昨今の薄型ノートPCやタブレットでは,薄型化・軽量化のために袋状のリチウムイオンバッテリーが搭載されている。「バッテリーパウチ」と呼ぶのだそうで,まさしくレトルト食品のパウチパックである。軽量化と同時に,放熱性もいいそうである。
そういえば,NHKの新プロジェクトXの日産自動車の電動自動車リーフ開発の回で,このバッテリーパウチの品質安定の苦労話が紹介されていたのを思い出す。
4年前に導入したmouseノートPCがバッテリーが膨張して交換を依頼した件を紹介した(PCのシステムとソフト・個人ファイルは別ドライブにインストールできないのか--アップデート,不調時の再インストールに不便 - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2024/9/3)。修理見積もり確認のために送られてきた写真には,みごとに厚さ1cmほどにも膨れたバッテリーパウチが写っていた。これによってキーボードが持ち上がっていたことになる。
かつてのノートPCは本体側の厚さが2~3cmほどあった。ハードディスクやCD/DVDドライブを搭載し,しかもモニターコネクターやLANコネクターも厚みがあった。その厚さの中に,「バッテリーパック」という形で,中身は電池型の充電池を複数個直列につないでいた。充電池は金属缶,パックはボディと同じ硬いプラスチックの箱の中に入っていた。仮に劣化して膨張していても,ほとんど変形はわからなかっただろう。現在のUSB-AないしUSB-C,HMDIだけなら厚みは抑えられる。バッテリーパウチが普通に使われるようになった理由である。
その分,ユーザーがバッテリーを交換することはほぼできなくなった。これはタブレットでもスマートフォンでも同じである。特にスマホでは,かつて日本のお家芸とも言われたステンレスの薄型パッケージ製造が不要になってしまった。
さて現在のノートPCのほとんどは,このバッテリーパウチが使われていると思われる。AC電源につなぎっぱなしだと,2~3年で充電容量が半分になるという。しかも,筆者が経験したようなパウチの膨張現象も起きる。ユーザーが交換することもできない。
ならばいっそ,ノートPCをバッテリー未搭載とし,AC電源でのみ駆動させるのを標準仕様ちし,移動する場合は外付けバッテリーユニットを接続して使う,という商品コンセプトはどうだろうか。これなら,バッテリーの劣化による本体の修理が不要だし,バッテリーの劣化も最小限に抑えられる。席を移動するほんの数分をバックアップできる電池を,ボタン電池搭載にしておけば,どこでもAC電源があれば利用できる。
昨今,喫茶店などでは,パソコンの電源を使える店も増えている。どうせなら,バッテリーなしで移動し,作業は喫茶店など座ったときにするように割り切れば,移動中はバックアップのボタン電池だけで済む。どうしてもモバイルで使いたい場合は,外付けのバッテリーを接続して使うという方法である。
新幹線や航空機では,現在ほぼ全席でACコンセントが用意されている。喫茶店でもコンセントを使える席は増えている。筆者はかつて,通勤電車の中でノートPCを使うことが多かったので,当時のバッテリー使用時間が2時間程度だったことは,非常に使いづらかった。その使用時間が4時間,6時間,8時間とどんどん長くなったが,逆にそれほど長い時間,バッテリーでノートPCを使うことはほとんどなくなった。なにしろ,文章の作成から映画の視聴,コミックや小説の読書までスマホで十分できるようになったからである。
ならばノートPCからバッテリーを外してしまうというコンセプトは,時代に合っているのではないだろうか。必要な容量の外付けバッテリーを必要なときに持ち歩けば済む。現在のモバイルバッテリーを直結して使えるケースも出てくるだろう。
次の世代のノートPCで出てくることを楽しみにしている。
【追記】
バッテリーパウチを新しくして戻ってきたmouse PCだが,交換修理の間,ピンチヒッターで古いノートPCを使用していた。画面サイズが15型でDVDドライブも入った旧型である。バッテリーは,取り外しの効くバッテリーパック方式である。
中古パソコンで購入した代物で,業務用の流れ品だったことから,WebカメラもなければなんとWi-Fi機能もBluetooth機能も削除されている。
ピンチヒッターのつもりだったのだが,逆にレギュラーとして筆者の机の上に設置することにした。そして,バッテリーパックも外してしまった。いわばノートPC型のデスクトップ機として使うことにしたのである。これならAC電源に常時接続することで,バッテリーの劣化もない。
2階の筆者の部屋ではなく,1階のリビングで作業をしたい場合,Webブラウザやメール程度ならmouse PCを持ち歩くだけでいいし,ファイル作業をする場合はフォルダごと同期してUSBデバイスを持ち歩けばいい。どうしても“ノート型デスクトップPC”上のファイルやソフトを使いたい場合は,リモートアクセスでつないで使えばいい。実際,リモートアクセスでも何の問題もなかった。
【追記2】
こういうのがいいんだよ。着脱式バッテリで重量960gのモバイルノート (2024/10/23)。エプソンから,いまどき着脱できるモデルが発売された。ただ,この着脱式は,バッテリーユニットをいつまで供給してくれるかが不安な点が問題。薄型なので,おそらく中身はバッテリーパウチと思われるが,おそらく利用者が限りなく少なく,対応が難しくなることが予想される。もう一声,思い切った設計を期待したい。