jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

地球救済のトリアージュ--機械技術者よ,気候変動に立ち向かえ

1945年の終戦後の高度成長期は,石油エネルギーを大量消費して経済が成長するとともに,大気汚染,海洋汚染が問題になった。当時問題だったのは,喘息などの呼吸器系の病気や化学物質による公害病など,ヒトに対する問題が中心だった。公害訴訟は,被害者から企業へ,被害者から国へ,という個人レベルの救済に終始していた。

 実はこの陰で,化石エネルギーの大量消費,CO2(二酸化炭素)の大量排出,フロン系ガスによるオゾン層の破壊が進行していた。これが現時点の地球温暖化を招いたと言えるのだろう。

 1985年ごろ,オゾン層破壊が話題になった。南極上空に巨大なオゾンの穴(オゾンホール)ができた。地球全体のオゾン層が薄くなり,太陽からの紫外線量が増えて,がんが増える,というシナリオだった。その後,フロン系ガスが使用禁止になり,フロン代替材料が使われるようになり,オゾン層破壊問題は話題にならなくなった。

 フロン系ガスは,CO2の数倍の温暖化効果を持っている。地球温暖化問題も,フロン系ガスの使用停止で収まることが期待された。しかし,CO2の排出量がその後世界中で劇的に増えた。ヒトの生活が世界中でより豊かな方向に進んだためと見られる。

 地球温暖化が問題なのは,今後数年の間に2つの劇的な変化が起きる可能性があるからである。1つは,北極や南極,氷河,ツンドラなど,「氷河期の贈り物」がなくなって,地球を冷やす方法がなくなってしまうこと。そしてもう1つが,海底に眠るメタンの氷,メタンハイドレートが解けてメタンガスとなって空中に放出されることである。メタンガスもCO2の数倍の温室効果がある。このメタンハイドレートの溶解によるメタンガスの放出が始まると,これも抑える手段がない。現在のエネルギー政策によるCO2排出抑制など,ほとんど意味をなさなくなる。

 地球の平均気温の上昇が明確になってきたのは,1950年ごろだが,1980年以降,気温上昇が急拡大している。気温上昇→水温上昇→台風などの巨大化,気温上昇→森林火災の大型化→森の減少・二酸化炭素の放出→二酸化炭素吸着効果の減少,気温上昇→干ばつ→食糧の生育不良→食糧供給の危機,といった負の連鎖が止まらなくなってしまっている。そこに追い打ちをかけているのが,COVID-19の世界的蔓延である。

 正直,国連が提唱を始めた「SDGs(持続可能な開発目標)」の17の目標の中で,世の中でいちばん話題になっているのはトランスジェンダー問題である。だが,この問題は「ヒト」だけの問題であり,地球の問題ではない。同じように,教育問題も,貧困問題も,ほとんどがヒトの問題である。地球救済のための目標は,13番めの「気候変動」だけである。ヒトが生き残るために,まず解決しなければならないテーマではないだろうか。

 オリンピック選手やスポーツ選手には,そのパフォーマンスで人を興奮させ,幸福感を向上するという使命がある。教育者には,次の世代の世界をよりよいものにするための正しい導きをするという使命がある。政治家・法律家には,だれもが平等に生活できるような社会を作るための法の整備をするという使命がある。本質論から言えば,人流を抑えた状態で仕事もエンタテインメントも教育も行って経済を回していくために,zoomオリンピックが望ましかったし,テレワーク,テレ授業も100%行うことが望ましい。しかし残念ながら,各界のトップがリアルに動いてしまえば,実現性はない。

 それはともかく,13番めの「気候変動」に立ち向かえるのは,科学者と技術者だけである。中でも具体的に行動できるのは技術者だけである。そしてもっと絞れば,力,熱,流れ,材料を制御できる機械技術者だけが,地球を救えるのである。太陽電池の原理を考えたのは電気の科学者だが,このパネルは機械技術がなければ作ることはできない。クルマのEV化ももちろん機械技術が基本のパラダイム・シフトである。風力発電水力発電,波力発電,そして太陽熱発電もすべて,機械技術が支えている。電気技術,コンピュータ技術は,その最適運用のために使われるに過ぎない。

 COVID-19への対応は,医療技術,医学技術,薬学技術,バイオ技術に任せて,気候変動への対応は,機械技術が音頭をとって電気技術,コンピュータ技術,材料技術を引っ張って解決すべき段階だと思う。

 どんどん,新しいアイディアを出してみよう。たとえば,街全体の基調色を白にする(太陽熱の吸収を地域全体で抑える),地球に影ができるように巨大な傘(シート)のついた人工衛星を飛ばす,真剣に地中生活を目指す,などである。行動なくして,地球の未来はない。