のパソコンメーカーはMicrosoftの標準モデルの基板デザインをそのままコピーして生産しているという評判だった。その後,世界のパソコンの9割が台湾で組み立てられるという時期もあった。結果的に,日本の製造業は台湾,韓国を筆頭とするアジア諸国に生産のプラットフォームを奪われ,衰退を余儀なくされたが,クオリティの追求という意味では,アジア諸国は共通したマインドを持っているのを感じる。AsusのノートPCを使ってみて,モノづくりはやはり面白いなと改めて思った次第である。
新型コロナウイルスによって,観光業が大打撃を受けている。世界中のサプライチェーンの影響を受けて製造業も打撃を受けている。農林水産業も打撃を受けている。特に観光業は,インバウンドという海外からの旅行客や,海外行きの需要の回復までにあと数年はかかると言われている。引き続き,新型コロナウイルスの感染拡大が南米やアフリカで続いている状況では,観光立国で待っているわけには行かないだろう。先進国の中では,感染数や死亡者数を比較的少ないレベルで抑えているこの『日本の文化』を輸出することで,世界が再び日本に光を当てるのではないだろうか。
それには研究開発と生産技術,情報発信力が必要である。政治家たちのドタバタは本当に見苦しい。不正を働いている人達は,速やかに潔く辞めていただくことと,無意味な議論を繰り返す国会をもっと正常化すること,そして何事も素早い決断を期待したい。マスク配布が2ヶ月半遅れ,支援金が2ヶ月遅れでは,日本は死屍累々になる。