スマホは言わば小型コンピュータである。データを処理したり、画面に表示したり、通信をするのに、CPU はバッテリーの電気を消費し、発熱する。ディスプレイが液晶パネルの場合、パネルそのものはほとんど発熱しないが、液晶パネルの裏にはLED バックライトが発光していて、それなりに熱を出す。ディスプレイが有機ELのモデルでは、パネル自身が発光するので発熱する。
さらに、電気を供給するバッテリーも、使用時には発熱する。また、充電するときは、さらに熱くなる。いずれもバッテリーの中で起きている化学反応によるものである。
ここまで書いて「こういう原理を理解して使っている人がどれほどいるだろうか」と心配になった。スイッチを押せば何にでも使える魔法の箱という認識しかないのではないか。
それはさておき、今回の問題はこの発熱するスマホにプラスチックや革などのケースを掛けて使っていることである。
もちろん、筆者もケースを掛けて使っているのだが、最初に持ったスマホはケースなしで使っていた。そのモデルは今のモデルからすると実に軽かった。本体にストラップホールもあり、ケータイのころから使っているストラップを付けて使っていた。液晶パネル面は傷が付かないように樹脂フィルムを貼っていた。
ところが、モデルが変わるごとに、本体のストラップホールは姿を消した。どんどんパネルサイズは大きくなり、それに伴ってバッテリーも大きくなり、全体の重さも5割以上増えた。落下の危険性が増しているのに、普通の人はストラップなしで、手のひらに乗せて片手で操作していた。とても信じられなかった。
仕方ないのでスマホケースを別途購入するのだが、筆者にとってストラップホールは必須なのだが、ストラップホール付きと書いてあるケースの方が少なかった。
現在は、安いのだが本革の手帳型のケースにさらにビニールカバーを掛けて使っている。革の耐久性への期待がある一方、汗を吸うと臭うという欠点を補うのにビニールカバーを掛けているのである。
そこで最初の疑問点との矛盾が生じる。発熱するので、この放熱のために金属ボディーを採用したモデルが多い。放熱することで処理速度を維持し、快適に使えるようにという商品設計である。しかし、ケースもカバーも一般的に熱の放散能力は低い。熱が込もってしまい、スマホ本来の性能を発揮できないと感じるのである。
そもそも、スマートフォンの設計意図が分からない。正直,当初はキーボタンのない端末装置など使えるものか,という気持ちで,どうしても乗り換えられなかった。最初に使ったスマートフォンも,当時最も維持費の安かったフリーSIMが使える中古品を数千円で買い,アプリのみの使い勝手をチェックしていた。
フリック入力は,いまだに完全にはマスターしていないが,タッチ操作でもそれなりにキーが押せることが確認できた。一時,タッチパネルにタッチしたときに振動が指に伝わるモデルがあったが,まったくメジャーにはならなかった。たまたま,2ストローク入力というのが自分に合っていることがわかり,以後,自分の頭で考えるのと同じ速度で文字を入力できるようになった。
当初,電池交換をするために裏蓋を開けることができたが,現在では開けることはできない。スイッチ類もどんどん減らされている。部品点数を極力減らし,形状もできるだけシンプルになっている。結局,手からは滑り落ちやすくなるので,カバーを付けてそれにストラップを付けたり,本体裏にリングを貼り付けたりしなければならない。その分,厚みが増し,ポケットに入れようとすると引っかかる。
モデルチェンジのたびにケースも買い換えなければならない。1つのモデルに,おそらく100社以上のカバーメーカーが参戦し,おそらく9割の製品が使われないまま廃棄されていく。これも矛盾している。
放熱がさまたげられる分,CPUにもバッテリーにも負担がかかり,スマホの寿命が短くなる。
思い起こせば,シャープの電子手帳の後継機であるZaurusの縦型モデルには,専用の硬質フリップカバーが付属していた。本体の前に取り付け,上端を両側から挟み込むようにして固定できるものだった。本体はむき出しのままである。放熱をさまたげるものではない。実によくできていたと思う。
有機ELを使った折り畳み型スマホの登場で,ディスプレイ面を内面に保護できるタイプが実現した。こういうモデルだと,スマホカバーなしでも持ち歩ける。ただ,厚みが厚くなる可能性もあるが,有機ELなので極限まで薄くできるというメリットもある。
筆者はもともと,液晶パネルは嫌いである。薄型テレビも,当初の液晶テレビは見る角度によって色やコントラストが大幅に違うのが気に入らず,ずっとブラウン管テレビだった。かなり値崩れしたところでプラズマテレビを購入。消費電力が大きいのが問題だったが,画質が圧倒的に良く,満足していた。しかし,メーカーが2社しかなく,量産も難しく,しかもハイビジョン以上の高密度にすると発光しなくなるという不具合があって,世の中から消えてしまった。プラズマパネルに取って代わったのが有機ELパネルだが,日本メーカーは大型パネルの量産ができず,テレビ用は韓国のLG電子の独占パネルになった。一方,スマホ用の有機ELパネルは,同じく韓国のサムスン電子がほぼ独占状態で,最近は中国のパネルメーカーもスマホ用に有機ELパネルを生産している。
結局,テレビもスマホも,日本製のパネルはなくなった。電子ペーパーもユニークな技術が日本にあったが,製品化には至らなかった。
スマホの次に登場するのは,メガネ型の空間ディスプレイだと睨んでいたが,その前にゴーグル型がかなりの市場を築いている。自宅やオフィスではゴーグルでも構わないが,街中や電車の中で使うには,ちょっと見た目が厳しい。大きさから言ってもメガネ型が望ましい。日本メーカーも先行していたはずだが,中国メーカーがどんどん参入している状態である。
文章の入力や,画面上での操作のためには,物理的なキーボードがどこかに必要である。結局は,ディスプレイとキーボードを兼用できるタッチパネル型のスマホやタブレットが有利なのかもしれない。運びやすさ,机の上での置きやすさなどの機能を,本体に組み込んで,余計なカバーやホルダーなどが要らない完成されたモデルを考えてほしい。そういう細かい工夫を提案できるのは,日本メーカーではないかと期待する。無機質なスマホや,不細工なゴーグルを越える,使いやすい端末を提案してほしい。