jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

都市名の現地読み化はメディアの忖度--本気で始めたらキリがないが今回は仕方がないかもしれない

ウクライナ侵攻に伴い,ウクライナ国内の都市名の呼び方をロシア語読みからウクライナ語読みに変える動きが一気に進んでいる。といっても,キエフを「キーウ」,チェルノブイリを「チョルノーブィリ」という2点の変更をメディア各局が一斉に進めた。ここでも実は「チョルノービリ」にするという案もある。メディアは後者,google mapでは前者になっている。

 海外の人名を現地読みに変える措置はかなり前から進んでいるが,徹底しているわけではない。金正恩を「キム・ジョンウン」にしているが,習近平は「シュウ・キンペイ」のままであり,「Xí Jìnpíng」(シー・チンピン)とは呼ばない。新型コロナウイルスのデルタ(D)株の次が,ギリシャ語アルファベットでニュー(N),クサイ(X)となることを懸念していた ラムダ株が登録。どこまで変わる新型コロナウイルスの変異型【7/9追記・修正】【9/2ミュー株追加】【11/27オミクロン株情報追加】 - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2021/6/25 が,ニューは「new」との誤読があり,クサイのXは習近平の英語表記の「Xi」を避けたというもっともらしい理由でその次のオミクロン(O)になった経緯がある。日本人には別の意味で使わない方がいいと提案していた。

 都市名も,北京は日本では「ペキン」と読むが,中国語ではペイチンと聞こえる。台北は日本では「タイホク」と読むが,これはタイペイと読んだ方が筆者には分かりやすい。アメリカの地名でも,たとえばマイアミ州の首都のOrlandoは日本の地図では「オーランド」と書いてあるが,現地ではオランドーと読まれる。アクセントもラの上にある。

 国名でも,ジョージアは2015年にグルジアから名称変更されたが,もともとはロシア語のGruziyaを欧米読みのジョージアへ変更したものだが,現地読みであればグルジア語のサカルトヴェロにすべきだったという意見もあるようである。

 つまり,「現地読み」を優先すると,キリがないのである。漢字のある中国は漢字を使ってその日本語読みにするが,韓国・北朝鮮は漢字を当てることはできるが基本はハングルなので現地読みでカタカナにする,というのを原則にしたとしても,そもそもカタカナで表現できない音(thやvなど)はどう表記するのか,きちんとしたルールを作るのも難しい。今回のウクライナ地名の読み変更は,ウクライナ支持を表明するための忖度である。悪いとは思わないが,「だからキエフチェルノブイリと書いていたら間違い」という対応をするのは,いかにも肝っ玉が小さい。キーフは首都だから読みを変えてもいいが,チェルノブイリ原発ソ連時代の負の遺産でもあるのだから,ロシア語で運命を背負わせてもいいのではないか。ウクライナとしても,お荷物だと思っているのではないのか。

 「ウクライナ」にしても,ウクライナ語では「ウクライエナ」に聞こえる。ウクライナというのはどちらかといえばロシア語の発音に近いように聞こえる。ここは変えなくてもいいのか,などとも揚げ足を取りたくなる(ちなみに英語ではUkraineをユークレインと発音しており,これを「ウクライナ」と読む気はさらさらないようである)。

 話が堂々巡りしてしまうのだが,とりあえずキーフ(キエフ),チョルノーブィリ(チェルノブイリ)と併記して様子を見た方がいいのではないかと思う。拙速に変える必要はないというのが筆者の意見である。