jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

仕事の実態をどう伝えるか--しんどい実態も知った上で挑戦する若者を待つ

仕事とは,自分の力や時間を提供して,それに見合った報酬を得るための社会行動である。動物であれば,生きるために食料を得る行動と繁殖行動以外にはすることがないが,ヒトはそれ以外の行動によって,生きがいとか,報酬とか,さまざまな価値を創造してきた。石器時代でも,石器を作るのがうまい人や,狩りの獲物を料理するのがうまい人がいただろう。単なるギブアンドテイクではなく,信頼関係や尊敬心といった感情も生まれていったに違いない。

 さて現在の世の中には,格好いい仕事,収入の多い仕事,など,いわば「魅力的な仕事」がいくつかある。一方で,「楽な仕事」という視点もある。さらに「人に役立つ仕事」という視点もある。

 身体を使う仕事か,頭を使う仕事か,という見方も必要である。

 仕事は,個人の収入を得るため,つまり「自分を豊かにするため」に必要なのだが,もう一つは,社会を維持するため,社会・国を発展させるため,という,つまり「社会を豊かにするため」にも必要である。仕事そのものが,社会を豊かにすることもある一方で,仕事によって得た収入に対して課せられる税金によって,社会が豊かになる,という面もある。

 芸術のように,人の心を豊かにするという仕事もある。結果的に,作品が市場に流通して富を生み出すこともある。

 仕事選びには,リウォード(やりがい),リスペクト(尊敬),リターン(報酬),そしてリスク(賭け・危険)がある。コストパフォーマンス(時間あたりの報酬)という見方もあるし,Restraint time (拘束時間)の長さという見方もある。

 やりがいがあって,尊敬を得られ,報酬も得られ,そしてリスクが低い,というのが一番だが,多くはリスクも高い。このバランスを考えて仕事を選ぶ必要があるだろう。

 たとえば医者。やりがいがあって尊敬も得られ,報酬も高い。しかし,拘束時間が長かったり,コースそのものの難易度のための勉強も大変である。しかも,仕事の内容はかなり肉体労働に近い。患者の命に関わる場合は,訴訟の危険も考えなければならない。機材もべらぼうに高価だし,病気への感染のリスクもある。生身の患者を相手にするだけに,視覚的や精神的なストレスも相当なものがある。よほどの使命感か,よほどのおカネへの執着か,よほどの出世心がなければ,やって行けない世界なのではないかと思う。外科や救急医療,感染症医療,そして産科や小児科などのなり手が少ない。比較的人気のあった診療内科も,悩みを抱えた患者が相手だけに,精神的なストレスが大きいという。

 サラリーマンは収入が限定的だが,拘束時間は比較的決まっている。自分のやりたい仕事ができる企業に入れた場合は,平凡ながらそれほどストレスなく人生を送れる。やり甲斐とか尊敬とかはあまりないかもしれない。ただ,労使関係からすると,ブラックな経営の企業も少なからずある。

 個人で起業する場合は,とにかくやり甲斐は200%だが,リスクも200%ある。自分が良かれと思った仕事が世の中にまったく受け入れられないことも多いだろう。芸術関係もこれに近い。好きなことができるのが幸せ,だけど貧乏,ひょっとしたら当たるかも,ぐらいの気持ちでなければやっていけない。自分を信じられる人しか,一歩踏み出すことはできない。

 持って生まれた容姿で,他薦(スカウト)でスターの道を目指して歩む人も多い。そこで本当のスターになれるのは,また一握りである。最後まで芽が出ないまま,ちょい役で終わる人もたくさんいる。これもリスクだろう。何で成功し,何で失敗するかも運命次第の世界である。女性の場合は,危険な賭けに出るケースもないわけではないが,たいていはうまく行かない。

 その中で,時代の寵児となっているのが,お笑いタレント,Youtuber,そしてクイズタレントである。テレビや雑誌などの従来メディアでの真面目路線に広告を提供していた企業だが,真面目路線では視聴者や読者が付いて来ず,すべてエンタメが求められてしまった現在,SNSなど,従来の縛りのないメディアでまったく規格外の情報発信がおこなわれ,これに視聴者がシフトしてしまった。仕方なく,エンタメ系メディアに広告が乗るようになり,これがアフィリエイトとして収入源になることが実証され,エンタメがすべての先頭に立ってしまった。あのNHKですら,タレントの暴言に頼らざるを得ないという悲惨な状況になっている。かつて多くのメディアがお色気ネタに走ったのと同じである。

 視聴者もほぼ洗脳状態にある。NHKでお笑いタレントがMCで番組進行していても,疑問を感じないほど洗脳されている。

 小学生にアンケートを取ると,一時期,将来はYoutuberになる,というのが男子生徒の1位だったという。正直,寒気を覚えた。日本はもうダメだなと思った。何しろ,日本人が喜ぶYoutubeエンタテインメントやクイズエンタテインメントのレベルが,あまりにも低俗すぎるからである。

 さらにこれを,東京大学出身者が平気な顔をして披露している。多くの東大出身者は,おそらく苦虫を噛み潰したような顔をして見ているのではないかと想像する。

 理事長が不正や所得隠しをした日本大学は,おそらく将来的には学生数が激減すると思う。これを支えるための方策も講じられるだろうが,そこにまた歪みが生じるのではないかと思う。東京大学も,いい加減に対策を打たないと,「雑学ばかりできる学生の集まる大学」になってしまう。実際,予備校で入試突破のテクニックを覚えて,偏差値を急激に高めた生徒が入学するという大学になっており,雑学しか知らない,図書館の使い方も知らない,人とのコミュニケーションもできない,基礎教養を知らない,といった学生の集まりになっている。

 医者の仕事の厳しい現実や,政治家の仕事の裏にある利権関係のドロドロ,教員の仕事にストレスをかけるモンスターペアレントや部活顧問の仕事,犯罪者を無罪にするためにカネをもらう弁護士の仕事など,仕事の実態を知ったら,わざわざ苦労してなろうと思わない人も増えてくるだろう。

 それでも,この仕事には魅力があるのだよ,と語ってくれる人材が,若い世代の多くにアピールするチャンスがほとんどない。だからYoutuberやクイズ王など,お手軽な仕事に走ろうとするのではないだろうか。

 筆者は,やりたいことを早い時期に見つけて,それに合ったコースを取るべきだという提案をしている 教育改革の提案--やりたいことをやらせる - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2021/12/26。授業としてではなく,先輩からのメッセージとして仕事の選び方を若い段階で知って,それでもその苦労を乗り越えてチャレンジする人が増えてほしいと思う。報酬は,あとから付いてくるものである。まず報酬ありきで仕事を選んだり,先輩の顔に泥を塗るような仕事選びをしてほしくない。しんどい,苦しい,辛いといった仕事の実態を知った上で,挑戦してくれる若者がどんどん輩出されることを期待したい。