2022/5/24,アメリカ・テキサス州で,高校生が小学校でライフルを乱射し,小学生19人を含む21人が殺害された。犯人となった高校生は,18歳になったのを機に銃を購入したという。
サルヴァドル・ラモス容疑者という名前から,スペイン系の移民の一家と思われる。髪も黒く,白人系ではなかった。学校では,いじめにあっていたといわれている。
民族問題,人種問題,移民問題,いじめ問題,そして銃社会の問題と,複雑に絡み合った事情があるようだ。
犯罪につながるきっかけは,価値観の違いから生じる。個性を重んじ,自分の意見を持ち,人と同じことをしない,というアメリカ人魂は,開拓者精神でもあるが,自分がお山の大将になってしまうキライがある。アメリカで言えば,白人系,英語ネイティブ,名門校系が大将になってしまう。
筆者が30歳で1年間,アメリカの大学院に留学したときの印象は,日本人留学生は卒業できればいいといった感じだったのに対し,中国人留学生はとにかくエリート意識むき出しで発言力が大きく,黒人学生は温厚で友情に厚かった。逆にアメリカ人は,大学院を次のキャリアアップのステップと考えているので,自分の売り込みにかける力が半端ではなかった。当時は,韓国系移民は少なく,スペイン系(ヒスパニック)の多くは貧乏と相場が決まっていた。
ニューヨークはまさに人種のルツボという印象だったが,メインストリートにいるのは白人系であり,周辺地域に中国系やヒスパニック系が,そしてホームレスの多くは黒人系だった。これがフロリダ州のディズニーワールドに行くと,まさに白人ワールドとなり,働いている人もお客も,黒人はほとんど見かけなかった。
そうしたアメリカで,秩序が保たれていたのは,キリスト教が根付いていることだった。印象としては,助け合いの精神に溢れ,地域の秩序を保つための暗黙のルールがあった。お年寄りにも優しく,街の景観を守ろうという意識が高く,建物の色使いから芝生の長さまで,みんなで話し合って決めていたという印象だった。
ここに民族間,人種間の格差が生じ,貧富の差が生じ,治安維持のための銃社会が進展していく。犯罪率は当時も高かったが,大規模な無差別乱射事件などは記憶にない。まだ経済もしっかりしていたころで,1987年のブラックマンデーはあったものの,世界一の経済大国としての揺るぎない自信があった。
しかし現在のアメリカは,世界のリーダーとしての力をかなりなくしてしまっている。ソ連崩壊でアメリカが実質的なリーダー,日本が経済発展で相変わらず顔はないが経済的なリーダーという位置づけだったものが,日本の製造業がコケてしまい,韓国,台湾に主要産業が移り,さらにこれを中国が引き継ぎ,強力な社会主義的中央集権によって国力を一気に伸ばした。電子産業やコンピュータ産業でも,アメリカと肩を並べるような強国になった。
その中国も,民族問題を抱えている。新疆ウイグル自治区への弾圧問題が最も大きいが,中国市民に対する強硬姿勢も,自由主義社会から見ると相当違和感を覚える。大会会場全体が総起立で手を叩いている様子を見ると,これはついていけないなと思ってしまう。
そしてソ連崩壊からロシア中心に経済圏拡大を図ってきたロシアが,周辺地域が次々と独立していく中で元の連邦への回帰の意識が高まったのか,クリミア併合からウクライナ侵攻へと過激な動きを見せることになってしまった。
おそらく,世界中の人が,そしてロシア国民も,今戦争をすることに対して人道的立場から違和感を覚えるのではないか。結果としてNATO加盟国が増えてしまい,自分の首を絞めることになっているのではないか。
そして,プーチン大統領もゼレンスキー大統領も一歩も譲ることなく,戦いを続けるという愚策から抜け出せない。
世界が,地球温暖化による環境破壊で,食糧不足問題を抱えている。また代替エネルギー開発が遅れているため,石油,石炭,LNGなどの化石燃料を使わざるをえなくなっており,CO2発生を一向に抑制できない。貧富の差が拡大し,発展途上国での人口爆発も抑制できていない。海面上昇によって陸地が侵食され,さらに農作物が作りにくい環境になりつつある。
自分の国さえ良ければいい,という自国主義の考え方が,アメリカもロシアも中国もインドも,大国がそれぞれ持ち続けている。社会主義国家である中国やロシア,そして北朝鮮は,話し合いの場に出ても妥協するという姿勢がまったくない。このままズルズルと地球破滅の道に進んでいるのではないか。
今回のウクライナ侵攻で,キリスト教も一枚板ではないことが明らかになった。ローマ正教 vs ギリシャ正教 vs ロシア正教という対立の構図を見るとは思わなかった。もともとキリスト教もイスラム教も自分の宗教以外は受け入れないので争いが起こる。なかなかこの信教問題も解決は難しい。
世界にはまだ貧しい国がたくさんある。アフリカを中心としたこれらの国が豊かになるには,エネルギーの大量消費が必要になり,地球温暖化対策と逆行する。先進国が,すでに手に入れた豊かさを捨てるつもりもない。カネを持っているヤツが結局は得をするという社会である。
アメリカは「人種のルツボ」と呼ばれるが,本来ならルツボは材料が溶け合って新しい合金材料を生み出すために使われるものだが,一向に溶け合わない状態のルツボである。より火力を強めるか,別の介在材料を加えて混ざりやすくするか,何か方法を考えないと,結局は異種混合のまま融合しなくなって強度を発揮できなくなる。リアルな世界では難しければ,メタバースの世界で差別がなくなるような仕掛けを考える必要があるのではないか。たとえば,言葉の壁を乗り越える自動翻訳は,メタバースには絶対に必要である。アバターも,リアルアバターではなく,人種融合的なアバターで,みんなが共通の価値観を持てるような世界があると,平和になるのかもしれない。