jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

政治とは「清濁併せ飲む」覚悟が必要--英トラス首相辞任とポピュリズムの関係を検証する

イギリスのトラス首相が2022年10月20日,就任から45日で辞任表明した。法人税の大幅減税と国債の大量発行という政策が,金融市場から全面否定され,ポンド下落,株価下落を招いたという。

 これを「トラス氏のポピュリズム政策の失敗」ということのようなのである。

 ポピュリズムは,日本では「大衆迎合」「衆愚政治」「扇動政治」「反知性主義」などと訳されているようで,「大衆」の権利こそ尊重されるべきという政治思想だという。アメリカのトランプ前大統領が,典型的なポピュリズム政治をしているという。

 トラス首相の政策は,大衆迎合なのだろうか。大幅減税と言っても,対象は法人税である。法人税減税ならば大衆はもちろんエリート層にも利益があるはずであり,景気浮揚にも効果がある。その不足分の財源を国債発行で補うという政策が,失策だということらしい。

 トランプ前大統領の強行な政策は,アメリカ国民の半分の支持を受けている。大衆迎合政策である。自国史上主義,自国中心主義で,世界の秩序など関係ないという思想で,世界中がおかしな方向に向かったと筆者は感じていた。NATOからの離脱宣言もトランプ氏の政策だった。もし離脱していて,ロシアによるウクライナ侵攻が起きていたら,戦いの構図は変わっていたのではないか。NATO軍は十分な対抗措置が取れず,ロシアの暴走を許し,逆にそこにアメリカとして加担したかもしれない。そうすると,トランプ氏のアメリカとロシア,中国,そして北朝鮮といった,非自由主義国が連携するようなおかしな体制になったかもしれない。現在のバイデン大統領政権は盤石ではない。NATO軍として介入することはないように思われるし,基盤であるアメリカ国民の支持が得られなくなる可能性も否定できない。ただし,トランプ政権が仮に復活した場合,米ロの核戦争の危険だけは回避できるように思える。中国の習近平主席の権威がますます強固になっており,権威主義国家の方が経済的,政治的に安定していると国民が思い込む危険性もある。世界にとって,どの選択肢が望ましいのだろうか。

 トラス首相の経済政策宣言が失策とは筆者には思えない。正直言えば,これは女性であるトラス首相に対するセクハラ,パワハラではないのか。トランプ氏,ジョンソン前首相,習氏,金正恩主席,プーチン大統領,ゼレンスキー大統領,そして安倍前首相など,見た目も言葉も強く,マウント系のリーダーに対して,トラス氏はカリスマ性に欠けていたために,つけ込まれてしまったのではないのか。

 次期首相候補として,ジョンソン前首相の名前も上がっている。筆者の予想では,支持者を100人集められないと思っている。これは勝手な予想である。

 ポピュリズム政権が世界中で台頭しているという。イタリア,スウェーデン,ドイツ,オーストリアでは右派寄りのポピュリズム政権が台頭しているという。中国もポピュリズムと言えるのだろうか。今回のトラス首相辞任とポピュリズムを結びつけるのは無理があるように筆者は思える。

 さて,批評家はここまで分析して主張するだけで,あとは「様子見」するだけで,何も建設的な意見を言わない。相変わらず卑怯だなと思う。筆者は,以下のように主張する。1発で決められるか--プーチンを止める手段はこれしかない - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2022/10/15。これをできるのは,バイデン大統領しかない。

 自由主義国家では,エリートと大衆の二重構造が,権威主義国家では,権力者と大衆の二重構造が出来上がる。結局,大衆は搾取される側だが,権威主義国家では大衆迎合ポピュリズムはあり得ない。しかし,自由主義国家のエリートは,国に対する帰属意識はまったくなく,国を守るという意識もまったくない。大衆迎合政権が樹立した場合,それはほぼ権威主義と同じ社会が作られ,政権が暴走する可能性がある。そうすると,EUNATO,そして国連といった合議制共同体とは相容れなくなる。しかし,いずれの国家も国力は小さく,既存の大国に対抗する力はない。結局は,ロシアと中国という2大権威主義国家の傘下に入る可能性がある。ウクライナ侵攻で馬脚を現したロシアは,プーチン失脚とともに中国傘下に入るか,あるいは暴走してバラバラになるかと予想する。アメリカも元々が多民族国家として一枚板ではなく,国家崩壊を招くかもしれない。

 国連は,地球全体の未来を考えた組織だが,発展途上国の貧困や独裁体制に基づく紛争に対して先進国が手を差し伸べる,という言わばトップダウンによる「お助けなかよし倶楽部」でしかなかったようである。発展途上国が豊かになり,携帯電話やインターネットによって世界中の情報を手に入れられるようになると,今度は発言力も強くなる。貧困は,先進国による搾取が原因と知り,地球環境問題も,先進国のエゴだと知った。現在の食糧不足も,地球温暖化が原因であり,さらにウクライナ紛争で世界中の流通がおかしくなり,ますます「なかよし倶楽部」では解決できなくなってきている。

 先進国として,アメリカ,ロシア,中国,イギリス,フランスが常任理事国になっているが,すでに先進国・発展途上国という構図が崩れている以上,国連の存在による発展的な解決の道もなくなっているように思える。

 さらに,世の中がメタバースに突っ走っており,人々の幸せのためにさまざまなモノを開発し,生産するという物質文明も崩壊しつつある。なんと,モノづくりの最後の牙城が中国という厄介な構図になっている。20世紀末だったら,日本がモノづくりの中心だったので発現力は効いたはずだが,いまや日本の地位も地に落ちている。岸田首相をはじめ,日本には政治のリーダーがいない。モノづくりのリーダーもいない。モノづくりをする労働者もいない。リーダー不在 - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2021/3/31。野党の言う事ばかり気にする岸田首相は,国内問題で手一杯で,世界に対する発信力が残念ながらほとんどなかった。安倍元首相の国葬すら,利用することはできなかった。

 習近平がまともな世界路線を出すか,日本産業界が水素エネルギー,食糧工場で世界路線を出すか--このいずれかしか世界を救う手はない - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2022/10/8 で,日本のモノづくりをもう一度ボトムアップで構築し,世界に発信することを提案した。トヨタ自動車豊田章男社長と,水素エネルギーの岩谷産業川崎重工業などが手を組み,水素ステーションとしてまとまりつつある福島県で新政権を樹立して,モノづくり大国日本をもう一度復活させることを,改めて提案したい。