jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

AV法案についての考察--明らかに不利な社会の容認につながる危険性

アダルトビデオ(AV)出演者が無条件に契約を解除できることなどを定めた「AV出演被害防止・救済法案」に対する議論が国会で行われている。この手のテーマは,人によって解釈が異なるため,誤解も生じやすい。言葉づかいそのものにも,細心の注意を払う必要がある。遠回しになるが,筆者としての考えをまとめてみることにする。

 ビデオであろうがリアルであろうが,「性産業」は人類にとって最も古い商売だと言える。女性が「自分の意志で身体を使ってカネを稼ぐ」ものであれば,いわば専門職である。今日,スマホやデジカメを使ってSNSなどを通じて「自分の意志で身体を使ってカネを稼ぐ」ことができる時代になり,女性にとって個人的に,しかも性産業の枠組みの中で搾取されることなく,カネを稼げる方法が成立しているのは,非常に恐ろしいことだが,実際に個人としておカネを稼いでいる女性がいないわけではない。ここはまず問題から外して考える。

 問題は,性産業という枠組みの中で女性が「素材」として使われてしまうことである。ビデオの「素材」として働くことで出演料を得る,という契約では,すでに女性に自分としての意志はない。作品の中で演技することが仕事であり,指示どおりに演技するしかない。

 基本的に性産業はブラック企業である。経営側が労働側から搾取する構図が当たり前の世界である。しかも,裏社会でもあるので,一般常識は通用しない。ビデオに撮影されるだけでなく,性行為そのものがあっても,不思議ではない。「撮影だけで契約したのに本番があるから契約を解除したい」といった常識が通用しない。これを法律で「無条件に契約を解除できる」としたところで,性被害を防止できるわけではない。

 本来なら,ブラックである性産業はすべて排除すべき対象である。働く側,労働側である女性が明らかに立場上不利だからである。それでも実に多くの女性が性産業界で働いている。正直,見当がつかないのだが,たとえば各年令では男性が100万人,女性が100万人おり,仮に毎年100人の女性が性産業に足を踏み入れるとしても,現役で10年間として1000人の出演者がいることになる。ブラックで身の危険もある中で仕事を続けている背景としては,一般の会社勤めのおそらく数倍の収入が短期間で得られるからである。

 「AV出演被害防止」などは一種のクーリングオフみたいに見えるが,相手がブラック企業に対して効果があるのかどうか疑問である。すでに契約した時点で個人情報やプライバシーの保護は無視されているし,金銭的な契約は取り消せても画像情報の流出に歯止めをかけることはできない。まして「救済」と言っても金銭的な補償はできるかもしれないが,精神的なキズ,身体的なキズは一生消えない。「妊娠しても補償します」というだけの法案では,そもそも根底の性産業を是認していることになる。

 同じように,バクチも是認の動きがある。「カジノを含むIR(統合型リゾート)」という世界も,一般的な経済原理に基づかないカジノ(賭け事,バクチ)という裏社会を容認する話である。こちらは,被るとしても金銭的な被害だけで済むかもしれないが,一般社会ではもう通用しない人生を送らざるをえなくなる可能性も高い。なぜか国が胴元になっている宝くじや,競輪,競馬,競艇が「健全なバクチ」とされていることも不思議である。ようやく,パチンコが「不健全」という認識がされる動きがあるが,これも期待できないかもしれない。

 いずれにしても,性産業も賭け事も,裏の世界へのパイプがつながっている。そういう意味では,政治の世界も裏の世界とつながっている。これから一気に広がると言われているメタバースも,誰も制限ができないという意味では最大の裏世界と言えるかもしれない。

 ただ,一般常識(いや筆者の常識)から考えての違法なカネ儲けは男女平等なのだが,性産業だけは女性が「モノ」としてやり取りされるという非常に差別的な世界である。生物的に,オスは興奮しなければメスと交接できず,子孫繁殖ができない仕組みになっている。動物世界ではメスのフェロモンが引き金になるが,唯一ヒトのオスだけが視覚情報,触覚情報,嗅覚情報,聴覚情報で興奮する仕組みになっている。女性自身は興奮することなく交接が可能だが,男性を興奮させるための演技が必要になってくる。しかも,男性が365日,興奮を求める異常な生き物であるのに対し,女性は月の半分は月経のために交接できず,また妊娠すれば1年は交接ができないという生理のため,パートナーの要求を完全に満たすことができない。ここに,浮気や性産業の存在価値があるとされてしまう。

 ほどほどであれば,アルコールも問題はないが,慢性化すると精神異常を来たす。合法と言われるアルコール産業も,一歩間違えば人のためにならなくなる。今回議論されている法案は,逆に言えば,性産業を合法化し,女性が被害に遭う可能性を肯定しているように見える。極端に言えば,歌手,モデル,俳優など,身体的な優位性を前面に出した専門職も,特に女性に関しては性産業とつながっていないわけではない。事実,女性歌手の世界でのセクハラやパワハラ,モデル崩れのAV出演などのキャリアパスを否定することはできない。限られた一握りのスターしか,生き残れない世界だからである。

 結論を出すことは容易ではないが,AVや性産業の存在を容認するような表現の法律は,制定すべきではないと考える。まして「性行為を伴うAV禁止法案」という表現は,AVを容認していると言えるので,それは女性差別を容認することになると言えると考える。

 差別と言えば,正社員に対する派遣社員契約社員,アルバイトの社会保障問題も,「保護されてきているんだから文句言うな」的に差別の容認につながっているような気がする。本質的な解決になっていないということである。

 性産業については,女性の立場から考えるとまた違う見方ができると思われるので,いったんここまでにしたい。